マリノスにシャーレを 2021

横浜F・マリノスの話題を中心に、いちサポーター目線で愛を語ります。いちお3級審判、不定期で審判やルールネタも。サッカー少年2人の父。

オナイウ阿道はキルギス戦の先発濃厚か!

先のキリンチャレンジ・セルビア戦でA代表のデビューを飾ったオナイウ阿道の先発のチャンスが巡ってきそうだ。

hochi.news
「ポスト大迫勇也」は、日本代表の課題の一つである。そこに名乗りをあげた阿道が、生き残りをかけた戦いに挑む。
W杯カタール大会、アジア2次予選の日本対キルギスが、パナソニック吹田で行われる。

そもそも今回、オナイウは、大迫の離脱による追加招集で代表入りをした。セルビア戦でのデビュー戦ゴールは辛すぎるオフサイドの判定で幻になってしまったのだけれども、後半の45分で確かな存在感を見せ、先発のチャンスを掴もうとしているのだからシンデレラボーイと言っていい。

前の週末はルヴァン杯のプレーオフで、マリノスの仲間とともに厚別にいたのだ。前田大然をすでに五輪代表に送り出していたマリノスとしてはオナイウの追加招集の代償は、ことのほか大きかったと言わざるをえない。

その傷を癒やすためにも、オナイウには爪痕を残してほしい…!

オフサイドではなかったからこそ

話題となったのは後半19分。伊東純也がハーフウェーラインから俊足を生かしてボールを追い、右サイドのペナルティライン辺りで折り返しのボールを送った。中に待っていた阿道がすばらしかったのは、マリノスで磨いたように、相手のDFから瞬時に離れる動きを入れたことだ。

ゴールポストに股間を打ちつけながらも、押し込んでゴール…と思ったらオフサイドフラッグが上がる。
「ない、ない!ないよ!」阿道の口元がそう言っていた。阿道からはDFラインを完全に見えた状態で走っていたので、普通はオフサイドに引っかからないものだ。

しかも伊東純也のダッシュに付いていけていない副審の姿ははっきりと映像に残っていた。あの状態で、フラッグあげられるものなのか…。極限状態のことは分からない。

記録としては残らないのは残念だが、記憶には残った。それくらいよい動き、阿道の良さを生かしてくれたIJにも拍手を送りたい。
だから次こそ、真の得点という確かな結果にこだわってくれるだろう。

これぞマリノスのフォワード!という誇らしさ

これだけではなく、真面目な守備でのチェイス、ボールを高い確率でおさめてくれる安心感、隙あらばDFラインの裏を狙うという積極性。

マリノスで大きく鍛えられた部分だろう。本人のポテンシャルが開花してきたのは、こうした動き出しのタイミングや、ポイントが整理されてきたからという気がするのだ。

昨年のオナイウが最も輝いた試合は、トップ下で起用されたホームの浦和戦だった。それまでトップで窮屈そうにプレーしていたオナイウが鎖から解放されたように縦横無尽に輝いたあの試合。守備に行くタイミング、味方へのパス、そのあとの動き、どれもが絶品だった。

そのあとトップに戻ったら、一皮むけていたというのが印象。逸材はほんの小さなきっかけで進化する。

森保監督が期待するわけ

今に始まったことではないが、日本代表はFWの核となる人材が不足気味である。体格の問題もあり、アジアでは戦えても世界と伍するCFの台頭は、日本中が待ちわびている。2列目は常にタレントが豊富なだけに比較するとなおさらである。

憧れは高原直泰だったという大迫勇也の希少価値はもちろん高い。大迫が高いレベルにあるのも間違いないが2番手はと言われると、少し間があく。
森保ジャパンになってからは、鈴木武蔵、南野拓実、浅野拓磨といったところか。岡崎慎司や小林悠にもその可能性はあるが年齢面では31歳の大迫よりもさらに上だ。

「上だ」で言えば、上田綺世。そして小川航基あたりは、東京五輪世代の中核。同僚・前田大然は1トップならば、サイドで使いたい。根拠は横浜F・マリノスだ。

大迫の「さこ」は、迫力の「迫」。名前はあがるが、どうも迫力ではもう一つ。

もちろんこの先も、ハイパフォーマンスをキープし続けることが求められるが、少なくとも今の阿道は、大迫のライバルを語る資格はあるのではないか。
だからこその先発起用だ。

