今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

咆哮!マルコスの一撃で勝点3をもぎ取る【J1第8節◯仙台1-0】

仙台のゴールマウスの中、向かって左奥に取り付けられたDAZNのCCDカメラに向かって正面衝突するかのように一直線にボールが迫ってくる。これはリプレイの角度としては珠玉で極上だ。スウォビクの手は届かない、いや届くわけもないコース。蹴り込むヒーローの奥には早々と両手を掲げて得点と勝利を確信した松原健の姿が最高である。CBでスタメンだったマツケンは伊藤槙人の投入によって本職の右SBに回っていたのだが、この中央、ストライカーのすぐ後ろにポジションを取っているのが真骨頂である。

マルコスは吼えた。駆けた先はメインスタンド側のコーナーフラッグ付近だ。94分戦ってきたピッチ内の選手たちが疲労困憊なことを差し引いても、一番最初にマルコスに抱きついたのが途中で退いた水沼宏太だったことが感動的だった。
f:id:f-schale:20200804220220j:plainマルコスのインスタグラムより

この日、圧倒的にゲームを支配しながらも、ゴールを打ち破れなかったマリノス。スコアレスドロー寸前にゴールをこじ開けたのがマルコス。出場から15分の大仕事だった。

その1分前、ゲデスのユニフォームを引っぱって松原が警告を受けたときには得点の匂いなどまるでしなかったが、一連の攻撃はマルコスが鬼気迫るスピードで、手前のサイドを割ったボールを追いかけて、すぐさま放り込んだスローインから始まる。後ろ向きにスローインのボールを受けたのはオナイウ阿道で、中央にフリーでいた渡辺皓太に渡すのだ。左を見れば、大津祐樹が走り始めてDFを引き連れ、その間を使おうとちょうどナベコウを追い越すタイミングのティーラトンが欲しがっている。

だがナベコウは絶妙なタイミングに思われたティーラトンを使わず、ティーラトンは思わず落胆して一瞬天を仰いでいる。ナベコウは左に行きかけたのに、結局はボールを受けた場所まで戻ってきて松原へ。なんだか相手の守備が整う時間を与えただけのようにも見えた。

その松原は扇原へ横パスを送り、扇原はシンプルにティーラトンへボールを出した。すると、ほんの2〜3メートル、仙台DF・柳の位置がティーラトンから離れていたため、少しティーラトンは正確なクロスを送る余裕を得たのだった。

鉄則通り、ニアで潰れ役となった大津は、自身の約束を完璧に果たしたと言っていい。後半開始早々に、ゴールエリア内でボレーがミートできなかったケースと合わせて大津を批判していた人がWeb上にいたが、この大津の働きなくしてマルコスのゴールは生まれない。これが大津の素晴らしさ。いつだって勇気と、力強さが彼を駆り立てる。

そしてこぼれ球に瞬時に合わせるマルコス自身の技術力。いや、冷静さか。プロならば、ドフリーならば、あのキックは技術的な難易度よりもメンタルの方が大きいのではないだろうか。それが決定力というものに現れる。横浜ダービーでの負傷交代から復帰していきなりこれだけの力を見せつける。恐ろしい。

さらにマルコスの凄さはこの得点後にもあった。ゲーム再開後、時間的にはいつホイッスルが鳴ってもおかしくない時間ではあった。仙台のロングボールがオフサイドになり、主審がオフサイドを告げるための長めの笛を吹いた。これを試合終了の笛と勘違いしたのか、畠中槙之輔がその場に座り込む。これをシン、シン!立ち上がれとすぐさま切り替えを促したのがマルコスで、その表情ははっきりと中継映像に捉えられていたのだ。なんという勝利への真摯な執念だろうか。

無事に試合を終えた後のインタビューでは破顔一笑、いつもの人懐こい笑顔を振りまくのだから、こりゃメロメロである。


なんとか勝ち切った事実はめちゃくちゃ大きいのだが、思わぬ苦戦となった原因の1つはマリノスの決定力不足にある。これは裏返せば、仙台の守備陣が最後まで集中を切らさなかったことが大きい。スウォビクのセーブが当たっていたことに加えて、すでに各所で話題になっているようにこの試合がJ1デビュー戦となった流経大の壁、191センチのアピアタウィアの活躍である。立ちはだかり、跳ね返した。強いし硬い。風貌はすでにリーグアンで活躍しているフランス代表というイメージだが、まだ22歳の特別指定選手。シマオマテが離脱中の影響を減らす役割をになっている。この選手の名前はぜひ覚えておきたい。

さは言え、厳しい言い方をすれば大学生に手を焼いた、打ち負かされたということである。仙台はもう1名の大学生、真瀬も途中で出場させている。さらに投入したばかりの松下が負傷してしまい人数も不利な状況だった。

それにも関わらず、どうにかこうにか、最後の攻撃でようやく得点をあげることが出来たというのは「物足りない」と言ってしまえば、その通りである。正直に言って、ここまで勝利したチームはいずれも下位のチームだ。上位のチームには、「対策で上回られてしまって」いる。そこがマリノスの現状であり、もう一段進まなければ先のないステップである。


伊藤槙人ではなくCBの先発は、松原が選ばれた。疲れ、前節までの結果、いろんなことが背景にあっただろう。チアゴ。マルチンスと實藤友紀の名前はまだ出てこない。右SBで小池龍太が台頭してきたこともある。「経験があるから」松原を選んだと監督は言っていた。それでも最も勤続を続ける畠中はスタメンだった。ラストで槙人を投入し、松原を右SBに、小池を1列上げるという采配で見事に結果は残った。槙人は再び先発の座を狙う戦いに迎えるはずである。名前が上がらない危機感をもつ選手もいる。山本義道や高野遼である。前貴之はこの原稿を書き始めた頃に松本への移籍の話が出て、残念ながら一気に話はまとまったようだ。

過密日程のリスクヘッジと言いながら、あるポジションでは特定の選手に起用が集中しているということも起きている。もうとっくに正念場に来ているようだ。

仲川輝人の時間はまだかかる。水沼宏太は違う味を見せてくれている。ただし宏太もゴール前だけはもう少し力を抜いて、セレッソ時代の古巣対戦ではいつも見せてくれた比類なき勝負強さを発揮してほしいところではある。

ゲームを自分たちの側でコントロールできたこともあり、ほぼ全選手いい出来だったと言っていい。仙頭啓矢は先発したもののハーフタイムの交代となった。攻守によく顔を出していたし、惜しいシュートも放った。はじめから90分自分が出場する想定ではなく走り回ってくれたこともよかった。ただ天野純やティーラトンとの連携が生命線であり、ここはやはりまだまだという印象だった。


最後に、お帰りなさい。朴一圭。抜群の守備範囲、安定感、そして正確なキックと堅実なセーブ。「流石」という表現以外の言葉ではなかなか言い表せないのだが、集中力と反射神経が特にすごくなった。梶川裕嗣もすごいな、パギさんと遜色ないな、と思っていたがこの日のパギは別格だった。ぐう守護神である。


ようやくのアウェイ初勝利。まだ黒星先行状態が続いている。次こそ連勝して、上位への足がかりとしたい。
8月、ここから暑さ本番のようだ。


蒲原