今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

全員が一丸となって【J1第10節●大分戦0-1】

キックオフ直後から、見せつける前田大然の速さ。マルコス・ジュニオールと見分けがつきづらいという難点はあるものの左サイドからチャンスを作る。

 

あれ、右サイドのウィングのエリキと、中央で先発したオナイウ阿道との距離がやけに近い。センターフォワードが3人いる状況に、テレビ画面越しの多くのファン・サポーターは??となり、おい、離れてくれーと声を送ったことだろう。

正直に言えば、ふしぎなこの配置がベンチからの指示によるものだと分かり、ますます??となった。私の場合は。

 

それに加えて、あまりにもパスのズレが多く、これほどまでに自らボールを手放すマリノスはここ最近ではお目にかかった記憶がない。うまくパス回しが機能している時をアイススケートのような滑らかさに例えるならば、もう表面の水分が乾き切ったか、折からの高温でリンクの氷が溶けてしまったかのようだ。ノッキングを繰り返す。2本目のパス、出手と受け手の意識が逆に向いてしまう場面はどうにも歯痒い。

 

原因は、スタメンがころころ変わるからか?それは主たる原因ではないと思う。メンバーが変わったのはこの日に限ったことではないからだ。FWの配置に代表されるようにいつもと違うことをやったことによる意識のズレのようなものが生まれたのではないだろうか。

 

ジュニオール・サントスと渡辺皓太は可能性を感じさせてくれた。即結果が出ていれば最高だったけれども、リードを許した展開で絶対に1点がほしい場面で彼らは持ち味を出した。サントスは高さと速さ。サイズを生かしたヘディング…惜しかった…! さらにトラップやドリブルが豪快に大きくなってしまう癖があるようだが、オルンガの影に思わぬ大器が隠れていた、と言われるようになること、大いに期待したい。

 

渡辺皓太。生まれた赤ん坊は完全にパパそっくり。久々にまとまった時間の出場となった今回は、受けてよし、運んでよし、引いて守る大分守備陣がスペースをほぼ与えてくれない中で、守備の歪みを作ろうと奔走した。間違いなく攻撃のアクセントになる存在だという、その可能性を示してくれた。

 

それから、最終ラインに帰ってきたのはチアゴ・マルチンス。彼の復帰でようやく畠中槙之輔を休ませることもできるはず。まだまだ本調子には程遠かったかも事実だが、不在だった試合と比べれば、彼がいるだけで他のすべての選手がもう少し前のめりになれるのだ。

 

だが、10戦して5敗目はどうにも厳しい。前年チャンピオンチームの翌年の成績としてはワーストクラスにかなり悪いらしい。まあ言われなくても分かる。そうだろう。

 

エジガルと天野純が全体練習を離れれば、肉離れの實藤友紀と仲川輝人が帰ってきた。圧倒的に首位を走る川崎にも怪我人は出ていないわけではない。過酷日程はここからが本番なのだから、適度に選手を入れ替えて休みを取ってもらいつつ、「誰が出てもマリノスのサッカー」を突き詰めていくことが浮上の鍵だろう。

 

大分戦の戦い方は失態であり、失敗だったのか。いや、経験だったのだよ。この経験があったから今の栄光があるのさ。未来のアンジェ・ポステコグルー監督の高笑いの声が、あなたにも聞こえるだろうか?

 

わっはっは。くー、勝ちたい…。

あの1on1に松原健は勝利していた【J1第9節△柏戦1-1】

もしも本当にオルンガが怖いのならば。マリノスは、いや指揮を執るアンジェ・ポステコグルーは、守備に割くリソースを増やす、つまりサイドバック達にも守備での貢献を求めればよかった。今でもそう思う。