「あどちゃん、半端ないって!」と森保監督を歓喜させたい。

「地獄の一週間」を払拭する

あまり多くは語らないが、この1週間、マリノスサポーターには辛いことが多かった。「地獄の一週間」はTwitterのトレンド入りを果たしたほど。

それを払拭して、溜飲を下げたい。阿道の元気な姿で、僕らは勇気づけられる(勝手)。

久しぶりに、喜び勇んで複数のサイトで、先発予想を調べたところ、私調べではCFはオナイウ阿道の予想一色だった。

GKはシュミットと権田が半々。
DFは山根、中谷、昌子は決定的で、左が佐々木翔か小川諒也で分かれる
ボランチは、橋本、川辺、守田から二人だが、前者2名が有力視。
2列目は、古橋、南野、原口、浅野、坂元らの名前が挙がっている。

やはりトップに阿道はかなり有力のようだ。


テレビ中継は、フジテレビ、BS-1のほか、TVerでも見られるのでスマホ勢も阿道に声援を送ろう!
なるか、代表初ゴール。そして代表定着へ。

がんばれ、オナイウ阿道。

新しい船出は簡単じゃない【YLC PO第2戦●1-3札幌戦】

言い訳ではないが、たまには愚痴らせてほしい。

オナイウ阿道と前田大然のストライカー2名は揃って代表に招集中だ。レオ・セアラは週中の天皇杯で消耗したのかコンディションの問題で先発できない。

戦力が下がらないわけはない。

 

その天皇杯ではJFLのHondaに、PKまでもつれて疲労した上に敗れ、翌日にはポステコグルー前監督の退任が発表される。柳想鉄の訃報もあった。「普通の1週間」とは明らかに違っていた。

 

採用された苦肉の策でのゼロトップは、期せずして2年前に札幌戦でフィットしなかったとき以来。だから相手がミシャ(ペトロビッチ監督)でなくても、フルコートでプレスをかけてきた。

メンタル面が整わないまま、蹴らずにつなぐことでハイプレスを受け入れてしまったから、前半わずか7分でオウンゴールを誘発してしまい、終始劣勢のままゲームを終えることとなった。

 

札幌は強かった。とはいえ、ミシャが試合後に満面の笑みで語っていたようにあちらにも深井、ジェイ、チャナティップなどのレギュラークラスが何名も欠けていた。

劣勢の前半を0-1でしのげただけに、チャンスを作りながらも決定機を決め切れない流れは天皇杯と同じで、自らを苦しめた。

 

3失点で気になった、逆サイドの動き

このオウンゴールは逆サイドに大きく振られたところから菅に独走を許して、裏のスペースを追走する形で早いクロスを入れられたところで勝負ありだった。

2点目はこぼれ球を左サイドでダイレクトにあわせて菅のゴラッソ。時間を稼ぎながら試合を進めていた札幌の3点目はゴールライン際の侵入を許した上で逆サイドに振られてフリーのシュートを許してしまった。

 

いずれも「逆サイド」。札幌にとっての左サイドがやけに空いていた。早々にビハインドを負ったことで攻撃に意識が偏重したということがあったにしても、これは大きな穴となっていた。

 

水沼宏太が入るまで大人しすぎやしなかったか

それでも質の高い決定機は、マリノスのほうが多く作った。プレスをかけ続けることは不可能なので、意図的に落ち着かせて体力の回復をはかる時間を作っていたのだろう。

したがって先制点を許したものの、マリノスも25分ごろからチャンスを作り始める。しかしながら、枠に行かない、または札幌GKの菅野に立ちはだかられて時間を空費してしまう。一つ決まっていれば、まったく違う展開になったのにというパターンだ。

 

それにしても0-2から水沼宏太のヘディングで1点を返したときに姿は凛々しくチームを勇気づける振る舞いそのものだったが、それまであまりにも大人しくなかったか。

 

ボスがいなくなり、喜田拓也と水沼が不在のピッチ内。いつもと違うのは分かる。

 

が、札幌の強度に押される中で、少しずつ自分たちがペースを掴みかけても決めきれず、挙句にゴラッソで点差を広げられて。

 

一体誰がピッチの中で修正するのか。少なくとも味方を鼓舞できたのか。

 

自分たちのサッカーを貫くのではなかったのか。

 

リズムが狂うことに慣れていない

水沼宏太の反撃弾はそんな中で生まれた。クロスボールが相手DFに当たってコースが変わる中でそれでも飛びついて頭で叩き込んだ。

 

行ける、行けるぞ。

1点差に縮めたからだけではない。水沼の表情と甲高い声が味方選手の思いを一つにした。

 

うまくいかないピッチ内に必要なのはこういうゲキだ。

 

