銀皿航海 蹴球7日制

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

山中亮輔、復活の狼煙【J1第27節・磐田戦】

混沌極まるJリーグ。降格圏に足を突っ込むほど悪くないとみんな思っている。けれども、約半数のチームが残留争いに加わっているという恐ろしい現実がここにある。でも町田が頑張り、自動昇格枠の1つを消そうとしてくれている。しかも今年から入替戦が復活しているため、昨年までなら降格枠は「3」だったのに、今年はこのままなら「1.5」というなんとも狭き門。つまりは、最後まで降格するチームの数すら固まらないのである。

ならば目指すことはただ一つ。目の前の試合に勝ち、ライバルを上回ることだ。
ここから先、勝ち点3を逃すことは自らを一層、泥沼にはめてしまうととともに、眼前の相手が少しずつ楽になっていくことを意味する。

勝てばいい。あと一歩、あと一点。それが届かずに戦いの舞台を去って行く者たちを、ずっと乗り越えてきた。絶対残留!と、みんな言う。でも必ず誰か落ちる。その差を分けるものは何か。勝ち点1と3を分けるものは何か。端的に言えば、その得点が入るか、入らないか、である。

ちょうどこの日の山中亮輔のミドルシュートのように。
86分、耐えに耐え抜いたマリノスにとって最高の贈り物だった。当たり損ないのようであり、名手カミンスキーが弾けないボールでは決してなかった。「気持ちの差」などという身勝手な言葉で片付けることはできない。磐田も負ければ、残留争いに巻き込まれる緊張感があり、余裕など決してないからだ。
退場する直前のドゥシャンがドリブルで持ち上がってくれたプレーが有効だったわけだが、謎としか言いようがないのは磐田のバイタルを開けてくださる守備である。
当初、セカンドボールを拾えていた時のマリノスは、そのスペースを使うことができ、やがて拾えなくなってから劣勢に回った。最後は磐田の足も止まって、山中にチャンスがやってきた。

それをよく振り抜いてくれた。調子を落としてからは力みが原因か、バーの遥か上に飛ばしてしまうことが多かったものだが、地を這うような軌道。カミンスキーには、エリア内の選手がブラインドになった部分もあっただろう。「あまりインパクト自体は良くなかった」のに、入るときは入る。
遠藤渓太は見事にボレーを決めた。大津祐樹のクロスも見事だった。決めるのはドフリーだから当たり前? それは違うと思う。浦和戦での逸機があったからこそ、彼もまたこの一撃にかけていた。キーパーにぶち当ててしまうことも、枠を外してしまうことも頭をよぎったことだろう。でも振り切ったからこそ生まれたゴールだ。

一方でその直後、ドリブルでスライドしてからの枠外シュートがあった。後半開始から登場したウーゴ ヴィエイラは左足でポストを叩いた。2点目を早く手に入れたかったのに、それが成らなかったのはいつも変わらない課題を抱えたままだ。だからこそ、どちらに3ポイントが転がるか分からない試合を続けてしまう。
飯倉大樹のビッグセーブ。悪く言えば、向こうの決定力不足。互いに譲り合うようなパスミスの応酬。暑さもあって、精度は落ちていった。

ギリギリの戦いで得た3ポイントで、順位を上げたが混迷は深まるばかりの残留争いだ。強いて言うならジュビロサン、ようこそ、というくらいか。

我々に一番大きいのは、精彩を欠いていた山中が決めたことではないか。
まだ春に牽引していた姿には遠い。だがこの一発で、いろいろ変わりそうなのも山中の魅力である。この復活の狼煙を確かなものとできるのか。山中の戦い、マリノスの戦いはここからがヤマ場となる。

久保建英は覆われた殻を破れるか

サッカー選手としては日本で一番有名なティーンエイジャーであり続けた。FCバルセロナ育ち、将来を嘱望される存在ながら彼の力が及ばない事情で、回り道を選ばざるを得なくなったと言っていいだろう。帰国してJリーガーとしての道を歩み始めたことにより一層、注目される存在となった。