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だがボスは言った。相手は関係ない。自分たちのサッカーをやるだけだ。半沢直樹と再び相対した大和田常務が、お前と組むなんて死んでも御免だと言ったのに近い。オルンガだからではない。それがモハメド・サラーでもラヒーム・スターリングだとしても引かないと決めているのだ。オルンガが来るからいつもよりも守備の枚数を増やすなんて死んでも御免。サイドバックがいつものように上がるために、最終ラインに残るのは2枚のセンターバックになるのもいつものことだ。それが誰になるのか。右側の松原健なのか、左の畠中槙之輔か。柏が狙ってきたのは右、彼らから見ると左側にオルンガは流れてきて長いボールを蹴ってきた。

 

そんなの「本職のCBでも難しい」ミッションだって? 長身のオルンガの高さに対策するならば空中戦に強い伊藤槙人の起用もありだろう。だが、当然のことながら、長いボールだけではない。足元でも受けられるし、背後を狙われたら瞬時に反転しなければならない。もし後手に回ったら即命取り。ひりつく1on1の始まりだ。

 

結論から言えば、62分にオルンガの単独突破を許してしまい失点する。そのきっかけに松原のキックミスがあったことは事実である。その後、畠中も左右の揺さぶりに対応できず、CB2枚で失点を防ぐことはできなかった。

 

で、それがどうした。

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強がりでも開き直りでもない。あれを決め切ったオルンガのプレーはやはり見事だった。でも、あのシーンだけだ。それ以外では松原の守備は見事な一言だった。飛車角落ちがどーのこーの書いた人が居たそうだが、どこをどう切り取ればこの日の松原のプレーを悪く言えるだろう。

 

いつもより自分の意識の中で、守備に軸足を置いた部分はあったはず。サイドバック時に攻撃参加するときとはリスクの重みが違うから。ただJ1で本職のCBたちが死屍累々とオルンガに蹂躙される中で、ケニー松原は大健闘した。オルンガが苛立つ素振りを見せたことも一度や二度ではない。先制のシーンだけはネルシーニョが待ち続けていた展開そのものだったが、思い通りに行っていなかったのは先制した柏の方だったかも。畠中がガシガシと縦パスを刺す。1ボランチだった喜田拓也も前を向き、ボールを散らす。前半の間で1〜2点取れていてほしい。GK中村を中心にラストパスを封じるところで集中力を切らさない守りは仙台とも通じるが、ともかく取りきれなかったのはここずっと変わらないマリノスの課題だ。

 

失点直前に入ってきた3人の選手たち。マルコス、エリキ、エジガルジュニオに代わって、扇原貴宏、オナイウ阿道、そしてJ1初出場の松田詠太郎が加わって再び攻撃が活性化される。松田がボールを受けたときの何かやってくれそう感は、4年前の遠藤渓太デビュー時を思い出すではないか。相模原で経験と結果を積んできた分今の詠太郎の方が上かもしれない。

 

右サイドに張った詠太郎にボールが集まるシーンが増える。78分の同点劇の際は、囮となってラインを押し下げてハーフレーンを埋める天野純の足元へ。そのボールを阿道のためのスペースを作りながらパスを渡す巧みなプレーでチャンスをお膳立て。

 

ここで阿道は、DFにコースを塞がれながらもつま先で浮かせるとタイミングを外すような素早い振りでシュートを放った。これが中村の予測を上回ってネットを揺らして同点となった。

 

プラン通りに前線の強力なFW頼みで先制しながら、しかも厳重にゴール前を固めながらもこじ開けた意義は大きい。勝点3を取れていてもなんら不思議ない内容だった。それだけにまた川崎との差が開いてしまうという事実も重いのだけれど、確実に連携は高まり、やらせない致命的かミスも減り前に進んでいる。

 

一部の心ない報道で見られたような感じは私はまったく受けていない。むしろ逆で、とくにケニー松原の奮戦は予想以上で感動的だった。ネジが外れかけたケニーの良さとポテンシャルの高さが存分に出たと言えるだろう。それだけに心ない見方が意外ですらあった。

 

何名かの入れ替わりが進んだ。レンタル移籍を選んだ前貴之、杉本竜士、オビの奮闘を祈りたい。一方で前田大然と松田詠太郎さらにジュニオール・サントスを加えたウィング陣はどの組み合わせがいいのか、楽しみである。

