マリノスにシャーレを 2024

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

柔と疾風の3ゴール【J1第25節・G大阪戦◯3-1】

前夜に瓦斯が一足早く勝利を収めていたため、勝ち点差は暫定で10。なおさら勝たなければならなかった。いや、瓦斯の勝敗は関係ないかもしれない。追走するマリノスは負けたらそこで終わりなのだ。

不吉な想像と、緊張感があったのは私だけだろうか。

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満員札止めのニッパツ三ツ沢球技場。現地で応援したくてもできない人が続出している。チケット収入も当然減収であり、名物に成りつつあるキッチンカーの皆々様も出番を失っている。そんな色んな人の思いを背負うことはできないけれど、スタンドに居られることがすでに幸せと言っていい。ましてや得点の歓喜を3度も生で味わえるなど、そして週間ベストゴールに選ばれた、あのミドルシュートの静寂と、やや遅れてくる興奮とを噛み締められたのはプライスレスである。どこまでも美しい、ティーラトン・ブンマタンのJ初ゴール。実況の下田さんはこう言って称えた。「左足を一閃したのはペナルティボックスのちょうど中央手前にいた”左サイドバックのティーラトン”!」

1年くらいマリノスの応援を続けていれば、もうあの場面で、あの場所に左SBが待ち構えていることを驚く人はいない。けれど、あの軌道は予測できない。芸術点が凄まじく高いい。黙って見送る東口の姿もとってもステキである。秦基博ならば、あれを「ふわり、羽根のよう」と歌うのだと思う。「ヨコハマ」タイヤのCMソングだったことなんて、調べてから後付けだけど。


秦 基博 / Girl(Short Ver.)

 

その直前、G大阪の左SH、福田のミドルがマリノスゴールのポストを叩いていたが、こうした幸運はマリノスに味方した。これが決まっていたら、かなり苦しかった。右で、つまり私たちの左翼でマテウスからことごとくボールを奪っていた小野瀬もまた脅威だった。この二人はイキが良く、随分と手を焼かされたと言える。

対して、この夏の新戦力、強かった頃のガンバの象徴でもある宇佐美、井手口、パトリックの3名は微妙であった。特に宇佐美はコンディションがまだまだなのか、相変わらず守備は免除されているのか。井手口の役割は、マルコス・ジュニオールの自由を封じることだったと思うが、マークも寄せも甘さがあったように思う。2点目の「ふわり、羽根のよう」なマルコスのゴールにしても、あのトラップと、あのコースを正確に狙えるのが素晴らしいのだが、またしてもスカスカなのはガンバの守りの大きな破綻だったと言えるだろう。

 

アデミウソンと広瀬陸斗、途中出場のパトリックにはティーラトンと、サイドに貼る強力FWを止める役割が両サイドバックには求められた。危険な場面もあったが、体を張った守備でパンチを脱するたびに三ツ沢のスタンドは沸いた。そしてアデちゃんは、ゴールに向かう姿までは今もマキーナ(=機械)のように正確であり、ゴールを捉えきれない姿も変わっておらず懐かしかった。杉本大地の手をかすめたグラウンダーのシュートは、狙いすましたようにファーのポストを叩く。さらに、パトリックのヘディングはオフサイドの判定に救われた。

小野瀬の技術高いドリブルに翻弄されて1点は返されたものの、同点とはならなかった。これが勝負の分かれ道。

 

追いつかれるのでは…という嫌な感じを断ち切ったのは、前節の名古屋戦で2得点をあげたが、先発をマテウスに奪われた遠藤渓太である。時は遡って、前半アディショナル直前に、負傷したマテウスに代わりピッチに入ったためハーフタイムに入っても一人だけランニングで身体を温めるなど難しい時間帯の投入となった。ただそのことよりも、スタメン落ちの悔しさを力に変えて結果を残したかった。

 

そして78分だ。仲川輝人が放ったシュートがポストに弾かれた後。これをボックス内で瞬時に、自力で奪い返しに行った仲川の切り替えの早さは称賛されていい。そのボールを渓太に流すと、渓太は対峙したDFの股の間を冷静に狙っていた。その先にある、ゴールマウスを守る東口がコースを塞ぐよりも絶対に早く。疾風のように早く。

 

狙い通りだった。決定的な3点目。感動であり、驚きの素晴らしいゴール。結果で示してみせた。

もうG大阪に反撃の力は残っていなかった。まだまだ得点を期待する声もあったが3-1での勝利は上々だろう。それに瓦斯との差は、再び7差となり優勝争いになんとか踏み止まった。

 

なお、G大阪を相手にシーズンダブルを達成するのは、98年、03年、04年、10年に続いて9年ぶり5回目である。連覇した年も含まれている、えーい、吉兆と呼んでしまえ。

 

勢いの出る勝利だ。ティーラトンがチームのスタイルに必死に順応し、魔法のような、羽根のようなゴールまで決めてみせた。

 

中断を挟んだ先には、広島との上位対決がある。代表でチームを離れる渓太、渡辺皓太、畠中槙之輔、ティーラトンがどのようなコンディションかも気になるし、中林洋次と和田拓也が広島戦には出られないという問題もある。また瓦斯と鹿島の直接対決もある。ただ、ルヴァン杯がないことを逆に利用して、良い準備をするだけだ。

 

上述した下田さんは中継の終わりに、勝利に沸くスタンドを見てこう言った。チームが勝利すると、トリコロールの傘を広げることが彼らの「習わし」になっている、と。

この後、残り全試合で習わしが守られることが私たちの願いである。あと9試合。