だが少しずつ、でも着実に勢いは削がれていった。交代して出てきた選手によって再び活性化する札幌のプレス。警告は高嶺が1枚受けただけ。激しいコンタクトを受容する家本主審の巡り合わせは札幌に吉と出た。

 

マリノスの球際の強さを認めているからこそ、先に敗戦した鹿島や、この2試合の札幌も皆、中盤の強度を意識してフルパワーで来る。

 

マリノスはそれを受けてはダメなのだ。またここで万全な戦いができないと自身のリズムを狂わせてしまう。

 

リズムが狂うことに慣れていない。それが6月の不調の要因と考えている。圧倒的なシュート数や流麗な崩しは、高いボール保持率があってこそ。

 

だから引いてくる相手には、ボール回しを繰り返して相手を動かす。また球際で勝てていれば、エウベルをどう生かすかで攻撃は設計できる。

 

基本的にはごく一部の相手を除いて、自分たちがペースを握る、握り続けることで勝ってきた。

 

そのペースを壊しにかかられると脆さが出る。

一つはコンディションの問題なのだろう。気温上昇とストライカー2名の離脱は確かに影響している。

 

で、もう一つはメンタル。

自分たちにペースを取り戻すために絶対にやってはいけないこと。

 

それは下を向くことだ。そのままではペースは決して取り返せない。3点目を失った後も、頭の片隅に絶望があったとしても、追いつき追い越そうとしていた選手、下を向いていた選手がいたのではないだろうか。

 

少なくとも全員の気持ちが揃っていたようには見えなかった。

 

中心はハッチンソンコーチ、残り1冠に集中する

テクニカルエリアで指示を送るジョン・ハッチンソンコーチ。ボスの「最後の右腕」にかかる役割はとてつもなく大きい。

 

松永英機暫定監督はJの監督経験者であり、S級ライセンスを有している。対してジョンは入国制限の遅れもあった新参コーチだ。2ヶ月でJの監督資格が取得できていないのは想像に難くない。

 

ピーター、アーサーがともにボスの元から監督にステップアップしたようにジョンもまたボスから学び、自身のキャリアを開こうとしている。日本で成功したいという野心は十分にある。

 

ボスと過ごした時間は長くないかもしれないが、日本の最後のパートナーに虎の巻を託してやしないかと期待している。

 

2試合で2つのタイトルの可能性を相次いで失ったことは事実でそのダメージがないはずがない。

 

ただ幸いにして今週末のリーグ戦はなく、ほんの少し立て直しの時間はある。それがポジティブな「退任ブースト」だ。

 

こんなときこそ私たちのような外部のファンも、チャンス!いける!リーグ戦集中!という雰囲気を出していきたい。

 

新しい船出は簡単ではないが、ワクワクする。

 

 

 

 

ボスとの別れ 航海は続く

optaによると、アンジェ・ポステコグルー監督(ボス)が指揮したJ1リーグ戦は118試合。これはクラブ史上最多の数字だという。2018年にボスの父君が亡くなった際に一時帰国で1試合欠場したことがあったがそれは含んでカウントしているようだ。
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戦績は58勝18分42敗。49%という勝率もクラブ史上最高とのこと。数字だけ見ると、もっと勝っていたような気もするが、そういえば大きく負け越した年もあったか。

ただ、ボスの築いたもの、残したものはこうした数字では表せない。

「自分たちのサッカーをする」という言葉に行きつく。曖昧で、頼りなくて、ときに目先の勝敗よりも優先された変な言葉。
相手は関係ない、自分たちだという言葉を、試合前、試合後にも何十回、何百回と耳にした。


見るものを魅了した。世界的名手が、他チームの監督が、OB選手が、はたまたアジアの列強が、今最も魅力的なサッカーをしているのはマリノスだと言った。
信じられるだろうか、「塩漬け」をメインディッシュにかましていたマリノスが。

もう一度、あのころのボスのコメントを噛みしめてみたい。

2018年、絶望との紙一重

シーズン直前の味スタで行われたPSM(プレシーズンマッチ)でボスのサッカーは実質初めてベールを脱いだ。今季よりもよほど狂気じみたパス回しをしていた記憶がある。これを超攻撃的サッカーと呼ぶらしい。「なんだ!この別の競技のような感覚は。一体この先どうなっていくんだ」サポーターたちは最初に戸惑い、徐々に期待が大きくなっていく。

開幕のセレッソ戦では大半をリードしながら、追いつかれて勝点1に終わる。「自分たちにとっては初の公式戦になった中で、部分的には良い内容があったんではないか。ただ長い時間リードしていたので、勝点3をとれなかったのはちょっと残念」というなんだか、カリスマ性を感じさせないコメントが残っている。

