マリノスにシャーレを 2024

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

こじ開けた、魂で

長い、あまりにも長かった。それはそれは1つのコンペティションにしては、あまりにも長い。

上島拓巳が退場処分を受けて、PK戦にたどり着くまでの話ではない。

ACLの切符をつかんでからの話だ。切符にハサミがはいった、つまり初戦を戦った仁川戦は2023年9月19日(火)である。
だがこの切符を手にしたのはさらに1年近く前になる。2022年10月、最終節に神戸を下して5度目のシャーレを手にする前、2位以内が確定した時点で、ACL2023-24の出場権を獲得している。(延期されていた磐田戦で敗戦したにもかかわらず2位以内が決まったと記憶している)

ガンバの守護神として君臨する一森純が、横浜で魔改造されるなど、まだ誰も知らない。高丘陽平が23シーズン前にいなくなってしまうなど知る由もない。だからポープ・ウィリアムが「自分が何かをした大会ではない」と語るのは無理からぬこのなのだ。

準決勝のあとにファイナリストの紹介として、AFCが作成したマリノスのキービジュアルに杉本健勇の肖像が使われていることが話題となったが、健勇はグループリーグに出場して、ゴールを決めている。たしかにトリコロールの勝利に貢献し、そして去った。

高丘に加えて仲川輝人、岩田智輝、レオ・セアラや藤田譲瑠チマ。
グループステージにはしっかり出場していた選手は、一森や杉本のほかにも西村拓真がいる。もちろんケビン・マスカットなくして、今はない。村上悠緋や吉尾海夏らは、選手のやり繰りが厳しかったグループリーグで輝いてくれた。

そしてタスキを受け継いだ者たち。ポープや天野純、加藤蓮らだけではない。長期離脱から復帰した畠中槙之輔もだ。まだ出場こそないが、J1リーグ戦では復帰を果たした小池龍太、小池裕太らも、過密日程のチームに貢献している。今、加藤聖も帰ってこようとしている。

そして喜田拓也と渡辺皓太を欠く中で、一世一代のプレーを見せた榊原彗悟。彼らが復帰しても、そうやすやすと先発の座を明け渡す気はないだろう。

どうだ、長いだろう。

22年の秋につかんだ出場権から始まった一本の道。敗退の危機や退場者のハプニングも経て、なんと人工芝でも試合をして、1年半後、ついに現行のACLで初の決勝へと駒を進めた。
1年半。ワールドカップ予選かっつーの。

「不思議と、蔚山にゴールを割られる気はしなかった」などと、うそぶく人はほぼいないだろう。ヤバかった、マジでヤバかった。
後半早々のオフサイドで取り消された蔚山の3点目が認められていたら、そのあと捨て身の攻撃に出たところをいなされて何点取られただろうか。

素人ブログも、スポーツ報道も安易に「奇跡」などという言葉を使うのはよくない。「執念」もまったくロジカルではないけれど、なかなか理屈では説明できない。

ポープが神がかっていたのはたしか。そして先週、少し批判したけれど時間を消費する一挙手一投足は芸術的ですらあった。水分の摂取を増やし、とにかくリスタートを遅らせる。キャッチのたびにうつ伏せになり、ゴールキックの前にはゆっくりとボールをセットする。レガースをバラまいた話は後から知ったが、もうどうかしている。こういうのを執念という。

1人減ってからのブロックの作り方もシュート40本を浴びせられて「見事だった」とは言わないが、紙一重で耐えきったのは可変性が優れていたからだ。GK以外ならどこでもできそうな加藤蓮の便利さよ。
宮市亮と水沼宏太の両ベテランは、なんとか活性化しようと奔走した。それぞれが攻撃時にもあわやのシーンを見せてくれた。

槙之輔とエドゥアルドの堅忍不抜ぶりも、鬼気迫るものがあった。

それでもこじ開けそうなのは、蔚山のほうだった。ずっと決勝の扉に手をかけていた手応えはあっただろう。

にもかかわらず、扉をくぐったのはマリノス。「最高の場所へ」「アジアを勝ち取ろう」「どんな時でも 俺たちがそばにいる」何十回、いや何百回ループしたのだろうか。客観的に見たら多分狂っている。もう念仏と同じ領域だろう。

応援がチームのパフォーマンスに与える影響を過大評価しようとは思わない。「サポーターの声が僕たちを後押し」の何割かは、リップサービスだと思っている。だがこの日は違った。

一体、この日何回ガッツポーズをしただろう。3得点と5人分のPKはもちろん、蔚山の得点が取り消されたとき、キム・ミヌのキックをポープが止めた時。
いや、もう一回あった。

それはPKをマリノス側のゴールで行うと決まった時だ。こっちなら、勝たせられるかもしれない。やってやろうじゃないか。審判団と選手が、こちら(マリノスゴール)側に歩を進めた時の、あの異様な高まりは忘れられない。

そしてもうひとつ、忘れられない記憶がある。前半30分までの極上な最強タイムのことだ。
彼我の力関係を考えれば、断言できる。あの30分のマリノスは、今年最強、最高のデキだった。エウベルがまだ本調子でないにもかかわらず、ヤン・マテウスのキックのフィーリングは今一つに見えたにもかかわらずだ。

理由のひとつは植中朝日の縦横無尽、マルチタスクにあると思う。下がってよし、さばいてよし、ためてよし、抜けてよし。昨年の過重労働に悩んだアンデルソン・ロペスのタスクオーバーをかなり高いレベルでワークシェアしている。だからロペスも一層活きる。ナムテヒはたぶん黒子的サポートに労力を割いている。

1年に何回できるかはわからないが、A・ロペスと植中の共存が始まると、ここからマリノスの得点力は大きく回復するのかもしれない。
その前に5月、そのもっと前にC大阪、磐田、浦和と続く大型連休中のJ1リーグ戦だ。

そのあとはもう決勝の第1戦が待つ。UAEのアルアインが横浜へ。ACLをホームで戦うのはこれでシーズン7試合目、これで最後となる。
1万6千人で最高の雰囲気を作った。今度は5万、6万といこうではないか。

頂まで、あと2試合。さらに「前人未到のリーグとの同時制覇」へ。
シーズンまだ序盤なのに、スーパークライマックスの素晴らしさよ。