 

チアゴもまもなくと聞く。大分戦からは15連戦も始まる。ここからが正念場である。ブログもこのペースでは到底ダメで、変革が迫られている。でも繋いだ手は離さないのである。

 

 

咆哮!マルコスの一撃で勝点3をもぎ取る【J1第8節◯仙台1-0】

仙台のゴールマウスの中、向かって左奥に取り付けられたDAZNのCCDカメラに向かって正面衝突するかのように一直線にボールが迫ってくる。これはリプレイの角度としては珠玉で極上だ。スウォビクの手は届かない、いや届くわけもないコース。蹴り込むヒーローの奥には早々と両手を掲げて得点と勝利を確信した松原健の姿が最高である。CBでスタメンだったマツケンは伊藤槙人の投入によって本職の右SBに回っていたのだが、この中央、ストライカーのすぐ後ろにポジションを取っているのが真骨頂である。

マルコスは吼えた。駆けた先はメインスタンド側のコーナーフラッグ付近だ。94分戦ってきたピッチ内の選手たちが疲労困憊なことを差し引いても、一番最初にマルコスに抱きついたのが途中で退いた水沼宏太だったことが感動的だった。
f:id:f-schale:20200804220220j:plainマルコスのインスタグラムより

この日、圧倒的にゲームを支配しながらも、ゴールを打ち破れなかったマリノス。スコアレスドロー寸前にゴールをこじ開けたのがマルコス。出場から15分の大仕事だった。

その1分前、ゲデスのユニフォームを引っぱって松原が警告を受けたときには得点の匂いなどまるでしなかったが、一連の攻撃はマルコスが鬼気迫るスピードで、手前のサイドを割ったボールを追いかけて、すぐさま放り込んだスローインから始まる。後ろ向きにスローインのボールを受けたのはオナイウ阿道で、中央にフリーでいた渡辺皓太に渡すのだ。左を見れば、大津祐樹が走り始めてDFを引き連れ、その間を使おうとちょうどナベコウを追い越すタイミングのティーラトンが欲しがっている。

だがナベコウは絶妙なタイミングに思われたティーラトンを使わず、ティーラトンは思わず落胆して一瞬天を仰いでいる。ナベコウは左に行きかけたのに、結局はボールを受けた場所まで戻ってきて松原へ。なんだか相手の守備が整う時間を与えただけのようにも見えた。

その松原は扇原へ横パスを送り、扇原はシンプルにティーラトンへボールを出した。すると、ほんの2〜3メートル、仙台DF・柳の位置がティーラトンから離れていたため、少しティーラトンは正確なクロスを送る余裕を得たのだった。

鉄則通り、ニアで潰れ役となった大津は、自身の約束を完璧に果たしたと言っていい。後半開始早々に、ゴールエリア内でボレーがミートできなかったケースと合わせて大津を批判していた人がWeb上にいたが、この大津の働きなくしてマルコスのゴールは生まれない。これが大津の素晴らしさ。いつだって勇気と、力強さが彼を駆り立てる。

そしてこぼれ球に瞬時に合わせるマルコス自身の技術力。いや、冷静さか。プロならば、ドフリーならば、あのキックは技術的な難易度よりもメンタルの方が大きいのではないだろうか。それが決定力というものに現れる。横浜ダービーでの負傷交代から復帰していきなりこれだけの力を見せつける。恐ろしい。

さらにマルコスの凄さはこの得点後にもあった。ゲーム再開後、時間的にはいつホイッスルが鳴ってもおかしくない時間ではあった。仙台のロングボールがオフサイドになり、主審がオフサイドを告げるための長めの笛を吹いた。これを試合終了の笛と勘違いしたのか、畠中槙之輔がその場に座り込む。これをシン、シン!立ち上がれとすぐさま切り替えを促したのがマルコスで、その表情ははっきりと中継映像に捉えられていたのだ。なんという勝利への真摯な執念だろうか。

