今季最多の5得点。飯田淳平主審が開始59秒でPKを与えてくれたことがまず1つの節目となった。マリノスの背番号23、仲川輝人が抜け出したところに、ターンして前を向いたマルコス・ジュニオールから綺麗なスルーパスが出る。最速でエリア内で侵入したテルの後ろから快足を飛ばしてきたのは同じく背番号23の吉田豊、手で押して少し妨害しようとした瞬間にテルが勢いよく倒れ、PKの判定となった。仲川はPKをもらえない道を歩んできた。それには怪我防止のために仲川が倒れる姿がシミュレーションっぽく見えるだとか、そもそも中川のスピードが速すぎて、審判がろくに姿を捉えれていないとか、諸説ある。だがこの日は、3回エリア内で転倒し、最も見た目がPKっぽいファウルがノーファウルとされ、残りの2回にはPK判定の笛がなった。
キッカーのマルコスが、GKラングラックの裏をかいてネットを揺らしたその時に。マリノスは3連敗中に一度も奪えなかった待望の先制点を手にした。しかし名古屋は前節には川崎に快勝し、復調の兆し。ゲームが終わった後ではなんとでも言えるが、ジョーが戻り、守備にはキャプテンの丸山祐市が戻り、前田直輝と和泉が好調とあっては多少の失点は覚悟しなければなるまい。
そういう意味で、出場停止明けの扇原貴宏が30mのミドルシュートをかましたのに対して、前田が立て続けに迎えた2つの決定機をものにできなかったのはあまりにも大きかった。そこにはGK杉本大地の冷静な処理や勇敢な飛び出しが関係していることを忘れてはならない。
押し気味ではあったが、どっちに転ぶか分からない時間帯が30分以上続いた。エリキのバイシクルが決まるその瞬間、その時まで。前半39分、遠藤渓太が左足であげたクロスを胸でコントロールしたボールはエリキの背後へ。そして飛び右足が頭上のボールを捉える。届かないボールを見送る豪州代表GKランゲラックのお手上げポーズがとても愛しく見える。
デビュー2戦目、守備の課題もなんのその、来日初ゴールでリードを2点に広げたのは大きかった。
ゲームの趨勢を決定付けたのは3点目。後半はやや名古屋が攻勢で、前線の質で勝負してくる。だがリスク管理が曖昧だった。セットプレーからのカウンターで独走する仲川のシャツを宮原が引っ張って、引っ張り倒したためにマリノスに再びPKが与えられた。
決定的得点機会の阻止(DOGSO)であり、宮原はボールに向かってプレーしていないことが決め手となり一発レッドカードが提示された。ここ、覚えておきたい。もしもボールにチャレンジしていた結果のファールなら、PKが与えられる他宮原にはイエローカードとなる。また宮原が引っ張っていたとしても、テルがそのまま得点を挙げたならば、得点は認められて当然PKは無し。宮原にはイエローか、または注意のみとなる。だから飯田主審が、宮原のファールを視認してもすぐに笛を吹いてプレーを止めなかったことが重要だったとジャッジリプレイで解説されていたことを付記。
なお、同番組では原博実氏が「仲川は踏ん張れたはず。自分が主審なら仲川の顔を見れば逆にPKを与えたくない」という趣旨の発言。これは選手の印象を悪くしかねない操作であり、見過ごすことができないと思う。
テルの転び方が欺く行為だという名古屋サポの「いいたくなる気持ち」は分からないでもないが、マリノスサポーターからすれば「テルは上手な転倒によって大きな怪我を回避しているが、前々から不当なほどにPKを貰いづらい選手」で「1試合に2回など記憶にない」という感じ。
よもやプロの主審が、この番組を見て悪影響を受けることはないと信じるが、一般的なサッカーファンがテルのことを誤解するのは宜しくない。
このPKを決めてスコアは3-0。むしろジョーのオフサイドなのに得点が認められたことも取り上げてよ案件だが、70分に1点を返されてしまう。確かな結果という意味では、杉本大地に無失点勝利を飾ってもらいたかったところではあるが、攻撃の活性化を狙った風間監督がエドゥアルド・ネットに変えて、長谷川アーリアを投入したことで守備側の混乱はさらに増したようだった。
78分、84分とともにゴール右側のネットを揺らしたのは遠藤渓太。ここまで今季1得点だったリーグ戦で、マルコスやエリキも絡んでの仕上げには価値がある。これだけ入れ替わりの激しいチームにあって、渓太はルーキーイヤーから成長を続け、試合に出続けている。マテウス不在の試合でのこの存在感はあまりにも大きい。
5-1とスコアは完勝だったが、立ち上がりのPKに大きく左右された感じは否めない。上位の瓦斯、鹿島、川崎、広島がすべて引き分けるというこの上ない幸運もあり、まだ優勝争いに踏みとどまったと言えるだろうが、「見た目大勝の」後だから難しいところもある。
数字にも表れている。マリノスのボール支配率は52%で、パス数はマリノス:496で、名古屋:514。ただしシュート数が20で枠内10、名古屋のシュート数13で枠内3ということなので質としては圧倒していたと言えるが、巡り合わせとも言える。
3連敗した清水、鹿島、C大阪とは相性でもだいぶ違う。
ただ勝ったからこそ、ようやく兜の緒を締められるというもの。この半月あまりは、ほどけかけているのが分かっていても、いろんなところが傷だらけで陣形の立て直しに必死で、カブトどころではなかった。
残り10試合。首位との勝ち点差7。
ここからだ。