今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

飯田淳平主審200試合セレモニーへの拍手

扇原貴宏がPKを取られたプレーは、シミュレーションだったのか。判定通り、郷家へのトリッピングを取られるべきだったのか。私の結論として、7回に渡って繰り返しビデオを見てから言えば、「PKではない」が正しいと思う。

 

タカはボールにチャレンジしたとは言えない。ボールに到底届かないと判断し、さらにこのままでは郷家の足を払ってしまうと察知して足を止めようとしたのだと見える。郷家の側から見れば、トラップが意図より大きくなってしまい近くに居たティーラトンにさらわれてしまいそうだ。そこに足が近づいてきた。このまま足を払ってもらえればPKが貰えるかもしれない。少なくとも不利な態勢でティーラトンに挑むよりはマシかも、そう反応して自分から倒れたようにも見える。

 

J1通算200試合主審を達成し、試合前に表彰セレモニーを受けた飯田淳平主審は、小田原出身の39歳。国際主審でありかつ、プロフェッショナルレフェリーでもある現在の日本を代表する、国内のサッカー審判28万人のほぼ頂点に位置する主審である。セレモニーでは小学校低学年と思しき、ご子息がブレザーにネクタイ姿の正装で花束のプレゼンターを務めた。7千名を超える観客が四方から万雷の拍手で偉業を称える。審判冥利に尽きる一瞬であったことは想像に難くない。生え変わり中で前歯のないご子息も誇らしげだった。

 

200試合を超えた飯田主審が、ちょうど同じくJ1通算200試合出場を果たしたばかりのタカに突きつけたPKの判定。これをアンドレス・イニエスタが落ち着いて沈めたことでマリノスは逆転許してしまう。結局は1点差で敗れたために勝敗の面にも大きな影響を与えてしまったこととなる。

 

試合を壊すとか、クソジャッジとか、セレモニーでの拍手を返せとか、相変わらず審判への風当たり、いや誹謗中傷がひどい。誤審がどうかで言うと、私の感想は「ギリ誤審」。だがやはりタカがスライディングを選択したのが軽率だったのではないかと思う。球際をきちんと強く行こうとしたのはよく分かるが、あれはPKを取られても仕方のないシチュエーションだった。もう5秒プレーを巻き戻せば、センターサークルを超えたあたりでボールを受け、前を向いたイニエスタにあんなに自由なスペースと時間を与えてはダメだ。一枚行ってくれ!声にならない声で私はスタンドから念を送ったが、結局は致命傷になってしまった。いや、言いたかったのはマリノスの守備対応ではない。

 

そして私がもたもたしているうちに、「ジャッジリプレイ」が公開されてしまった。小幡さんを含めて、原、平畠両氏もPKではないと断言していて、後半はダイブを取るべきか云々の方に時間が割かれていた。

 

大切なことを、実況も担当した桑原氏が言っていた。「僕も実況をしている瞬間はPKだと思った。でもリプレイを見たときにアレ?と思った」 ここなのだと思う。

 

VARルールのない中で主審にはビデオを見ることもできない。よそ見の許されない一発勝負。DAZN中継のスタッフたちは直ちにリプレーでの検証ができる。それをスマホ片手にスタンドのファンたちも見ることができる。むしろリプレイを自由に見ることのできない稀有な存在が、レフェリーと選手たちなのである。VARが復活したとて、介入されるプレーは限られるが、このシーンはPKか否かなので、VARは間違いなく介入したことだろう。で、フィールドオンレビューで、郷家のダイブが見抜かれて警告。こんなところではないだろうか。

 

飯田主審は極めて適切な距離でこのプレーを見ていた。番組では、角度の問題から郷家の軸足、実際にはまるで接触していない右足を払ったように見えたのでは?との指摘もあった。繰り返し、繰り返し見ればタカの足と郷家の「右足」は接触していない。では聞きたい。あなたはあれを一度きりの、通常の速度で、正しく判定できるのか。時を戻せば、桑原氏と同様に私はPKだと思った。現地のゴール裏、ちょうど飯田主審の真逆の角度から見ていた。隣にいた息子の憤りをたしなめるように「いや、しょうがない、あれはひっかけてるよ」

ビデオを複数の角度から、通常の半分以下の速度に落とした上で見た人は言う。「違う」

 

 

もう一点、PKの判定を下す、つまり笛が鳴るまでの約1秒間の間合いについて。言うまでもなく、神戸のアドバンテージを瞬間的に取ったテクニックだ。だがすぐにマリノスにボールが渡りチャンスが潰えることになったため、巻き戻してPKを告げた。これを遅いだの、間が悪いだの、言う人がいた。私は逆である。アドバンテージを適切に管理できる主審はすごい、と。

 

ファウルを見逃すまい!と血眼で見ていると、つい反射的に笛を拭いてしまう。積極的にプレーを止めにかかってしまう。目の前の、今を追うだけでも必死だからだ。だが一流は未来を予測する。止めてしまったらもう戻せないからだ。けれど、予測した有利な事象が「直後に」起こらなかったら、巻き戻せる。ファウルをおかした方は、流されたと思ったファウルを取られるとガクッとなる。文句を言いたくなる気持ちは分かる。だが逆の立場なら、同じ人は真逆の文句を言うのだ。「おい!止めるなよ!アドバンテージ!流れ読んでくれよ」

もうその人が主審やるか、結末を知っている神を未来から呼ぶか、好きにやってほしい…。

 

こんなシーンもあった。後半AT、ビハインドのマリノスは猛攻を仕掛けて、神戸は押されながらもカウンターでの止めを狙っていた。神戸選手がオフサイドだったので副審は旗を挙げて静止する。

だがプレーは止まらず瞬時にマリノスがボールを奪ったためにマリノスの攻撃が始まった。その時の副審の切り替えの速さよ! オフサイド適用がないと判断すると、直ちに旗を下げ、主審は全速力で神戸陣内に入り、副審もラインに合わせてポジションを修正する。こうしたプロフェッショナルの動きがあって、高速カウンターは成り立つ。

 

スコアだけ見ると、PKでないはずのPKで勝点2を失ってしまった。マリノスにばかり3枚の警告が出た。マルコスの異議やティーラトンの接触は、観客席からだと「えー!」と思った。

だが試合前、セレモニーでの飯田主審への拍手は温かなものだったと確信している。その功績を今回の試合結果や不本意な判定だけで、覆す、取り消すのは違うはずだ。VARがないことで得もある、損もある。誤審による恩恵を受けることだってたくさんある。トータルで言えばチャラ(のはず)。

 

ミスを許す、ミスした者は繰り返さないように技術向上につとめる、改善を褒める、フェアプレーを胸に刻む。お題目でなく言い続けていこうと思う。