無事に試合を終えた後のインタビューでは破顔一笑、いつもの人懐こい笑顔を振りまくのだから、こりゃメロメロである。


なんとか勝ち切った事実はめちゃくちゃ大きいのだが、思わぬ苦戦となった原因の1つはマリノスの決定力不足にある。これは裏返せば、仙台の守備陣が最後まで集中を切らさなかったことが大きい。スウォビクのセーブが当たっていたことに加えて、すでに各所で話題になっているようにこの試合がJ1デビュー戦となった流経大の壁、191センチのアピアタウィアの活躍である。立ちはだかり、跳ね返した。強いし硬い。風貌はすでにリーグアンで活躍しているフランス代表というイメージだが、まだ22歳の特別指定選手。シマオマテが離脱中の影響を減らす役割をになっている。この選手の名前はぜひ覚えておきたい。

さは言え、厳しい言い方をすれば大学生に手を焼いた、打ち負かされたということである。仙台はもう1名の大学生、真瀬も途中で出場させている。さらに投入したばかりの松下が負傷してしまい人数も不利な状況だった。

それにも関わらず、どうにかこうにか、最後の攻撃でようやく得点をあげることが出来たというのは「物足りない」と言ってしまえば、その通りである。正直に言って、ここまで勝利したチームはいずれも下位のチームだ。上位のチームには、「対策で上回られてしまって」いる。そこがマリノスの現状であり、もう一段進まなければ先のないステップである。


伊藤槙人ではなくCBの先発は、松原が選ばれた。疲れ、前節までの結果、いろんなことが背景にあっただろう。チアゴ。マルチンスと實藤友紀の名前はまだ出てこない。右SBで小池龍太が台頭してきたこともある。「経験があるから」松原を選んだと監督は言っていた。それでも最も勤続を続ける畠中はスタメンだった。ラストで槙人を投入し、松原を右SBに、小池を1列上げるという采配で見事に結果は残った。槙人は再び先発の座を狙う戦いに迎えるはずである。名前が上がらない危機感をもつ選手もいる。山本義道や高野遼である。前貴之はこの原稿を書き始めた頃に松本への移籍の話が出て、残念ながら一気に話はまとまったようだ。

過密日程のリスクヘッジと言いながら、あるポジションでは特定の選手に起用が集中しているということも起きている。もうとっくに正念場に来ているようだ。

仲川輝人の時間はまだかかる。水沼宏太は違う味を見せてくれている。ただし宏太もゴール前だけはもう少し力を抜いて、セレッソ時代の古巣対戦ではいつも見せてくれた比類なき勝負強さを発揮してほしいところではある。

ゲームを自分たちの側でコントロールできたこともあり、ほぼ全選手いい出来だったと言っていい。仙頭啓矢は先発したもののハーフタイムの交代となった。攻守によく顔を出していたし、惜しいシュートも放った。はじめから90分自分が出場する想定ではなく走り回ってくれたこともよかった。ただ天野純やティーラトンとの連携が生命線であり、ここはやはりまだまだという印象だった。


最後に、お帰りなさい。朴一圭。抜群の守備範囲、安定感、そして正確なキックと堅実なセーブ。「流石」という表現以外の言葉ではなかなか言い表せないのだが、集中力と反射神経が特にすごくなった。梶川裕嗣もすごいな、パギさんと遜色ないな、と思っていたがこの日のパギは別格だった。ぐう守護神である。


ようやくのアウェイ初勝利。まだ黒星先行状態が続いている。次こそ連勝して、上位への足がかりとしたい。
8月、ここから暑さ本番のようだ。


蒲原

天野純の惜別と意地の一撃。彼のようにしっかり前を向けば浮上は近い【J1第7節●1-3札幌戦】

前節のダービーで連敗を止めて乗り込んだ札幌の地は、ACLの韓国以来となる長距離遠征。待っていたのはこの4試合で3敗目という停滞感だった。遠藤渓太の壮行試合のはずが主役も早々に、腰のあたりを気にして負傷交代するというまさかの展開に、ショックは隠しきれない。

