今年もマリノスにシャーレを 2023

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

首位と勝ち点差1。縮めたのはあの左足の軌道【J1第29節・湘南戦◯3-1】

湘南にとっては出直しの一戦。曹貴裁監督が退任した後、浮嶋体制となっての初戦なればこそ悪い流れを、大量失点の記憶を拭い去りたいと考えるのは当然のこと。

 

だがマリノスのぶつけてきた強度は試合開始直後から、湘南のはるかに上を行く。開始59秒でエリキがCKを得ると、そのわずか3秒後には、ショートコーナーでリスタートを果たす。湘南守備陣にマークの確認の時間すら与えないマリノスは、ファーサイドで仲川輝人にフリーでボールを渡すことに成功した。慌ててスライディングで右足のシュートコースを消すDFをたやすくキックフェイントでやり過ごすと、左足でコントロールの効いた浮き球でGK秋元の届かないコースへ。

 

これが決まっていたら、おそらくまたも6失点の悪夢が蘇り、ものの数分でゲームが壊れていたかもしれない。それを鈴木冬一が頭でかき出した。ここに湘南の出直しへの意欲が現れている。

 

攻め込むマリノスと、なんとかカウンターに賭ける湘南の狙いは分かりやすい。決壊しそうでしない湘南の身体を張った守備と、サイドにエリキが自由に流れるとみるや、2人がかりで挟むなど対応する。カウンターを展開するときはできるだけ少ないタッチで前へ運ぶが、高いラインであってもチアゴ・マルチンスのチート的スピードと、朴一圭の果敢な飛び出しによってチャンスらしいチャンスを作らせない。

 

ただし18分のCKのこぼれてきたボールをエリアライン付近からダイレクトで放った山口の一撃は間一髪でパギがゴールマウス上へと弾いてくれた。セットプレーからの一発を狙う湘南としては勢いに乗りかけたはず。

 

繋いで、ずらして、崩すいつものマリノスと、守備陣形を変えて速攻の一撃にかける湘南の競り合いは続くが、押しているマリノスからすれば無得点の時間が長くて焦れてくるころ。「ゼロゼロでの折り返しという湘南の最初のミッション達成が見えてきた頃。

 

湘南のわずかなスキを生んだのは、またも果敢に飛び出してきたパギのクリアだった。

 

違う、クリアではない。明確な意志を持ったロングパスだと信じていた選手が1人だけいた。仲川だ。それを仲川とともに追いかけるべきだったのは、山田か、もしくは松田か。タッチラインを割ると、早々に見限ったボールをテルだけが諦めていなかった。ライン際すれすれ、高く弾むボールを胸いっぱいでおさめると、ターボな前進を開始する。がら空きの右奥深くまで侵入だ。

 

この一連の流れのプレーから、左サイドに一度は流れたボールが喜田拓也のもとに渡り、テルは再びパスを受ける。後右方からは松原健が外を追い越す動きを見せて、テルもまた右手で松原の進行方向を指差すのである。「ここへ行け。そうしたら俺はパスを出すよ」というわざとらしいまでのメッセージ。

 

そして実際にはフェイク。瞬時に左足に持ち帰るのを見て、2枚のDFがシュートコースを閉じるがもうテルの勝ち。前半2分では仕留められなかったのとほぼ同じ位置。今度はより高く左足でコースを狙う。どうやっても秋元は届かないし、頼みの鈴木は今度はテルのフェイントにつられてピッチに横たわっていた。今季12点目で先制。左足での速射砲。それに正確だ。この落ち着きというのはどのように身につけたのだろう。

 

ATの喜田のシュートはポストに弾かれてしまったのだが、試合を制圧。早く2点目がほしい。取れないと苦しい。そんな時にきっちり取れるのが、今のマリノスだ。これを「決定力」と呼ぶのだと思う。

 

後半開始からまもない53分に、再び仲川がエリア付近で倒され、ゴールまで20mほどの直接FKを獲得する。蹴るのは誰か、と想像して期待が高まる。

ファーを狙うなら、ティーラトンの悪魔の左足がある。正確さでは負けていない得点王マルコス・ジュニオールが右足で壁の上を撃ち抜く手もある。

 

ん? マテウスが蹴りたそうに、こっちを見ている…? いやー、ないでしょう笑。この日のマテウスは、クロスでミスを連発していたからだ。マテウスはない。それは秋元も思っていたのではないだろうか。聞かないけど。

 

大空翼が蹴るようなドライブシュート。スローのリプレーで見る縦の微回転が美しい。はるか上空へ抜けそうな軌道は突然落下して、左足のインサイドで蹴ったとは思えない弾道で、ネットに突き刺さる。キャプテン翼の実況なら「突き刺さったァァァ」という表記がふさわしい突き刺さり方だった。

 

マテウスが結果を出したなら、60分から途中交代の遠藤渓太もやるしかない。68分に左サイドを単騎で切り裂くと、エリア内で岡本に倒されてPKを獲得した。渓太自身はもちろん、傍らのエリキがそれ以上に大きなアクションでガッツポーズを見せた。ボールを静かに抱き上げてセットしたマルコスが落ち着いて(この力任せでなく駆け引きに勝利した落ち着きが本当に素晴らしい)左側のサイドネットに決めて、3点目を挙げて勝敗を決めた。

 

・最後の失点場面における集中力がどーの

・流れの中で得点は1つだけがどーの

・途中交代となったテルの太腿の状態があまりに心配だの

・マツケンはもう出場停止がどーの

・家本主審の笛を吹く吹かないは明確で素晴らしかったが湘南に警告に値するプレーがいくつかあったんじゃないの

・エリキのヒャッハーが可愛いの

・帰国直後のはずのブンちゃんの守備強度が素晴らしかったの

 

そりゃまあ色々ある。湘南の危険に見えるプレーにいくつか閉口したのだが、前半特に「接点」で勝ったのが大きい。速いだけじゃなく、マリノスのパワフルさも見逃せない。それに一瞬のスキを見逃さなかったテルの行動、左足の速い振り。最高だ。

 

鹿島が松本相手に引き分けにとどまったために、鹿島と瓦斯を勝ち点1差にマリノスが迫る。5戦前、3連敗時には9だった首位との差をここまで縮めた。

 

あと5試合、一説によれば、ACLの出場確率は80%を超え、4%と言われた優勝確率も20%になったそうだ。それを上がった!と見るか、まだ低いと見るかは大した問題ではない。確かに頂上が見えてきた。

 

止まりたくない、止まる理由もない。

 

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