今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

天野純という個、湘南という組織【J1第3節湘南戦◯3-2】

天野純はほんの少し誇らしげだった。いつもと同じく淡々としたインタビューへの受け答えに見えるが、2点目のゴールを振り返って自身の成長について語ったときの口調に、僕たちなら気付くことができる。それは、僕たちがずっと新加入の天野純を応援してきたからだ。

 

恩返しの強い気持ちをもって

63分ピッチへ、66分には同点ゴールを左足で放り込んだ。そして、77分のこと。オナイウ阿道から天野へ、エジガルジュニオから再び天野へ。小気味よいショートパスのやり取りで天野はボックス内に侵入し、DFの股下を引っ掛けながらも前進して抜くと、最後のDFは右足の切り返しで交わす。狙うはGK富居の股の間だ。閉じる足よりも天野のシュートが強くて速かった。個人技で奪った2点目。リモートの観客はもちろん、記者席からも思わず声が漏れてしまう技だった。

 

良い意味で天野らしからぬゴールだった。とくにベルギーに移籍する直前は、元来のポジションよりも下がり目で、ボランチの横で攻撃の組み立てに関与することが増えていた。ただ浦和戦で見せた変化=成長は、ゴールまでより近い位置でのプレー、得点に直結する動きだった。そこに彼の覚悟を感じないわけにはいかない。

天野純の浦和戦のヒートマップ。(湘南戦のものはまだアップされていないようだ)

 

確かに凱旋という表現は使いにくい。「不甲斐ない形でマリノスに帰ってきて」と本人は言う。所属クラブの経営破綻については彼には何の責もない。だから彼のマリノスへの恩返しの気持ちを持ってという言葉はスッと受け入れられる。元来、言葉が先行する男ではない。プレーで結果を示す。実際に示した。1点目の後の「単独高速ゆりかごダンス」を見かねたのか、逆転ゴール後には10人ほどの選手が参加して微笑ましいゆりかごダンスが披露された。

 

天野純の独壇場だった。カッコ良かった。そして3点目を取れそうなのに足がもつれてしまったシーンも。与えた怖さは十分だった。おかえり、天野純。また一緒に戦えてうれしいよ。

 

 

湘南の組織にやられる

という見出しをつけながら、湘南で最初に触れたいのは鈴木冬一である。トイチの名前の通り、10日に1割のペースで成長している感がある。こりゃいい選手だ。まずは仲川輝人対策がすごい。テルへの寄せが速くて強い。本当にやりづらそうだった我らのMVP。球際も強いし、アップダウンも多い。上述のゆりかごの直後にトイチに同点ゴールを許すわけだが、よくまあ79分にあの位置までいるもんだ。スプリント32回は全体2位。(1位は湘南金子の34回)

走行距離も11km超え。それであの強度だから嫌になる。松原健の1対1対応は劣勢だったと言わざるを得ない。マリノスが今後獲得を狙いそうな選手だなーと感じた。

 

それよりショックであり、屈辱だったのは、マリノスのやりたい組織的な崩しを湘南に幾度となく見せつけられたことではないだろうか。38分の湘南ゴール前から鈴木冬一単独疾走までの流れは、湘南ゴール前でのマリノスのプレスをことごとく剥がされてなものだった。ワンタッチ、後ろに落として、前を向いた選手は1列前に確実に前進させる。湘南がやりたかった形を見事に見せつけられたシーンであり、はたしてマリノスがこの試合でこれをできたか。

 

先制点を奪われた場面も同じだ。右から左、左から右へと揺さぶられ、背後を取られる。中川は触ればよかった。組織的に完全に崩されているからだ。守備陣を切り裂いて、仕上げるのは2019マリノスの専売特許のようなものだったが、今は違う。マリノスが今のスタイルに辿り着くまでに苦労したものだから、湘南が繋ぐスタイルに変化するには相当な痛みを伴うものだと私は決め付けていたが、すでにもう変化し始めている。その空恐ろしさを感じた。

 

でも個はないより、あるほうが絶対いい

そう考えると、リーグ戦3試合で4得点。マリノスのゴールはどれも技が光ったものだった。開幕戦のマルコス・ジュニオールの得点は彼の反転する体幹の強さと正確なコントロールがなければ決まらなかったろう。この日の3得点もしかり。

つまり、今のマリノスは個人の能力によってのみゴールを生み出せていると言えないだろうか。

 

善悪の問題ではない。個人技はあった方がいい。得点時の興奮の種類は違うけれども、喜びの爆発という結果は同じだ。

 

天野と同じ時間に投入された、水沼宏太とオナイウ阿道。彼らがセットで入った意味は何か。右足クロッサー・宏太は正確なボールを。それを頭で仕留めるのはアドの仕事だ。

 

ドンッ、というアドの前頭部がボールを叩く音がはっきりと聞こえてきた。決めて当然だろ、と鼻を膨らませてゴールを祝うアドと、一仕事を成し遂げだ安堵のような宏太。交代選手が決勝点も含めて全3得点を生み出す意義あるものとなった。

 

守備面ではいろいろ課題が出た。不用意なパスミスがまだまだ多いし、失点に繋がらなくても軽さが出た場面もある。

 

勝ち越し点の後の被決定機を梶川裕嗣が触っていなかったらクロスバーではなくてネットに突き刺さっていたかもしれない。辛勝も辛勝、よくまあ勝点3が取れたもの、という見方もできる。

 

まだまだ始まったばかり…とはいえ

今季リーグ戦初勝利は、あの最終節の瓦斯戦以来、実に7ヶ月ぶりのものとなった。たかが3試合、されど3試合。勝てて本当に良かった。これで本当に開幕である。

 

すぐに瓦斯戦が来る。試合は続く。メンバー選考はさらに予想困難になる。それもまたこちらは楽しい。たとえばセンターバックの2人、伊藤槙人、畠中槙之輔はともに警告を受け、2人とも危ない場面を作った。チアゴも休ませたいけれど、この2人できちんと試合をしめてくれないと困る。ただそれもまた伸びしろ。

 

交代選手が活躍すれば、スタメンはまた変わるかもしれないし、それならまたサブに回った選手が燃えてくれればいい。

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選手たち、三ツ沢の旗で埋められた客席に向かってハイタッチをし、拍手をし、手を振ってくれてありがとう。その気持ちを忘れない。

それに素晴らしい逆転勝利をありがとう。この1勝を忘れない。