湘南戦4-4とかいう、ウーゴがハットトリックしたのに勝てなかった試合に代表されるように、得点は確かに増えたがそれ以上に失点も増加した。今思えば、チアゴはいなくて、スピード勝負は苦手な部類の満身創痍のディフェンスライン。でもボスは革命をやめようとしなかった。

このサッカーが完成したらきっとすごいことになるという夢は、現実という壁と、降格圏という恐怖に流されそうになる。

長崎戦で5得点し、W杯の2か月におよぶ中断期間があけたユアスタでは仙台を相手に8点とった。「入りも非常によかったし、しっかり準備してきた結果」と言い、中断期間で取り組んできたことが成果になったのか?の質問には、8点も取れたのだからそうであることを願っている(笑)と上機嫌で答えている。

だがここから公式戦7試合で6敗を喫する。大量失点も多かった。ボスの解任は現実味を帯びていたが、ノエスタの久保建英の劇的弾に救われる。とはいえ、チームの調子は上向きにならなかった。ルヴァン杯でG大阪、鹿島をくだして決勝に臨んだが、肝心の決勝では湘南を前に完封負け。

最終節でなんとか残留。ボスが途中で首を切られていたら、またはこの年J2に降格していたら。まったくありなかったどころではない、そんな世界線とは紙一重だった。

最終節もC大阪に敗れて、記者の質問も手厳しい。攻撃的というけれど途中から方針を変えたよね、来年はどうするつもり?と。
「シーズンを通して成長している、アタッキングフットボールを継続する。コンスタントに良いパフォーマンスが出なかったので結果にはつながらなかったがチームとしては成長を続けている」

捉えどころのない受け答えに、不安しか残らなかった。少なくとも私は、来年の飛躍を予感できなかった。

2019年、歓喜

本当に紙一重だ。開幕はパナソニック吹田で乗り込むが、開始わずか10秒あまりで自陣のパスを狙われて失点した。今年も失点の多さは覚悟するしかない。安い失点は減らないのか。落ち込むには十分な失点だった。

だが、すぐに息を吹き返した。
厳密にはオフサイドポジションにいた仲川輝人の同点ゴールはわずか数分後。すでにVARが導入されていたらこの得点は取り消されただろうが、失点のショックを払拭して逆転勝利にまで持ち込む。

この開幕戦もアンジェ・マリノスの運命を大きく分けた一瞬だった。
加えて、強化部で小倉勉SBが辣腕を振るったことも忘れてはならない。開幕時の選手層はまだ優勝を語るには厚みが足りなかった。

序盤でのティーラトン、和田拓也の補強、飯倉大樹が移籍したら中林洋次。エジガルの怪我にはエリキ、マテウス。天野純と三好康児というインサイドハーフ2名が立て続けに渡欧しても、渡辺皓太と、的確な補強があればこそ、シーズン後半の神がかりの快進撃が生まれた。

現場がアタッキングフットボールを貫徹したからこそ、フロントもそれを信じて予算を超える戦力投下を行ったのだ。

この先、何十年、何百年とクラブの歴史が続いても、クラブ史上4度目のリーグ制覇をボスと成し遂げたことは色褪せないだろう。
15年もリーグタイトルから遠ざかっていた、悪い意味での古豪に再び頂点をつかませたこと、ひょっとすると初優勝より難しいかもしれない。

最終節、優勝が決まった直後のインタビューだ。
「自分は、本当に結果についても満足しています。
新しい国、新しいリーグでやる、特にこのJリーグというのは難しいリーグだと思います。自分にとっては、本当に意欲を持ってチャレンジしようと臨みました。
私は、自分のメソッドを信じています。そのメソッドが通じれば、必ず結果は出ると思っていました(中略)


2020年、歓喜との紙一重

既定路線ではこの年が最終年だったのかもしれない。
ただこの年のパンデミックは、いろんなカレンダーを大きく狂わせたし、20年夏にボスのもとにオファーがあっても違う判断となっていたのではないか。

それくらい異常な年となった。
過密日程とは言うもののリーグ戦は最初から最後まで、リズムをつかめなかった。2021年にはある意味2019年よりも安定した強さを見せていることを考えると、2020年は低調だったの言わざるをえない。

再三にわたって日程が組みなおされ、11月にずれこんだACLの再開。中断前の2連勝のアドバンテージも生かしながら、順当にグループリーグを突破した。
これまで破れなかった壁を越えただけの話ではない。力の差を見せての戦いが誇らしかった。アタッキングフットボールの醍醐味と、その実力はアジアの列強をも震え上がらせた。