 

「将来の日本の宝」扱いが彼にとっていいのかどうか分からないが、FC東京で出場機会を掴めない中、マリノスへの期限付き移籍を決めた。ポステコグルー監督の目指すサッカーに合いそうだとか(少なくとも健太式瓦斯に比べれば)、実弟がジュニアユースに所属するマリノスは縁もあり生活圏が一致する、などが移籍の理由と言われた。

 

J1に拘った久保都合による移籍だとか、マリノスには久保を育てている余裕などないとか、そんな声が少なくなかったのも事実だ。久保は18歳になる来年には、バルセロナに戻る希望を持っている。だが相手が戻ってこいと言ってくれなければ何の意味もない。そのため、このまま実戦から遠ざかっているままではマズかったのだ。戦力であるかどうかより、そこが注目されるのは久保ならではの立場によるものだ。

 

仙台戦(天皇杯)でのプレーは、リーグ戦の先発を掴むほどだったかと言われると、微妙に思えた。試合に敗れたことで、今季の公式戦の数は伸びなくなった。規定(既に瓦斯時に出場してしまっている)でルヴァン杯には出場できないため、久保建英のチャンスはリーグ戦のみに限られる。

 

まあ、前線のライバルが帯に短し襷に長しで情けないのは事実だ。代表で離脱中の遠藤渓太を除けば、大津祐樹やユンイルロク、オリヴィエ ブマルが久保の先発を妨げるとは到底言いがたい。だからマリノスを選んだとか言われると、身もふたもない。お前の彼女ブスだよな、だからこのレベルで若ければ可愛く見えるよなと他人には言われたくない。

 

松原健が真横に出して、少し浮かせたトラップ。得意の左で蹴る場所に止める美しい動作で、DFは中央のシュートコースを塞ごうと体を寄せる。そこに開いたサイドのコースを狂いなく、久保建英が撃ち抜いた。

直後に仲川輝人と交代予定で、これがラストプレーになるはずだった。そこで結果を残したことは彼の人生にとって大きい。絶賛残留争い中のマリノスにとってもこの上ないゴールであった。

 

うまい。確かにうまいが、怖かっただろうか。守備時の一歩の遅れも気になる。天皇杯からの連戦での疲弊?  実戦から離れていたからゲーム体力が落ちている?  それは今後明らかになるだろう。ただ衝撃的なデビューで飯が食えるなら、ダビド バブンスキーは入れ替わるように大宮に拾われたりはしないだろう。「2試合連続のベストゴール」を挙げたって、夏にはは先発を外れていた。

 

それとも、イニエスタのコースを歩むのか。すなわちバルセロナに戻れるのか。それにはマリノスで違いを示さなくてはならない。

 

本来なら所属するはずもなかったマリノスで何を得、何を残すのか。長くないはずの船旅が始まったところだ。

 

 

 

「おまえら、下向いてんじゃねーよ」【J1第19節・広島戦】

3試合で11失点では勝てない。攻撃サッカー志向のツケだと、メディアは言う。でも、ある意味では合っており、それだけではない。

仙台での大勝が衝撃的なら、味スタと三ツ沢の連敗もまたそれを上回るショックだった。

 

あっさりした失点が増えた。失点することに慣れてしまった、ようにも思える。チープ。負の連鎖。だから、短時間に2点、3点と立て続けに失うことも珍しくない。こんなことは以前なら考えづらかった。渡を誰も捕まえられていない。パトリックにいとも簡単に振り切られて、フリーでのヘディングシュートを許してしまう。

 

とにかく奪われたあとの対応がもろい。もろいから、リカバーのために消耗するものも大きい。それは、この季節に相まって、危険極まりないダメージが体に残っていく。よって走り負ける。失点は続く。

