今年の広島がここまで強いとは意外だった。JFKと言えば失速、ガッツポーズの角度も徐々に浅くなり、秋の声が聞こえる頃には顔面蒼白の記者会見というのが風物詩にもなっていた。それが11試合負けなしで、4位。かたやマリノスは3位。生き残りをかけた6ポイントマッチ。
勝利して得られる勝ち点は3だけれども、相手に勝ち点3を与えないという意味で、勝った時と負けた時では実に6ポイント分の勝ち点差がつく。だから、ただの1試合じゃあないんだよ! そんな意味が込められている。加えて、どんな巡り合わせか、カシマスタジアムでは首位の瓦斯と、2位鹿島の直接対決。瓦斯が勝つ場合を除けば、ますます優勝争いが風雲急を告げることは必定。したがって三ツ沢の6ポイントマッチ、否、デスマッチも一層の意味を持つ。
デスマッチ。そうだ、負けた方は、優勝戦線からの脱落。残りはせいぜいACLの出場権を狙うのが関の山だろう。引き分けなら両方ともが撤退か。だから絶対に勝たねばならない。
広島とのご縁は、1993年以来の長い付き合いになる。
リーグ戦55戦で、31勝6分18敗だ。クラブ別に言うと、浦和と並んでマリノスがリーグ戦で白星を最も上げている相手ということになる。長い歴史の目線で見れば、戦績は「お得意様」に近い。
だがここ5年=最近で見ればやられていることが多い印象だろう。数字も実際にそう出ている。2015年シーズン以降は、2勝2分5敗。広島が上位で安定していることに加えて、堅守×強力FWというパターンもマリノスが苦手とするところだ。難敵である。
だが冒頭に言ったように今のマリノスが優勝戦線に加われているのは、広島さんのおかげと言っても過言ではない。
新時代・令和の初戦、リプレイで見れば広島の同点ゴールだったが得点は認められずマリノスが勝った。でも今季一番の「不思議な勝利」と呼べるほど内容では広島が上回っていた。
左SBの高野遼に加えて、右SBの松原健が負傷で離脱した折には、和田拓也を緊急レンタルしてくれた。
原田岳の期限付き移籍を容認したら、なんと開幕時の守護神、飯倉大樹が神戸への移籍決定。控えGKにも困る状況下で中林洋次を緊急レンタルしてくれた。
マリノスの目の上のタンコブである、川崎や瓦斯には果敢に戦い勝ち点を奪ってくれた。
このようにマリサポは、広島の方角に足を向けて寝てはいけないほどの恩義の数々。ここまでしてくださったのだから、甘えついでにもう勝ち点3をいただきたいところだが、さて、どうなる。
注目は、柏好文と断言したいところだが、ハイネルがいるだろう右サイドだってなかなかえぐい。サロモンソンもいいプレーヤーだ。何が良いって、守備もちゃんとする。リーグ最少18失点=1試合すなわ平均0.72失点を支えるのは、守備時の5バックによるブロック形成。つまりマリノスお得意のハーフレーンもキッチリ埋めます、埋め立てます。それに1対1でしっかり粘って守備をする上に、攻撃時には最強クラス、いや最強の槍と言えるだろう。
泣き所は、ドウグラス・ヴィエイラに続いて、レアンドロ・ペレイラも負傷離脱したCFだが、渡はカップ戦でも得点を記録。この二人に比べれば怖さは落ちるが、ストイックでピンチの時こそ仕事をしそうな嫌さはある。
そんなサイドの攻防を考えると、CFマルコス・ジュニオールで、仲川輝人を右、遠藤渓太を左が一番バランスが取れそうなものだが、
マテウスー仲川ーエリキの3トップの並びになる模様で、G大阪戦の前半を思い出すと、やはり守備面でのアンバランスさは、素人にも目につくところ。殴って殴って殴る作戦は、間違いだとは思わないが、90分殴り続けられるはずもなく、カウンター×柏の突破力というのは悪夢でしかない。
褒めてばかりじゃしょうがないけど、守護神・大迫やCB荒木がいて、東や川辺もいて、一方で柴崎晃誠や青山といったベテランが中央にいて、バランス良いよな広島は。
広島の後ろには4連勝のC大阪も迫ってきた。でもマリノスにも年間を通じて上位を守ってきた安定の自負がある。繋いできた挑戦権は、最終節の直接対決まで繋ぎたい。絶対勝利。草ボウボウのビッグアーチでもなく、芝が傷み切った日産スタジアムでもなく、ニッパツ開催なのも意味がある。
上げ潮の広島に先制点を与えずに勝ちたい。マリノスのリーグ戦通算得点は1400まで、あと「1」だ。早々に得点を刻んで、凱歌をあげる。