何度も振り返られているように、水原は集中力を発揮したが決して倒せなかった相手ではない。内容ではほぼ制圧しながらも決め切れなかった。
ラスト3分の1の精度というのは、結局は決定力という運不運も含めた不確かなものに依存してしまう。それはアタッキングフットボールを突き詰めた結果であってもだ。

「このチームはノックアウトステージに初めて進みましたが、多くの選手がこのレベルでの試合が初めての経験だったということが影響したかもしれません。ただ、完全にやられた、仕方がないという結果ではまったくなかったです。今日は前半で決められる内容でしたし、そういう内容だったからこそ、より悔しさが自分にも選手にもチームにもあります。」

  • 並のチームとは作られるチャンスの数が違う。それだけシュートチャンスが多ければ一定の割合で得点は増えていく
  • 相手の組織を崩し切るのも特徴だ。触ればゴールという、フィニッシュの難易度としてはだいぶ下がった決定機も多い

それでもなお16強で敗れた。その水原をくだした神戸は4強まで進んだ。負け惜しみではなく、紙一重だったことがもったいなく、悔しい。
そして、さらに悔しいことに2021年は、ACLの挑戦権すら掴めなかった。

2021年、航海は終わらない

覇権奪回を誓った2021年。開幕こそ苦杯を嘗めたが、その後の戦いぶりでは安定的に勝点3を積み上げている。前年の得点上位だった外国籍アタッカー2名が相次いで移籍してストライカー不在などと言われたが、前田大然とオナイウ阿道の充実ぶりも、ボスのチーム作り、マネジメントによるところが大きい。

同点で終盤を迎えても控え選手の厚さで決勝点をもぎ取る姿は、この5人交代制のルールに最大限適応したものだ。直前で言えば、ボランチの絶対的レギュラーと思われた喜田拓也と扇原貴宏に割って入るように、岩田智輝と渡辺が台頭してきた。このような底上げのあるチームは強い。

当然、監督がかわればこの起用の優先順位も大きく変わるので、直前誰が試合に出ていたか、控えだったかはあまり意味がない。まちがいなくチーム全体が強くなっている。このチームには誰にもチャンスがある。

今、ボールをつなぐことでペースをつかもうとするサッカーを追随する動きがJリーグで広まっている。たどたどしいパス回しは、ほんの数年前の自軍を見るようだ。これを成熟と呼ぶのか、空気のように当然になったのか、どうしようもないパス回しのミスはほぼ見られなくなった。

マリノススタイルと、それに適合した選手たち。これが俺たちの武器だ。
首位を追える力があるのはマリノスをおいて他にないように思う。強いチームはいくつかあるが、マリノスも相当にやる。

ボスの最大の功績

2021年6月10日、革命家が監督を名乗ったようなアンジェ・ポステコグルー監督の退任が発表された。スコットランドを代表するセルティックの監督オファーを受諾し発表されたことで、最初のこの報道が出てから2週間あまりの騒動はついに終わりを迎えた。

「もっともっとこのクラブでタイトルを取りたかった。それが心残りだ」監督の退任会見で残した言葉。

3年半でリーグタイトル1つ。でもそれを「物足りない」と誰も言わないのはなぜだろうか。
クラブの核となるアイデンティティを植え付けたからだ。

自分たちのサッカーをする。自分たちが主導権を握って、プレーする。相手は関係がない。

これほど茫洋としていて一方的なデザインはない。選手に信じさせ、クラブを本気にさせて、サポーターを熱狂させた。
ただちにとは言わないが、数年後にはおそらく選手も、下部組織の指導者も徐々に入れ替わっていく。

トップチームの監督が何を目指すのか。ボス以上も難しいし。ボスの継承はさらに難しい気がする。
このことが、ボスの最大の功績である。そして継承という難題をどう消化するかが、クラブの取り組むべき大いなるテーマ。


エリク・モンバエルツは港と船そのものを設計し、そこに搭載する装備と船乗りをクラブが用意した。
偉大なる船長は、わざわざ荒波の航海を選び、寄港地でタイトルをもたらし、新たな航海の途中で下船する。新たに乗る緑色の英国船との契約は1年、これまた荒れる大海原だろう。

残ったトリコロールの船は、別れを惜しむ暇もなく、戦いに戻る。覇権を取り戻すのだ。
ここでの別れは残念だが、黒澤社長のコメントにあるように、ボスの意志を尊重して送り出すことがクラブとしてできる最大の敬意。シーズン途中に監督が交代するのはネガティブなケースがほとんどだ。