右往左往は不安と不満だけを生む

なんだかコロナの再感染拡大を憂いて右往左往する通勤サラリーマンのようだ。私のことかい?
この週明け、私は3週間ぶりに都内ターミナル駅にあるオフィスに向かった。朝の電車は、コロナ後の中ではもっとも混雑していたと思う。げんなりしていた。リモートワークという新しいスタイルのサッカーに慣れてきたと思ったら、突如として古いスタイルに逆行させられた感じ。ごめん、ちっとも伝わらない。所詮は中小企業勤めの小市民だから、感染者数の増加だけに踊らされてはいけないと知りつつも、再び週5日リモート勤務の完全在宅方式から、出勤日と在宅勤務日のハイブリッドとなり、日々何が正しいのかを見極められずにいる。
すごくカッコ悪いし、すごく凡庸だ。
快勝の後にまたミス連発での大量失点に逆戻り、と言ってしまえばそれまで。コロナがある事実を受容し、その中でどのように前を向くか?というのは相手の絶対に前を向かせないぞという強いプレスを受け入れ、耐え、時にいなし、なんとかゴールに向かうことが大事だという話と似ている。いや、ますます話がこんがらがったか。

そこを撃ち抜くか、天野純!

報道によれば、ダービーの前日にアクシデントがあり、先発を回避したという天野純だったが、この日は先発で出場。後輩である遠藤渓太の国内ラストマッチということは、もちろんチームメイトも分かっている。誰だって、生意気な後輩を勝って送り出してやりたい。ちょうど1年前、天野自身も「ラストマッチ」を三ツ沢で迎えていた。当時、先発の機会が少なくなっていたとはいえ、圧倒的ホームの大分戦で自身はフル出場して勝利を引き寄せている。

コロナさえなければ。よりによってクラブの財政破綻。志半ばでの帰国。サッカー選手1人の力ではどうしようもなかったのも事実である。同情の余地だらけだ。誰も「彼の海外移籍は失敗だった」とは言えないだろう。ノーコンテスト、無効試合だと言っていい。

ただし残った事実は半年余りでの帰国である。彼が退団してから、怒涛の快進撃が始まりリーグタイトルを射止めたが、彼には王者になった実感などあるはずもない。また今月19日で29歳になった。プロ入り7年目、彼自身が認めるように再び欧州に移籍先を探すのは相当難しくなったと言わざるを得ない。

22歳の後輩は、ドイツ1部に渡る。今から待ち受ける、厳しいかもしれないが、輝かしい未来。若さという可能性に羨ましさを感じている。出番に恵まれないときも腐らずに努力してきた渓太の成長を誰よりも近くで見てきた先輩のうちの1人だ。その彼が、見せつけた。湘南戦でも光った積極性は、間違いなく去年の春までの天野には足りなかった大事な要素。

「俺が試合を決める。チームを勝たせる」彼の覚悟という言葉の真実味を感じずにはいられない。渓太がんばれ、俺もこうやってもがいて成長してきたんだぜ。松原健がバウンドしたボールを右サイド前方に蹴り込み、それを水沼宏太が巧みに収めると、走り込んできた天野純の足元につける。トラップがうまい。間髪入れずに振り抜いた左足は、GK菅野に触ることも許さない厳しいコースに飛んだ。彼はシュートを打つ瞬間の、もうだいぶ前からそこを狙うと決めていたかのようだった。

またしても天野の技が光るゴール。そこを撃ち抜くか、天野純。渓太が程なく交代してしまうわけだが、最高の先制点だった。

しかしパニックへ

右のルーカスフェルナンデス(LF7)が凄かったのか、ティーラトンのコンディションが想定以上に悪かったのか。おそらく両方だと思う。ここを蹂躙されたマリノスは、先制からわずか3分で逆転を許す。その後もティーラトンは、警告を受け、挙句には松原と左右を入れ替えるほどの散々なでき。前節に足を踏まれて倒れこむ場面があったのだが、その際に裂傷を追ったという。その傷が思いの外、深くて結局はハーフタイムに小池龍太との交代となる。ボス・ポステコグルー監督にしては怪我を押して無理をさせるのは珍しい。高野遼は北海道に帯同すらしていなかったようなので、ティーラトンのコンディションは想像外の誤算だったのだろうか。

