試合前のDAZNのインタビューで、前対戦での大敗からどのように対応するのかと問われた渡辺晋監督の苛立たしげな回答は、「カップ戦のセカンドレグじゃあるまいし、得失点差なんか関係ない」
なるほど。では、事実だけ書いておこう。2戦トータル、13-4。嫌な感じだった時間帯は実に少なかった。前半最初も最初の、センターバックが対応を誤って慌てて手を使って警告を受けてしまった時。
先制点直後にオウンゴールを献上してしまった時。
このまま試合終了まで逃げ切るはずがPKを与えて、ジャーメインにこの日もゴールされた時。
あれ、全部チアゴ マルチンスやないか。畠中槙之輔との不慣れなコンビでやむを得ない部分もありながら、センターバックの間への長いボールの対応は危ない。スカウティングもされている。
幕開けは、山中亮輔だった。豪快で、足の振りが小さく速い。磐田戦の決勝点を受けて、みなぎる自信が伝わってくるかのようなミドルシュートは光陰矢の如く。その前の天野純のお膳立て横パスもズルくて最高だった。「このニアは射抜かれまい」とシュミットダニエルが考えたとしても無理はない。普通は狙えないコースだ。ただ相手は山中亮輔。それが彼の魅力だ。
程なく仙台に同点に追いつかれてしまったのは、試合運びとして拙い。どちらに流れが転ぶかという中で、見た目にはセンターサークル付近、まだゴールの匂いがしない位置で仲川輝人は前を向いた。いきなり最高速。ちょっ、待って。最短距離でゴールへ向かう、そのトップスピードに後ろから追いかけられる選手などいない。横から?斜めに走る分、テルの足はもう2〜3歩前。眼前に立ちはだかるは、バックステップを踏む大岩一貴のみ。
テルはスピードを緩めることなく、細かく右足だけでダブルタッチ。アウトサイドにつられて、大岩の左足がやや外に踏み出した瞬間、つまり彼の股下にできたスペースを狙ってドリブル続行。
飛び出してくるシュミットにはノーチャンス。だって、仲川輝人のトップスピードなのだから。これで2-1。
さらには後半5分の、テルが「得意」と豪語するヘディングで勝負あり。1トップが真ん中で潰れ役になり、主攻は実はファーにいたテルだったと。伊藤翔が得意とする囮役をウーゴ ヴィエイラも見事にこなして、仙台DFを翻弄してみせた。
ウーゴの諦めない特攻が実ったのは、シュミットのクリアミスを誘った4点目。ハンドリングか? あれは主審からは見えない角度だったろうが、バウンドの様子から腕に当たったことは類推できただろう。ただ身体についていれば胴体の一部として解釈されるということだろうか。
ウーゴの原動力となっていた、背番号16、伊藤翔への想いは、翔さんのチャントをおねだりまでしてしまう。
WITH NO_16という翔さんにあてた横断幕を愛しそうに撫でるウーゴ、テル。エンドが変わった後半だけで三度そうしたシーンが見られた。
喜田拓也が締めて、扇原貴宏は俯瞰した超人パスを連発する。大津祐樹の献身は、チームを動かしている。傍目にも分かる天野純の復調も大きい。戦う姿勢が伝わってくる。あまりにも大きい2連勝だ。
だが前回の仙台戦の大勝から連敗が始まったことを忘れてはいないだろう。あまりにも上出来すぎた。勘違いなのか、油断なのか。攻守のバランスはおかしくなり、隙が生まれた。それは繰り返したくない。
次は、仙台よりさらに上位の札幌。浮かれてしまったら一寸先は闇。まだまだ長いよ。