大勝あるいは大敗、しかも敗戦に転がる可能性の方が大きいとなると、心へのダメージもあるだろう。

 

瓦斯、広島、川崎と上位3チームとの対戦が続くのもタフである。日程的な巡り合わせもなかなかうまくいかない。清水戦が流れたために平日のホームゲームがまた増え、興業的にもキツイ。

ビッグネームの獲得でドル箱と化した神戸、鳥栖とのホームゲームももうない。隣は両方残ってるというのに。おっと、この話は単なる愚痴だった。

 

更新が遅くなったせいで、松田直樹の命日を今年も迎えた。リバウンドメンタリティの塊のような彼だったら、こんな時になんと吠えただろうか。ツェティノヴィッチや中澤佑二と口論を繰り返していただろうか。上手くいってない時にマツのことを思い出すのは、夏の風物詩のようであり、あれ毎年夏とも、こんな感じで上手くいってなかったっけ苦笑。

 

3試合で11点など、記憶にない。仙台戦で爆裂にプラスに転じた得失点差もたった2試合ですべて吐き出した。仙台戦で、ついに花開いたという充足感があったからこそ余計に辛いのは確かだ。2試合、これだけの大敗が続くことに、大量失点に、我々はあまりにも慣れてない。

だからこそ、信じる時。チームの力を。やってきたことの意味を。サポーターは選手たちを。

 

上手くいかない日も、一喜一憂しない。こんなはずじゃないとかいらない。結果を出すしかない。

 

おまえら、下向いてんじゃねーよ。って俯き加減に、三回呟くと、不思議と目線が上がってくる。不思議と。

 

明日は川崎戦がやってくる。松田直樹を一層思い出す特別な夜。彼の名に恥じない、強くて勇敢なマリノスを。

 

首位を叩く準備万端【J1第19節・広島戦 展望】

台風による清水戦の順延が吉と出るだろうか。

アウェイの瓦斯戦から1週間以上も開くことになった。広島対策というか、パトリックとカウンター対策というか、時間を取ることができたのはいいことだろう。ディエゴ オリヴェイラに苦しめられた瓦斯戦の記憶が塗り替えられないままに広島と戦うのも、メリットは大きいだろう。

 

でも分かっていてもパトリックは止められない。1-4で浦和に敗れる前の試合、ガンバを一蹴した試合でもパトリックの存在感は別格だった。ただのフィジカルモンスターではなく、駆け引きのうまさもある。

日本での初陣となるドゥシャン ツェティノヴィッチが対応する場面は多くなるだろう。現在、日本最強クラスと言っていいパトリックといきなりやり合うのは骨が折れる。だがフィジカルの強さでは、前評判の高い彼なら、いい勝負をしてくれるのではないか。瓦斯戦を振り返るまでもなく、硬いブロック守備とカウンター狙いのチームとは分の悪そうな我らがマリノスは、前回対戦で3失点と良いところなく敗れたわけだが、その雪辱を狙う。

 

だから難しい。マリノスのミスを待ち構えるように相手は対峙する。リスクを犯すのはマリノスばかりで、ミスする危険もマリノスばかりが負う。ゆえに選手の頭から、積極性が奪われると、袋小路に入ってしまう。遠藤渓太と仲川輝人の仕掛けは必要であり、実は「被パトリック」と隣り合わせでもある。瓦斯戦で露呈したリスク管理の甘さと、先制され引かれてしまうと失点の連鎖が起こりかねないという弱点をどのように埋めてくれるだろうか。

 

今のところ、広島はいいシーズンを送っているという還ってきたボス、アンジェ ポステコグルー監督の言葉は不敵に聞こえる。パトリックにしっかり対策しながら自分たちのサッカーをやりたいとも言う。言うは易しだが、どのような修正をもたらすだろうか。リーグ戦の間隔が開いたからこそ、監督の手腕が問われる。父を亡くしてリスタートとなる一戦だ。今までのままであるはずもない。