確かに、畠中槙之輔、伊藤槙人はそれぞれ失点に直結するミスを犯してしまった。このようなオウンゴールに匹敵するようなミスから2失点、都合3失点となると、これでは勝てない。だが、すでに多くの記事で指摘されているように、ビルドアップで大苦戦を強いられた。特に両ボランチへのコースを塞がれ続けた。もちろん本来なら二人とも鋭く縦へのパスをつけられるし、自分で持ち運びもした。

1対1をしつこく迫られるということは、こちらとしてはその眼前の1選手を出し抜けばビッグチャンスとなる。昨年の後半の「エリキ 、マテウスの質的優位性」がうまく行っていたのはこのためだ。ところが、今は一人一人がその1枚を剥がせない。コンディションがキツイのもあるだろう。デュエルで勝てないから、ビッグチャンスの到来も少ない。

これを「CBのミスのせい」と断じても仕方ない。ちなみに槙人は空中戦では比類なき強さを見せている。畠中も再開後全試合、守り続けてくれている。その貢献は絶大だ。

今年も北海道に散る、しかし

ミシャのくれた宿題。中盤を分厚くして、お前らの嫌がることを徹底的にやったるで。え、この程度で何もできないの? 思えば前年も札幌ドームでは0-3の敗戦。何もできない2019ワーストゲームのひとつだった。そこから半年後にホームで再戦した時も、よく考えたら中盤を厚くして前を向かせない札幌との攻防はとても強度の高いものだった。ただちょっとしたパスのズレを見逃さなかったのはマリノスの方だった。だから4得点を奪ってリベンジができた。自分たちのサッカーに大きく自信をつけたから、宿題を上回れたのだ。

今年も晩秋に再戦、のはずが、ACLの影響で日程再調整が行われたために、わずか1ヶ月後の8/26にホームに迎え撃つ。エリキも仲川テルも、そしてマテウスも居なかったマリノスの2020年エディションはまだ模索中。

昨年も噛み合ったのは後半戦からだ。しかも試合消化が進むにつれ、カップ戦での早期敗退の影響もあってどんどん間隔が空いた。だから研ぎ澄ますことができた。だが過密日程で、ろくに休みもない今年は、8月からさらに日程がキツくなる。

そこに渓太が抜けるのがキツくないはずがない。新たな補強の噂も出ているが、コンディションやフィット向上の時間もかかる。


天野純のメンタルを真似したい。どんな状況下でも自分の糧とできることはある。この苛酷極まりない状況をどう乗り越えたかで、さらに強いチームになれるはずである。

それにしても首位の川崎、つえええ。横綱相撲のような、質的優位と精神的な優位。昨年後半戦はおそらく今の川崎以上の勢いがあった。

年が変わって、長い休みを余儀なくされて、その勢いはリセットされている。

そこに火をつけるかのような天野純の積極的な姿勢。簡単に怪我人の傷は癒えないが、渓太の一人や二人笑って送り出せないような選手層ではない。

もう一度、密集の中でも、強いプレスに潰されそうでも、前を向いてゴールを見据えてほしい。
勇猛果敢に。

順風満帆にして波乱万丈…遠藤渓太、世界へ飛び出す

一抹の寂しさとそれを上回る期待感と。トリコロールの誇りを胸に、若武者は海を渡る。

 

昨夏、マリノスは三好康児と天野純を送り出した。(三好は厳密には川崎に戻ったうえでの移籍だったが気にするな)強くなったマリノスに次々と有能で有望な選手が集まり、そして輩出されていくことが誇らしい。

だが、上記の二人の次が彼になるとは1年前はまるで予測できなかった。

横浜F・マリノスユース→横浜F・マリノス→海外というこれ以上ない純粋培養での海外移籍は小野裕二以来。遠藤渓太はいよいよ二俣川から世界へ飛び出す。

 

