柏もC大阪も強かった。柏の方が最終ラインが固くて、撤退気味の戦いでもあれだけ固くできるのだから、やはりアジアを戦うチームは違うなと感じた試合。特に新戦力のパクとかいうセンターバック、出場停止の中山の代役だったはずだが、ウーゴ ヴィエイラを狙ったボールをことごとくカット、クリアしてくる。総合力の高い、良いCBだった。え、パクって、パクジョンス…。…涙。
ユン イルロクと、遠藤渓太の両サイドでの手詰まり感は確かにあった。それぞれ周囲との呼吸や、対峙する相手を剥がせないという個に由来する課題は大きい。だが小池やユンソギョンの1対1能力がまた高いのだ。このレベルの両サイドバックは他のチームになかなかいるものではないとは思う。
さて、事前の最大の見どころであった、マリノスのポゼッションはどこまで通用するかという問い。結論としては、柏のハイプレスさえうまくハマらなかった。マリノスの独自のポジショニングに戸惑っていたのは柏。飯倉大樹のいなしもなかなか有効だった。だが「ポゼッションされたのは苦しかったが、中村航輔のところまではほとんど行かせてない。怖さはなかった」と細貝萌が語ったように、いくらポゼッションできても、それだけではあまり意味がない。むしろ途中から柏がハイプレスにこだわらなくなってしまったので、体力を消耗するのはマリノスの方が先という感じに。
そのせいか後半の運動量が低下し、失点があっさりとしたものになった。1点目も2点目も不運と不注意が重なった。そして一層問題だったのは失点した後だった。
引いてくる相手には、アタッキングサードでますますの手詰まり感。これがマリノスの最大の課題だろう。「マルティノスと齋藤学」と言ってしまえばそれまでだが、とくにマルティノスのようにロングボールもおさめてくれる選手の存在はデカかった。失って初めて分かる偉大さというやつ。ユンユンと渓太に入るまでの時間は極めて早い。だがそこから遅い。二人だけではない。イッペイ シノヅカ、ダビド バブンスキー、仲川輝人らが候補になるだろう。この両ワイドが突破という仕事をしてくれないと、マリノスのポゼッションは、なんのためのポゼッションかという袋小路に入りかねない。
飯倉大樹の走行距離が7キロを超えた。7.211キロで、9.4キロだったウーゴを逆転する日が来るかもなどと言われる。ちなみに中村航輔は3.3キロで、これはJ1全体でかなり少ない方。マリノス同様に、キーパーのビルドアップに関わる負担が大きいミシャ方式の札幌でさえ6キロ。通常なら4〜5キロ台であり、こんな数字一つとってもマリノスの特殊性が分かるというのもの。
スタジアムで見れば分かる。中村俊輔や富澤清太郎が攻撃を組み立てていたほんの数年前とはまるで違う。速さが違う。ポゼッションのためのポゼッションではない。だが、それを証明するにはもう少し時間が必要だ。既存の選手には失礼だが、もう少しタレントが必要な可能性もある。
もちろん見ていて楽しいサッカーとともに殉じるわけにはいかない。古今東西、やっているサッカーは面白いのに結果が出なくて挫折などという監督は枚挙に暇がない。週中にはルヴァン杯でサブ組がどう適応するかも非常に興味がある。
パス本数と成功率で圧倒。すなわちポゼッションで圧倒。課題はフィニッシュとその一つ手前ということも明白。これほどどんな素人が見ても、課題がはっきりしているのだから、前進するのみ。
ポステコグルー監督「アタッキングサードに入ってのところが、まだまだだと思いますけれども、正直、去年に比べてかなりの変化を与えていて、選手たちは非常に頑張ってくれています。理解をして、実現しようとフィールドの中で一生懸命プレーしてくれていています。ただ、もう少し時間がかかるのと、もう少し質を高めるには、もっと自分たちで突き詰めていかなければならない」
ウーゴ ヴィエイラ「前半は完全にF・マリノスのペースだった。負けてしまったけど、いいサッカーができたと思う。こういう試合もあります。ミスから学んでいくしかありません。今が一番苦しい時期だが、粘り強くこのサッカーを信じてやっていく。F・マリノスのサッカーは素晴らしいサッカーです。リーグ戦はまだ長いので、信じて貫いていくだけです」
もうこのコメント以上でもなく、以下でもない。
これまでの延長戦上ではない、新たなチャレンジの只中にいる。
私たちがまず、それを信じないでどうする。これからがこんなにも楽しみという瞬間は
そうはないだろう。