欧州のトップチームに引き抜かれるなど栄転以外の何物でもなく、クラブにとっても誇らしい出来事だ。今後もマリノスで結果を出せば、欧州へのステップアップの道は開かれている。だから安心して、腕に覚えのある監督に来てほしい。


あす6/13には、松永英機暫定監督のもとに札幌とのルヴァン杯プレーオフの第2戦に臨む。松永氏といえば古くはヴェルディの監督だった人物だ。甲府、神戸、岐阜の監督の後は、長く育成年代にかかわってきた。マリノスのアカデミーに加わったのは19年で、今年はエリートリーグの指揮を執ったことでも知られる。

代表メンバーの合流はまだだ。
その中で、稀代の名監督を送り出したマリノスはどう戦うのかに注目したい。

柳想鐵(ユサンチョル)さん、安らかに

早すぎる旅立ち。

2003〜2004年の連覇に大きく貢献した柳想鐵選手がすい臓がんの闘病の末に、ソウル市内の病院で亡くなった。49歳。

 

ステージⅣとの報道は出ていたが昨年の開幕戦、横浜FM対G大阪にあわせて日産スタジアムを訪れていた。

 

これが結果的に最後の来日となってしまった。この開幕戦は、コロナ禍が本格化する直前のことで、まだスタジアムでの観戦人数や応援声出しの規制もなかった。今のところ、サポーターが彼の名前を大きな声で呼ぶことができた最後の試合となっている。

 

強靭。一言で言えばそんな選手だった。強く猛々しい、古き良き韓国代表を体現するような選手だった。

 

来日したのは99年。韓国で建国大学、蔚山現代というエリートコースを経て、マリノスに1回目の入団となる。自身にとっては初めての海外挑戦だった。

 

マリノスには今も韓国籍選手の入団があるが、そのはしりがユサンチョルさんだった。とくに2000年は22試合で17得点とゴールゲッターとしてその名を轟かせ、ステージ優勝にも大きく貢献した。

 

2年在籍の後にドイツ移籍を狙ったが、01〜02年は柏レイソルで活躍。日韓W杯にも出場し、母国の上位進出の一翼を担った。柏にはホン・ミョンボ、ファン・ソンホンがいて韓国代表トリオとして対戦チームから恐れられた。韓国代表として戦ったW杯ではキャプテンマークも巻いていたはずだ。

 

当時、闘将といえばブラジルのドゥンガのイメージ。またドイツのGKも闘争心の塊のようなカーンが有名だったがユサンチョルも闘将として名を馳せていた。

 

個人的な思いを正直に言えば、日本代表が16強で敗れたあとだったので韓国代表が上位に行くのを喜んで見ていたわけではないのだが、柏の3選手の裂帛の気迫が凄かったのは今も覚えている。あと安貞桓な。

 

 

03年、横浜FMの監督に就任したばかりの岡田武史監督がユサンチョルに復帰を打診したらしい。柏を退団していたユサンチョルは、Kリーグの蔚山に戻っていたが、この誘いを受ける。

しかし起用されたのはまさかの右サイドバックだった。

 

まさかの、と書いたが、当時サポーターでもなかった私は、ユサンチョル=右SBのイメージは意外に強い。

 

入団に合意していたとされる、補強の目玉であるセレソンのカフーが待ち侘びても、待ち侘びても来日してくれない。レギュラーの波戸康広はケガで離脱していた。

 

そんな巡り合わせで、ストライカーとして日本に来たユサンチョルはついに右サイドバックの切り札となる。

 

03年は1stステージ途中の加入ながら17試合、04年も19試合に出場して連覇の立役者の1人と言っていいだろう。

 

04年を最後に再び韓国に戻ったが1年で現役を引退した。

 

その後、大田、全南、仁川などKリーグの複数チームで監督を務めたが、仁川在任中にガンを患って途中退任したのが19年の10月のことだ。

 

その後、がんの進行がどうだったのかは、本当かどうか分からない韓国の報道でしか知れなかった。ステージⅣだと聞いてはいたが、回復を見せているとの話もあった。

 

だが、すい臓がんは、がんの中でも予後が悪く、切除しても再発の恐れが高いものとして知られている。

 

それだけになおさら、昨年の電撃来日は驚異的だった。

 

20年2月は、まだギリギリ多くのサポーターが海外に渡航できた。6年ぶりのACLで、相手は韓国王者の全北現代戦。スタジアムには「がんばれ、ユサンチョル」の横断幕が掲げられた。