気がつけば左ウイングで最も手堅く仕事のできる選手になっていた。はっきり言って戦力的にはかなり痛い。でも、抜けても痛くもない選手は海外移籍なんてしたりはしないものさ。ドイツから獲得を熱望されるような選手がそうそう何人もいるわけがない。そう言わせている渓太が、すごいじゃん。

 

ベルリンの「じゃない方」

行き先はドイツ・ブンデスリーガ1部の、1.FCウニオンベルリンである。内田篤人がシャルケの後に在籍した2部のクラブという記憶を持っている人もいるかもしれない(私がそうだった)。創立は1966年と半世紀余りの歴史を誇るが、1部在籍は1年のみ。首都ベルリンと言えばヘルタベルリンが有名で、「じゃない方」のクラブであった。同じベルリンでも東ベルリン、すなわち東独のクラブで、統一後もかなり貧困に苦しんだようだ。

 

上で、1部在籍は1年のみと書いた。そう、その1年こそが2019〜20年シーズンだったのだ。昨年クラブ史上初めて1部昇格を果たすと、強豪ドルトムントに勝利を収めるなど11位で残留を果たしたのは見事。

 

理想的な移籍先かも

日本語で、ウニオンベルリン愛に溢れた素晴らしい記事を見つけたので、ぜひ読んでおいてほしい。

 

苦労した雌伏の時期を経て、一気に飛び出す。原動力はサポーターの愛というこのクラブそのものが、遠藤渓太の軌跡にそのまま重なる、と言ったら陶酔しすぎだろうか。

 

愛されし、生え抜きアタッカーのバカウケ移籍先がなかなかゴキゲンで、「渓太もまた神様になる」のだとすると、これほど素晴らしい移籍先はないのではないだろうか。チームカラーが赤ということでユニフォームが似合うのかどうかが気がかりだし、似合ったら似合ったで寂しいという面倒な親心というやつである。

 

 

上記のウニオンベルリンサポーター、略称ウニサポさんは、マリノスと同様に左ウイングでの起用を早くも予想されている。

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経歴としては「順調そのもの」か

遠藤渓太の表層的な数字は極めて立派である。22歳の若さで、J1通算100試合出場達成。ルーキー年の3月にはJ1デビューを飾り、マリノスの高卒ルーキーがほぼ全員出場機会を求めてレンタル移籍する中で5年間一貫してマリノスで競争を続けた。昨年は自己最多の33試合に出場し、7ゴール7アシストはどちらもキャリアハイとなる数字を残し、優勝に大きく貢献した。さらに個人としてはルヴァン杯ニューヒーロー賞のほか、五輪代表にも継続的に招集されている。

日本人全体の同年代を見渡してもトップの実績と言っていいだろう。「22歳で欧州四大リーグの1部へ移籍」というのは、マリノス的に言えば中村俊輔クラスなのだから。

 

ただ多くのマリノスサポーターが、この数字の額面通りではないことを知っている。だからこそ感慨深いのだと思う。 

トップに上がった時もギリギリなら、その後もだいたいギリギリだった。エリク・モンバエルツはかなりのチャンスを与えてくれたが、次はもうスタメンどころか、ベンチ外やろなぁという試合で、ギリギリ踏みとどまる活躍を見せた。ライバルもゴリゴリドリブルのブラジル人やら、技巧派の元韓国代表やら、スピード自慢の渓太の遥か上を行く最高速を誇るキュラソーの怪人やら次々と先発機会を脅かしていく。だいたいにおいてギリギリだった。

背番号を11に替えた時のことも思い出す。「え、そんな重そうな番号をわざわざ志願して大丈夫?」。諸般の事情で11番への印象が悪かったこともあったが、レギュラーとは言えなかった渓太が着けるには違和感というか、今から考えればこの上なく余計なお世話な心配もあった。が、それも払拭して見せた。11に憧れてユニフォームを買う少年の姿は決して少なくない。

