久しぶりの更新となってしまった。気づけば2022年シーズンの開幕。早速ジャッジリプレイの注目回となったので感想、考察をしてみよう。
一番の注目はG大阪対鹿島で起こったパトリック選手の一発退場。主審の荒木友輔は「トップレフェリーの1人」から看板審判になりつつある存在。ただし結論としては間違った判断だと言わざるを得ない。
パトリックと鈴木優磨の接触はあった
問題のシーンはDAZNの「ジャッジリプレイ」で見ていただくのが早い。
簡単に言うと、
- パトリックの後ろから鈴木がスライディングしてファウル。
- それほど強い接触ではないが、さらにパトリックの腿を後ろからホールディング
- 鈴木がパトリックのプレーを妨げようとしているのは明らか
- 振り払おうとしたパトリックの腕、肘が鈴木の胸を押す格好になった
- 報復的なラフプレーと判断した荒木主審はパトリックにレッドカードを提示した
え、悪いのは鈴木の方じゃない?って話と、パトリックの肘当たってなくね?いや当たったとしても明らかに大げさに転げているよね、まるで鹿●みたいなプレーだな!というのが違和感だったのではないかと思う。
巨人・家本政明さんの解説ポイント
家本さんの解説はおおむね次の通り。
- 荒木主審の位置からは一連の動きすべては見えなかったはず
- とくに肘が当たったかどうかは角度としても判断が難しかったはず
- 副審も同じくすべては見えなかっただろう
そのうえで、家本さんは独自の基準としながらも
- ノーファウルかファウル(フリーキックのみ)か
- ノーカードか警告か
- 警告か退場か
の3つの尺度で、今回のプレーを説明。
家本さんによれば、鈴木のプレーは
「まちがいなくファウル。イエローかどうかはどちらかと言えばイエロー。退場はない」とした。
パトリックの報復については、
「どちらかといえばファウル。イエローかどうかはどちらかと言えばイエロー。退場はない」とした。
3尺度の説明は、原博実氏もわかりやすい!と絶賛。
したがって、「パトリックは可哀想としか言えない」と個人的な結論を述べている。
それでも解せぬ部分「VARの役割とは」
さて、当然VARは何していたんだ?となる。
ここでVARが介入しなかったのは「接触があったのは事実であり、退場が明確な間違い」とは言えなかったからだ。
だが見ている方は解せない気持ちになる。VARはあくまでも補佐ではある。「報復」を重く受け止めた主審の主観、判断に、主観では立ち入らないというルール。ただやはりオンフィールドレビューを勧めるVARであってほしいと思う。
人間の2つの眼だけでは追い切れない真実(主観による判断もあえて真実と呼ぶ)を見て、判定の精度を高めるのはVARルームにしかできない役割だからだ。
VARが試合の流れを過度に止めないように配慮しているのも強く感じる。
でも、VARの主審へのアプローチはもう少し運用を考えてもいいのではないか。レッドカード相当のプレーが見逃されていたら介入するのだから、レッドカード相当ではないプレーでレッドカードが出たらやはり介入した方がいいと思う。
荒木さんについては(昔の家本さんもゼロックス杯で経験したように)開幕で、毅然と対応した余りの結果かなと、同情することにする。
もともと真面目で正義感の強い審判という印象がある(私の主観です)。名ジャッジの試合もたくさんされている。
こちらも次の試合では修正して、心機一転のナイスジャッジを期待したい。期待しています。
長期的に得する人、得しない人
パトリックの振る舞いは立派だった。今回の誤審による被害者と言っていいだろう。
家本さんは「パトリックさんは、ピッチを去る際にいつものように頭を下げて礼をしていた。そこに日本人のこころのようなものを感じた」とコメント。
徳を積む行為だった。頭を下げた瞬間も処分に納得していたはずはないだろう。それでも受け入れた。サッカー選手であり、人間の振る舞いとして尊敬できる。チームメイトや観客もそう思ったのではないだろうか。
パトリックは過去に人種差別を受けて、ショックな様子をSNSで語っていたのも見たことがある。それでも気丈につとめ、日本を愛し、ガンバにために戦う選手。復帰は第3節になるのだろうか。マリノス戦以外ではぜひ応援したい選手だ。
一方で多くを語りたくないが、鈴木のプレーは褒められたものだったか。「いや、肘当たっているし!」というなら仕方がない。ただ見ていて気持ちのいい振る舞いではない。子どもたちに真似してほしくない。上のほうで鹿●みたいなプレーだな!と書いてしまったが、それは私の印象だ。
ずる賢さもサッカーの一部だが、やはり応援はできない。長期的に、すばらしい選手、すばらしいプレーと言われるかは大切な気がする。この試合では損をした選手がいて、大げさなリアクションがその引き金になったかもしれない。でも、蔑むのではなく「あーあ…」と言うのはどうだろう。もしやましい気持ちがあるなら、今後はやめてほしいけれど。
ただ、そんなのはあまり相手にせずパトリックをサポートしたいなと思った。
マルコスのPKについても一部気になった点が
横浜F・マリノス対セレッソ大阪の試合でのPK判定となったシーンもジャッジリプレイで取り上げられていた。
結論としては、山本雄大主審の判定の通り「先にボールに触れていたとしても」相手選手への激しい接触、右足をたたむなどの配慮が必要だったとのこと。
この際、C大阪のとくにキムジンヒョンが執拗に抗議。それを山本主審が繰り返し、ジェスチャーを交えて丁寧に説明していたのはさすがだなと感じていた。
だが家本さんの指摘はそうではなく「どこかで線を引くべき」。丁寧な説明だけが優先されてはいけない、サポーターや相手チームのことも考えてマネジメントすべしとの意見だった。
むぅ、奥が深い。主審を取り囲んで長い時間、抗議するのも彼の言う「ワクワクする試合」を妨げるということだろう。
コミュニケーションも大切だと思うし、私がたまに担当する社会人リーグの下のディビジョンでは「もし一言でも文句を言う選手がいたら即警告でOK(笑)」などと、半笑いで言われたがはたして…。
ただゴネ得はよくないし、特殊なプレーであるPKは早く終わらせて通常のプレーを楽しみたい気持ちは確かにある。
ということで長く書いてしまったが、荒木もパトリックもがんばれ!!
審判をゆるく楽しむ人向けの本を出しました。Kindle Unlimitedなら無料で読めます!