 

これは韓国メディアでも大きく報じられ、本人の目にも入ることとなったようだ。

 

それからわずか1週間余り。

 

リーグ王者となったマリノスの映えあるリーグ開幕戦の日産スタジアム現れたのは、病床にいたはずのユサンチョル、その人だった。

 

すでにがんによる痛みなどで、一人で歩ける状況ではなかったと聞くが、元気な姿に見えた。

 

背番号8、マリノスで背負った思い出の番号が入ったチャンピオンユニフォームを手に取る。サポーターへの挨拶。私は絶対に諦めない、選手としてではないが再びサッカーの舞台に戻ってくる。だから皆さんも健康でいてくださいというコメントを残している。

 

最後まで諦めずに戦ったのは間違いがない。

この吉崎エイジーニョ氏のコラムによれば、13回に及ぶ抗がん剤の徹底した治療の末に、すい臓がんは消え去っていたという。だが脳への転移が直接的な原因になっていたとある。

 

マリノスでも確かな足跡を残して、今なお「兄さん」と慕われるユサンチョル氏。

 

韓国の歴史的なW杯初勝利に名を刻み、最後まで英雄として貫いた人生にあらためて感謝とご冥福をお祈りしたい。

 

あの時の優勝メンバーがまた早くして旅立ってしまったが、こんな知らない私たちでも語り継いでいくことはできる。

コロナが落ち着いたら諸先輩方の兄さん話を聞きたいと思う。

 

ユサンチョルさん、おつかれさまでした。ありがとうございました。ぜひ空からマリノスのこと見守ってください。

 

 

またも劇弾 隠れ2位が隠しきれなくなってきた【J1第17節○2-1清水戦】

再三再四にわたって、クロスは跳ね返され続けた。清水の5枚の最終ラインは均等にボックス内を埋めたうえで、持ち場に来たボールを勤勉に外へかき出していく。セカンドボールはマリノスが拾う。また横からだ、それを辛抱強く、我慢比べなら望むところ言わんばかりに弾く。

なんでもマリノスのクロス数はリーグ最多らしいのだが、それを弾き続ける清水という図式。とくにヴァウド、鈴木、奥井の3名の奮闘は讃えられていい。だが報われはしなかった。

水沼宏太は両手を広げ、レオセアラは雄叫びを爆発させた

前後半で20本のシュート、その20本目は89分という時間だった。シュート数は圧倒していてもスコアはタイ。直前のホーム戦だった柏との試合でも攻めたてながらも1得点しかあげられなかった。

CBの二人と、ボランチの二人が中央で、何度かパス交換しながら食いつかせたところ、畠中槙之輔が縦に刺した。このパスがよかった。
後ろ向きの天野純がシンプルに仲川輝人に落すと縦に運んだ後に、反時計周りに小池龍太、水沼宏太に渡る。

85分に入ってきた水沼は、これがファーストタッチだったのではないかと思う。高い集中力を誇ってきた清水守備陣にほころびを作るために、ほんの一瞬だけじらしてから中をめがけて速くて低いクロスを入れた。

触りさえすればよかったが、守備陣の届かないところのボールは、レオ・セアラにとっても遠かった。だがこれをよく引っかけた。ストライカーの嗅覚というものか。何度も両の拳を震わせるレオ、リーグ戦は2点めだが1回目は趨勢が決まった後にダメ押し点だった。こんな劇的な決勝点は初めてだった。
ベンチにいるメンバーもピッチ内に足を踏みいれて喜んでしまう。それもどうか許してほしい。そりゃ、どれだけ喜んでもいい。清水は前節に勝利していたとはいえ、勝点3以外は受け入れられない試合。
もうまもなく引き分けで終わろうとしていたのだから。

1本目のシュート(エウベル)と20本目がネットに突き刺さった結果の2-1勝利だ。

大然が凄かった 阿道もエウベルも存在感

その1点目のアシストは、左サイドで先発した前田大然。スプリント39本はこの日もトップだったが、もはやその数字では驚かなくなっている。
圧巻だったのは、エウベルへのクロスの正確さだった。スピードは掛け値なしに世界級の大然にもし今日見せたような精度がついてきたらとんでもないことになる。エウベルは本当に難しい体制でのシュートはうまい、GKと1対1になったときだけなぜ正(以下略)。