 

引き続き、天野純が好調のようだ。リーグ最多33得点のマリノスと、リーグ最少12失点の広島の戦いの焦点はやはりマリノスの先制なるかに尽きる。広島は逆転勝利も非常に多く、スタイル的に広島が先制すると困難な試合となるのは間違いない。1-0にしてからがイーブンくらいの姿勢が必要となるだろう。硬い広島の中央でウーゴ ヴィエイラに決定的な仕事をさせるなしでも、自身が侵入するにしても、アマジュンのポジションは本当に重要である。

 

順延の結果、先々の日程がキツくなったのだから、ここは勝っておかないと割に合わないのだ。

勝ちたい。

 

突然の2度目の別れ

愛するマリノスの為。見せろ熱き思い。

 

気がつけばベテランと呼ばれる年齢となっていたのか。バックアッパー扱いするには惜しい特異な存在感。

ある意味では、生え抜き選手よりも、クラブ愛を剥き出しにして戦っていたのが金井貢史だ。明るくて自由で頼れる男なのに、なんだか守備だけ心許ない。ヤンチャな若気の至りもあったし、小林祐三やドゥトラの壁に阻まれて、レンタル移籍を選んだ後には鳥栖への完全移籍の道を選んだ。千葉で主力としてプレーした1年を経て、マリノスからの復帰オファーが舞い込むと、「再びマリノスに誘われるようにがんばる」と言い残したコメントを現実のものにしたと、温かく迎え入れられた。

 

「もう誰かの穴埋めばかりしたくない」というコメントは重くのしかかる。最終ラインをどこでもできるから、ありがたかった。便利に使われたことは間違いがない。だが本人の言う通り、本当に自分の力で勝負できているのか、存在意義はなんなのかを己に問うた時、やり甲斐と同じくらい虚無感があったのではないだろうか。

 

加えて報道通りなら、金井にはオファーがなかった。複数年契約が切れてから契約延長の交渉などしない。契約が残り半年ともなれば、当然、次の1年または複数年についての話し合いが持たれる。しかしマリノス側からのオファーはなかったとされる。恐らくは、契約満了となる。すなわち来季は構想外とされるという予感もしくは確信が金井のもとにあった。

 

そこに届いた名古屋グランパスからの獲得オファー。風間革命とともに1年半でほぼすべての選手が入れ替わるような状態で、金井貢史があのサッカーに合っているか分からない。宮原とか櫛引、新井がライバルになるのかな。

ともかく渋いマリノスのそれを上回る年俸提示もあったのだろう。しかも契約は残り半年というフェーズだがマリノスに相応の移籍金を残せることが決め手になったという。

 

今冬にある後輩が起こした史上最悪と言われた移籍さえ庇ってみせたのが金井貢史だ。彼は、あれを見たからこそ、筋を通したくなったのだろうか。

ロジックでは金井の心情は分かるし、確かにある筋も通っている。だが戦力以上の何かを失ったのではないかと、たぶん多くのサポーターの「直感」がそうささやいている。しかし、「戦力以上の何か」などという曖昧で無形のものを今のマリノスが保持する余裕がないのはすでに明らか。

ドライかもしれないが、売る側のクラブの宿命である。

 

そんな折に、ブラジルでも煙たがられた上に、クラブを批判するカイケの質の低いニュースが入ってくる。程度の低いニュース。彼の年俸の半分、つまり5千万円だかを払い続けている業の深さを思い知らされ、この日本とブラジルの間でなすりつけ合われる貧乏神がまさかこのタイミングでクラブ愛を考えさせてくれるとは。

この夏の2人目の別れは、意外であり唐突であった。「まさか」の後、理屈では理解し、そしてやるせなさが残った。

 

名古屋との対戦はもう半月後に迫っている。ピッチの上にいる金井貢史でいてほしい。そして、できるなら三度目の加入を待っている。