抑えたとてもいいシュートだった。ゴール前の密集を振り切って、ラインを超えた勝ち越しのゴール。
3年目の春。怪我に泣き、悩みに悩んだ末に掴んだハタチの初ゴールだった。ただのゴールではなく、マリノスを勝利に導く一撃、ルヴァン杯のグループ突破に望みをつなぐゴールでもあった。感慨深げにガッツポーズをする中島賢星に、フリーキックでボールの供給役だった吉尾海夏とダビド バブンスキーが抱きついてくる。
試合後のインタビューでは感極まって涙を流す。思えば遠かった。ようやく報われる時が来た。ようやくお世話になった人々にいい報告ができる。そんな思いが去来していたのかもしれない。
先制を許す苦手な展開にもかかわらず、ウーゴ ヴィエイラのPKで追いつき、賢星の公式戦ゴールで勝ち越し。さらに遠藤渓太にも待望の初ゴールが生まれ、トドメは扇原貴宏のミドルシュート。今季最多となる4点を奪っての快勝となった。遠藤の股抜きのタイミングを狙ったシュートは巧かった。あんな技量があるのに、どうしてこんなにも外してきた!?
吉尾、山中亮輔は積極的なプレーを見せ、大いなる可能性を感じさせた。点差が開いたこともあり、残った交代枠を下平匠の試運転に使うことができた。わずか10分の出場だが、10ヶ月ぶりの出場で、ガラにもなく緊張したという。これから少しずつ出場時間を伸ばしていきたいと、止まっていた時計を再び動かし始める。
試合の分岐点となったのは、二つの判定だった。一つ目はウーゴのPK獲得時、直前の山中が倒されたシーンは流されて、直後のウーゴが肘打ちで倒されたのはPKだった。アドバンテージを取っていたのだろうか。ともかく山中のところで笛が吹かれなかったのは、マリノスにとって幸運だった。
もう一つは前半終了間際の栗原勇蔵が鈴木武蔵を後ろから引きずり倒したシーンだ。ラグビーなら大ファインプレーであったかもしれないが、もちろん反則。これが警告で済んだが、一発退場でもおかしくない。これは、警告が相当と見えたのか。その直前に鈴木が手を先に使っているためかとも思ったが、それならプレーはそこで止まっており警告が与えられることはないだろう。判定基準に関する率直な興味として、佐藤隆治主審にぜひ理由を聞いてみたいところだ。
スピード勝負では分が悪かった栗原とパクジョンスであるが、3戦目にかける杉本大地の奮闘もあり、4-1での勝利となった。
3試合を終わって勝ち点3は、4位に浮上。しかも順位表で見ると、
勝点 試合 勝 分 敗 得失
1 神戸 6 2 2 0 0 +5
2 C大 5 3 1 2 0 +2
3 広島 4 3 1 1 1 -2
4 横浜 3 3 1 0 2 -1
5 鳥栖 2 2 0 2 0 +0
6 甲府 2 2 0 2 0 +0
7 新潟 1 3 0 1 2 -4
もう大混戦。よそで、引き分けが多いために大いに助かっているのである。
それにしても柏戦のフルボッコから一転して、ここまで未来に希望を抱かせる試合をみせるのだから、マリノスとはなんと罪深い笑チームなのか。
まったく目が離せない、出来が良いんだか、悪いんだか分からない子供のようだ。
こういう時はテンポよく訪れる次の試合もきっと良い試合になるだろう。
賢星、渓太、おめでとう。これからも頼むぜ。