グラスルーツの三級審判員として、これまでも定期的に審判の記事を書いてきた。今年はその頻度を高めて、審判に関する理解とリスペクトを高めていくことにほんの少しでも貢献できたらいいと思っている。
今年、私、本格的に審判デビューするかも…
私はこれまで小学生の、つまり8人制の試合しか担当したことがない。ところが縁あって、今季から東京都リーグに挑むシャフユナイテッドの専属審判員として契約を結んだ。競技未経験者が、息子のチームの手伝いで資格を取っただけなのに、大人の、それもれっきとした公式戦を担当することになる見込み。その辺りの珍道中はまたご報告することとしたい。…今は、ぶっちゃけ怖さしかない。
さて、審判の胸についているマークを覚えているだろうか。国内でJFAに登録されている審判は日本代表「のような」ヤタガラスマークを付けている。国際主審・副審になると、デカデカとFIFAと書かれたスーパーエリートマークだ。
ちなみに↑の記事にある写真は金色のワッペンなので1級審判。
あのスーパー審判・家本政明氏である。
では袖は?
これは知らない方、気にしたこともない方が多いと思う。
正解はリスペクトワッペン。上が20年10月から使われている新ワッペンで、下は古いもの。私はまだ古いものを使い続けている。新しいの200円くらいで買えるらしいけれども。
respectとは。尊敬、敬意、尊重など英語辞書には載っていたが、「大切に思うこと」と新ワッペンには書かれている。なるほど、深い。
対戦相手の選手やスタッフ、サポーター、そして審判。サッカーの試合を行うにはどれも欠かせないもの。自分やチームメイトだけでは、試合は成立してないからだ。
審判は仲間か
わずかだとは思いたいが、スタジアムでは審判を敵だと思っている観客がいるようだ。残念ながら日産スタジアム、ニッパツ三ツ沢にもいる。審判の判定にブーイングをする人がいる。声を発してはいけない観戦環境なのに、自チームに不利な判定に声を荒げてしまう人がいる。
審判の判定に不満を持つのは仕方ない。微妙な判定というのは必ずある。イーブンなボールを競り合っているときに、スタンドからはどちらの反則にも見える時だってある。そして、サポーターは自軍の反則とは思いたくないという性質がある。
審判は一緒にいい試合を作ろうとしてくれる仲間だ。プロのトッププレーヤーの試合をジャッジするために、これまたプロの審判がしっかり準備をして試合に臨んでいる。
フィットネステスト40m6秒6本YOYO42本 pic.twitter.com/9KWpga0QBc
— Murakami Nobutsugu (@MuraNoburin) 2021年2月1日
こちらは名主審として数々のビッグマッチをさばいてきた村上伸次氏のTweet。プロサッカー選手並みの負荷を自らに課して、開幕に備えている。年齢を持ち出すのは失礼だが、御年51歳。それでいて第一線にいるのは、自己管理の賜物としか言いようがない。あのストイックの塊・中澤佑二ですら40歳で現役を引退したのだから、村上さんのすごさが分かるだろう。
たまに、選手はプロなのに、主審はそうではない。競技のレベルは上がったのに、審判のレベルは上がっていないなどという見当違いの批判を目にすることがある。
現在、国内にはPR(プロフェッショナルレフェリー)は主審13名、副審4名。審判員であることを生業としている本物である。顔ぶれを見てほしい。いずれも、Jリーグを日常的に見ていれば名前を知らない方はいないだろう。そして不思議なことに、この方たちほどヘタクソだと言われているのである。トップ・オブ・トップなのに、あまりにもおかしな話だ。
しかもやり玉にあげられるのは誤審があったとき。ナイスジャッジは、ほとんど話題にならない。ナイスアドバンテージ適用、ナイス笛吹くタイミング、ナイスポジショニング、ナイスランは、山ほどあるのに。
家本さんのnoteと解説は必読ですよ
審判には確かにクセというか傾向はある。カードの多い少ない、フィジカルコンタクトをどこまで取るか、などは私たちでもすぐに感じることができる。
その中で、家本さんが笛を吹く試合は独特の味がある。基準が試合を通じてブレないのでとにかく安定感があるし、ほかの審判が取りそうなファウルも流す傾向が強い。サッカーのもつ接触の醍醐味というのを大切にされているのだろう。それでいて、負傷を招くようなプレーには毅然と対応する。また試合中の選手との会話量もかなり多いという印象だ。
いえぽんこと、家本さんは現在、定期的にnoteとTwitterで情報発信をしている。
自身の生い立ちを語る最初のnoteでは、「嫌いな審判」「下手な審判」「誤審が多い」 というサポーターが選ぶ三冠王という自虐ネタから入っているのだが、苦労人であるとともに、サッカー審判が本当に好き、人生をかけているということが伝わってくるのでぜひ開幕前に読んでほしい。めちゃくちゃ頭のいい方で、もし悪い印象を持っている人がいたとしても、きっと親しみを覚えるはず。
このツイートも秀逸だった。
VARの原則
— いえぽん@開幕戦に向け追い込み中(全身筋肉痛中) (@referee_iemoto) 2021年1月27日
・全事象をチェック
・基本的に主審の判断を尊重
・次の2つ以外は介入しない
・はっきりとした明白な間違い
・見逃された重大な事象
具体的には
・得点か否か
・PKか否か
・退場か否か
・人違い
次のものには介入しない
・反則か否か(APPが明白な反則除く)
・警告か否か(二枚目含め)
今季にJ1全試合で改めて導入しなおされるVARのポイントをまとめてくれたもの。分かりやすい。noteのほうが詳しいのだが、さすがにかなりのボリュームなのでここでの紹介は控える。
審判にもリスペクトをもった方が絶対にストレスフリー、そして得
草サッカーレベルの僕の審判でも、ヤジが飛んだり、不平不満が出たりする。繰り返すが、選手が不満を持つのは仕方ないし、不平を言うのはぜんぜん許容。ただ報復的な行為や、レフェリングを侮辱されるのはだめ。
例:どこ見てんだよ!! おい、どこがファウルだよ、ちゃんとしてくれよ!
これは絶対に口にはしないけれど、「じゃあお前審判やれよ。おれ、帰るわ」って唱えることで感情をセーブしている。だっておれ、ヘタだもん。でも一緒にいいゲームにしたくて努力しているけれど、その姿勢すら否定されるなら一緒にやれませんわ。自分に退場処分だわ、そんな気持ち。
それを応用すると、スタンドでマリノスの試合を見るとき、このトップレフェリーが観ていて、そういうのだから(マリノスに不利な判定でも)仕方ない。んー、相手のファウルに見えたけど、そうかー。という感情が絶対的にお勧め。
やるべきことは、味方選手の鼓舞であり、相手選手に拍手や声援(ブーイング)で圧をかけるもよし。でも審判にスタンドから不平を言ってもいいことは絶対にない。
むしろ審判の力量を信頼し、この試合を預けていますよという肯定感に包まれた方が審判は絶対にいい仕事をする。ジャッジが有利になることはないけれど、日産スタジアムやマリノスというチームに対しても好感をもってくれるはずだ。
今後もいいジャッジ、審判のいい話を定期的に発信していくので、賛同してくれる方はスタジアムの肯定的な雰囲気づくりにぜひ加わっていただきたい。
最後に、いえぽんが小鳥を救った昨季の伝説の一部始終の動画を見ていただいて、清々しくこの項を閉じたい。