今年もマリノスにシャーレを 2023

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

ただ想いを走らせた 単純明快なラブソングが、いい

朴一圭が喜んでくれた話がとてもいい。
J1第30節の鳥栖戦で、パギのための新応援歌(チャント)がお披露目された。もちろん駅前不動産スタジアムで直接耳にするまでは知る由もない本人の述懐では、ようやく少し認めてもらえたのかな。やっとチームの一員になれたと思うと嬉しい、という。

もう長く守護神に君臨している錯覚を覚えている。途中、負傷で離脱して、またすぐさま復帰して…などという紆余曲折があるから余計にそう感じるのだろうか。思えば、J1デビュー戦がホームでの鳥栖戦だったから、ちょうど次の鳥栖戦でチャントデビューになったわけだ。意外にもまだ21試合め。今季開幕時には誰もが飯倉大樹が続けて「絶対的守護神」だろうと思っていたのだから、隔世の感すらある。その飯倉は、華麗な3人抜きをかましてはボールを奪われあわや失点。審判にファウルを主張しながら、「早よ戻らんか」とイニエスタにどつかれている。それを見て、心臓の下のあたりがちょっとむずむずする。ああ、僕らは飯倉大樹も変わらずに大好きなんだ。

マリノスは新入団の選手に安易に歌を送らないのだそうだ。どういう趣向なのか知らないけれど、まあ、一人の選手の平均在籍年数を計算したら、3年程度かもしれない。最近のマリノスならもっと顕著だろう。その選手が移籍・退団してしまえば、お蔵入りとなる。昔は、移籍すれば名チャントはチームを越えて引き継がれるのかななどと思っていた。もちろんそんなことはない。それくらい選手の名前を歌に込めるのは誇り高きことである、というのは分かる。でも久保建英や三好康児の名前も歌いたかったな、という思いもある。

チームの名前を歌にしたものと比べると、選手の歌は、儚く短命だ。永遠に歌える歌なんてない。パギの歌は、榎本達也のものと同じ原曲が使われているそうだ。私のような樋口靖洋世代には分からない。エジガル・ジュニオが再来日して以来、通勤中の脳内でリフレインされ、昼休みには鼻歌交じりに歌ってしまう私のようなサポーターが多いはずだが、エ・ジ・ガ・ル!!は大島秀夫がルーツだという。これらは前任の選手が現役を引退したらリバイバルOK、それまでは不可という不文律があるのだとか。

いつの日にか、富澤清太郎や小林祐三、榎本哲也のメロディがまた歌えたらいいと思う。無論、彼らの引退を早めたいなどとは全く思っていない。手にしかけた優勝に届かなかった2013年に主力だった選手たちの名前を一体何度呼んだことだろう。歌い過ぎたために6年経過してもまるで色褪せない。忘れることがあるはずもない、と思っている。

したがって、この麗しき2019年の試合も、彩る歌声もいつか思い出となる。あなたはどの応援歌を、2019年を象徴する一曲として記憶に留めるだろうか。この最終盤に、また一曲、パギの応援歌が候補に加わったわけだ。中身にケチをつける気はないのだが、覚えやすく、単純明快な歌詞とリズムが最強だと思う。よそのチームの曲であっても覚えてしまうあの曲は、いつだってシンプルで、中毒性があるもの。2019年のアワードがあるならば、ブルーノ・メンデス一択ではないか。

マリノスならば近年で最大のヒットは、ウーゴ!ヴィエイラ!ウーゴ・ヴィエイーラ!だろう。異論は認めるけど。語り継がれる名曲の条件は、子供が一発で覚えられるかどうか。だからパギさんのものはやや複雑だなと感じる。オーオー!○○!みたいなやつでいい。みんなの声が一つになるやつ。ウォームアップ中の段階から選手のみぞおちにズドンと響くやつ。いつどこでも、愛を込めて。

「俺たちの○○」とか「横浜の○○」も大変良い。名前だけのものに比べ、この一手間により唯一無二の歌に昇華する。それでいて、覚えやすさが損なわれていないものならば。俺たちの!という呼びかけに対して、選手が「聞こえてるよ!ありがとう」と拍手で応えてくれるのも尊いが、エンブレムに触れるのに弱い。最近のウチの子たちがよくやる。

ポン、ポンとエンブレムを2回叩く仕草を直訳するなら、任せてくれ、この胸のほこりにかけて戦うよという感じ。もっとエモいのは、ギューッとエンブレムを握りしめるやつ。ウォーミングアップが終わってロッカーに引き上げる時の試合前の扇原貴宏とかがやると一層絵になる。

もし、この想いを直訳できるのならば…
今日もありがとう、みんなの声、ここまで、届いてるぜ。みんな、このエンブレムが大好きなんだな。俺もだよ。試合に出られない選手たちやスタンドにいるみんなの分の気持ちも背負って戦うよ。戦い抜くよ。だから90分、苦しい時も絶対に応援してくれ。そして勝つぞ。いいか、絶対に勝つ。マリノスのサッカーをして、自分たちがイニシアチブを取って、勇敢に。スタンドも一緒だぞ。準備はいいか、行くぞ。勝つぞ。

…あかん、書きながら泣けてきますやん。こんなん。


黄昏の2013年と異なり、ひょっとすると来年やその先のマリノスは今年よりも強くなるのかもしれない。本当に黄昏だったと、今振り返ると思う。

似ていても、同じチームでは二度と戦えない。つまり2019年のチームは今年完結する。サッカークラブは続く、サポーターも続く。でも今年は今年なのが、有機体としての「チーム」の運命なのよね。

2019年のタカに、テルに、五輪代表の渓太に、偉大なるブラジル人選手たちに、タイの英雄に、遅れてチャントのできたパギに、ベンチに入れない選手たちにも、精一杯の声援を。

その歌声は、どんな恋愛映画にも負けない単純明快なラブソングだと思う。いい年をして、腹の底からラブソングを歌える幸せ。好きなものを好きと言える幸せ。勝利を噛み締められる幸せ。

一緒に優勝したい。