オナイウ阿道を加えた3選手が、現状のベストとして納得させるだけのプレーを見せてくれた。
マリノスのサイドに前田大然のスタイルは合わないと信じられていたのはほんの3か月前のこと。阿道もそうだ、マルコスのポジションのほうが適性があるのでは、トップはエリキやジュニオールサントスがいないと厳しいと言われたのが遠い昔のよう二人とも自分の強みを生かしつつ、マリノスのサッカーに適応している。環境に変化できる選手はやはり生き残る。

強さの阿道、速さの大然、なんか知らんけど両方あるエウベル。これは恐ろしい。好き。

ダブルボランチの岩田、渡辺という選択

試合前に注目されたボランチの人選は、前節の大分戦に続いて、岩田智輝、渡辺皓太がスタートで出た。ボランチという意味では喜田拓也がサブに回り、扇原貴宏と和田拓也はベンチに入っていない。

驚きをもって受け止められたかもしれないが、前節のパフォーマンスを見れば納得だっただろう。岩田はパスが散らせるだけでなくラスト3分の1により関与できる。渡辺の攻撃参加の回数は言うに及ばず、ボールの回収力という点でも喜田にそん色のない働きを見せた。なにしろ小回りが利くし、ターンは一番うまい。

大分、清水と引いてくる相手が続いたことでこのチョイスが続いたと想像する。

途中、岩田へのパスが立て続けに狙われたことがあり、実際に何度かロストしたことで清水にペースを渡してしまったことがあった。他の選手に比べると次のプレーの判断が遅いかなという気はしたが、何しろボランチ岩田は伸びしろの塊。渡辺、小池との息もあっていた。

開幕直後よりも出番が減っていたのは岩田の停滞もあり、松原健や小池がさらにすばらしいのもあったが、巻き返しは来るだろう。

そして渡辺皓太の時代がもうすぐそこにまで来ているのかもしれない。なんでもやる、この選手。

粘り強く戦ったティーラトン

狙われたでいうと、片山目掛けたロングボールで空中戦を挑まれ続けたティーラトン。清水はこのように「突く」と決めたポイントを徹底してきた。
苦手な空中戦で、だいぶ疲弊はしたことだろう。だが、ブンちゃんの気持ちはまったく揺らがないように見える。競り負けたとしても、その次のアクションで巻き返すという開き直りが見られたのは、すばらしいの一言。

それを補って余りある、正確なクロスの連射。これ自体が得点にはならなかったものの、ボディーブローのように清水守備陣のエナジーを削ぎ落していったことは想像に難くない。ムダな攻撃などない。ブンちゃんの速射砲があったから、水沼のじらしクロスも通ったのだ。

母国・タイの英雄は、W杯予選の招集を断った。隔離期間というデメリットがあまりにも長く、大きいためだ。ただ、簡単な決断であるはずがない。タイでは批判の声もあったという噂も聞く。そんな背景があるからこそ、マリノスで戦い続ける英雄を応援しないわけにはいかない。

決定的か、ボスの去就

この試合前から、喧しかったポステコグルー監督のセルティック監督就任の報道。試合後の会見で「今言えることは何もない、目の前の仕事に集中するだけ」というコメントを残したが、否定も肯定もなかったことで近日中に大きく進展しそうだと言われている。

スコットランドはシーズンが終わったばかりで、8月に新シーズンの開幕がある。(中村俊輔がいたころを思い出すな)
その前に、1年遅れのEURO2020があり、セルティックからは主力4選手が、スコットランド代表入りをしている。

つまり、今が離日、渡欧の絶好のタイミングだ。
ポストポステコグルー体制(通称:ポスポス問題)の対応に迫られているだろう。ハッチンソンHCの昇格があるのかどうか。いずれにしても、この数日で大きな動きが出ることだろう。

まだまだ戦いはこれから

ボスの退団は不可避だろう。マリノスで結果を残して、欧州CLにも出場する名門から声がかかるというキャリアパスはすばらしく、CFGならびに横浜F・マリノスにとっても一つの成果と誇っていい。豪州人の監督が世界サッカー界のトップシーンで評価されている話は聞かない。日本人選手が欧州に挑戦するように、国のプライドもかかった新たな挑戦をボスが受け入れるのはなんら不思議ではない。


とはいえ、マリノスは続く。
名古屋と鳥栖が足踏みをし、川崎はよせばいいのに劇的な勝利をあげた。これ以上離されるわけにはいかないが、もう実質2位だよねと言われることが増えてきた。川崎の独走に待ったをかけるのは試合数の少ないマリノスしかいないとも言われる。

辛抱強く守備を固める相手に、2連勝したこの「辛勝」の意味は大きい。
ACLが始まる6月、こちらは地に足をつけて戦える。
しっかりと追走しよう。