マリノスにシャーレを 2024

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

いつだってターンオーバーには興奮と落胆がつきまとう

「最強のチームによる試合参加」というベストメンバー規定なるものが、Jリーグの規約に書かれていた時期がある。
「基準として直前のリーグ戦5試合で1試合以上先発した選手を6人以上、先発メンバーに起用しなければならない」というものだ。

塩貝健人、榊原慧悟、小池裕太。集中のガンバ戦から土曜の湘南戦は中2日。あれだけドラスティックに入れ替わったスターティングメンバーだったが、上記の直近リーグ戦5試合で先発経験のない選手は、わずか3選手だった。

それでも、である。

左のCBに渡邊泰基が起用された他にも、センターラインが変わった意味は大きい。
大黒柱であるアンデルソン・ロペスに代えて19歳の特別指定選手が、昨年以上に負荷と重圧のかかる喜田拓也に代えてJFLで4年を過ごした元ユースの10番が。

「替えの効かない」とされたポジションを変えてみせた。ガンバ戦の後には、ロペスを休ませないのかと聞かれて「休ませると怒るからね…!」と愚将のフリをして煙に巻いたハリー・キューウェルの恐ろしさである。

過去の天皇杯やルヴァン杯のグループリーグでも、ダイナミックな選手の入れ替えはあった。そして、結果が出ないと、指揮官と代わりに出た若手が叩かれるさまを見てきた。落胆するのは自由だ。そりゃあ誰だって野津田の山奥で、あんな惨劇は見たくない。

しかし安全な場所から投げられる批判など「クソくらえ」だ。最強とはなんだ、ベストとはなんだ。その一瞬に、塩貝健人はそこにいたからワンタッチでネットを揺らすことができた。では、なぜそこにいた? ポジショニングみたいな話はしていない。所属する慶應義塾大ソッカー部の中町公祐監督の理解は必要だったに違いない。だが、中町の力だけで彼を日産スタジアムの先発メンバーに押し出せるはずもない。

「使ってみたくなった」に違いない。緊張も、萎縮も、空回りもせずに結果を出して見せた。間一髪、タッチライン際からボールを救い出してアシストを記録した水沼宏太が破顔している。この男は、いつも同僚の成功を自分のこと以上に喜ぶ。

だが、後半に決定機を外したのも塩貝だった。3点目を決められていれば勝てた試合だから批判の矛先が向いても仕方ないかもしれない。だが、1点目の印象が上回る。19歳、大学2年、鼻っ柱の強そうな顔つき、相手をイラつかせるほどの厳しいチェック。こういうエゴイストは、おそらく伸びる。

2点目の失い方は痛恨だった。相手は1人少ない状態で下位に低迷している。守護神の韓国代表は、出場停止で不在で、もう追いつかれるなんてどうかしている。よく言われる「優勝を目指すなら落としてはいけない試合」の典型例だろう。脱力感はたしかにある。

あえて優劣をつけるなら、リーグ戦よりもACL準決勝を優先した。それはそうだろう。クラブが到達したことのないタイトルまであと4試合だ。執着しないほうがおかしい。大一番前の5連戦はこれで終わり、いよいよ蔚山へ向かう。

このターンオーバーの興奮は、明日へとつながる。そして、いつかターンオーバーといわせないために、若武者たちは序列逆転を狙うだろう。アジアの頂点へ、そしてその後の長い旅へ。必要な戦力の厚みが整ってきた。