ギリギリの戦いに勝ち続けたわけでもない不思議。でも気がつけば少しずつ、着実に階段を登っている。その様が、俺たちの父性・母性をいかんなくくすぐったのだ。

 

昨年の優勝決定戦の、あの全マリサポが泣いた最後のゴールももう一度見直そう。

動画6分2秒のティーラトンのリスタートから伝説は始まっている。

youtu.be

2019明治安田生命J1リーグ第34節vsFC東京ハイライト動画

 

入れ替わったところもそう、タッチライン際に膨らんでアウトサイドでボールを残したタッチもそう。カットインした後の判断、持ち替えて利き足ではない左で打つと決めた判断もそう。GKの手足をかすめたボールがコロコロと転がり枠内に収まったその瞬間も。全てが紙一重なのだ。これが枠外に転がってしまう選手も必ず存在する。そしてあのような極上の瞬間として、人々の記憶と記録に刻みつけてしまう一握りの人間だけが、この階段を登って行くのだろう。

この日、このゴールで、渓太の名前がマリノスの伝説に刻まれることになったのだ。

 

 

遠藤渓太たらしめたもの

渓太の余人をもって替えがたい最大のセールスポイントは、スピードである。最高速度そのものよりも、最高速度まで達する巡行距離の短さ。えっと簡単にいうと、すぐにトップスピードまで達するダッシュ力ということだ。プロの世界において、この「一芸」の有無は大きい。怪我さえなければ、まだまだ伸びることだろう。これからも彼の武器であり続けるはずだ。

 

この半年、コロナ禍によって選手によるトークショーを始め、シーズン中にも関わらず選手の素顔を垣間見る機会が多かった。本ブログでも度々触れてきたのは、大津祐樹、水沼宏太、扇原貴宏そして喜田拓也といった精神的な支柱となる存在の選手たちの素晴らしさである。チームをよくしたいとか、サポーターに謝意を伝えたいとか、もっと選手としても高みを目指したいとか、模範的な姿に誇らしさを感じたものである。

その点、遠藤渓太はそれらの模範の対極にある。何をやってもマイペース。何を言っても許されるし、その先輩たちの抱擁力の上に平気で胡坐をかくような振る舞いを取る。みんな僕のこと好きなんでしょう的な唯我独尊。空気が読めないのではなく、確信犯的に読まない。ただしどこまでも自然体で力が抜けているのがある意味たちが悪いのである。これはあくまで一側面に過ぎないが、そこから推測できるのはバカポジティブと自分勝手さである。一般的にプロ選手に求められる像に、生まれながらにして近いのではないか。

この辺りが、紆余曲折ありながらも、順風満帆に見せてしまう要因なのかもしれない。

 

 

まだまだプレー選択で改善の余地はある。えふしー戦だって、もう少し仕掛けるところと、周りを生かすところ、やり直しを選択する判断を早くして欲しいし、パスの前にワンタッチ多いな、惜しいなという場面もいくつか思い出す。

 

Viel Glück! KEITA!!

26日、札幌戦が、国内ラストゲームとなる。どうやら左ウイングでの先発が見込まれるようだ。29日夜にYouTube Liveで挨拶が行われることが発表されている。是が非でも有終の美を飾りたい。仲川輝人が欠場し、マルコス・ジュニオールやエリキ も万全でない中では、当然渓太には一層の期待がかかる。

「僕ができる恩返しはドイツで結果を残して活躍する事だけだと思っています。去年、サポーターの皆さんとチームメイトと一緒にリーグ優勝出来たことは一生の思い出であり忘れません。F・マリノスの誇りを胸にドイツで頑張ってきます!いってきます!」

 

東京五輪があるかは分からないけれど、できるならば久保建英や三好康児ら五輪代表を引き連れて、渓太に決勝が行われる日産スタジアムに凱旋して欲しい。東独クラブにお金が必要なら、来年のプレシーズン日本ツアーもいいよね。

 

渓太、とにかく達者で。もっと大きく成長して、渓太は俺たちが育てたと自慢させてほしい。

誇りを胸に。いつだって、どこだって応援している。