銀皿航海 蹴球7日制

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

信じた道を行け!【J1第11節・鹿島戦】

まるで中村俊輔。多くの人がそう言った。

あれほどの綺麗なフリーキック、私たちは俊輔以降見たことがなかったし、この先もそうそう見られるものではないとそう思っていた。

 

彼のポジションはタスクも多く、バランスは難しい。逆三角形なのか、正三角形なのかという議論もあるし、相方が喜田拓也と大津祐樹ではあまりにも彼に求められる役割は異なるだろう。それでも彼は、彼だけは常に中盤に君臨し続けてきた。中村俊輔の後継者というにはあまりにも性質の異なる能力を持って、そして中村俊輔の後継者と呼びたくなるようなフリーキックを見せつけて。

 

褒めてばかりもいられない。この試合の前、札幌あたりから急にセットプレー時にボールが「当たる」ようになってきた。それまではFKでは壁に当て、CKでは弾き返され、他の選手が蹴ることもしばしばあった。彼のキックは、被カウンターのスイッチなのではないかと思うほど。

 

交代時に名前を呼ばれるまで特に目立たなかったが、ネームバリューを持つ内田篤人が俊さんのようだったと言い、天野を称えたという。だが、それだけではない。先制点は天野のシュートから生まれたものだし、3点目も仲川輝人があわやPKというシーンの直後に天野の良い守備と、再び仲川の足元に届ける正確なパスから生まれたものだ。

 

鹿島を相手に3-0という結果もさることながら、その3点全てに絡んだ仕事、さらには中町公祐、伊藤翔で始まった中盤の先発メンバーだったが大津や扇原貴宏に変わってもなお、鹿島の芽とくにレオ シルバに自由を与えなかった守備は特筆に値すると思う。

 

鹿島は弱かったのか? 確かに調子が悪くてもなんとかこじ開けてくるのが鹿島の性質だとするならば、極端にラスト3分の1の質は低かった。被決定機もシュート数も鹿島の方が多かったのだから、あまり偉そうなことはいえないが、でも本当にヤバかったのは、前半の金崎が飛び込んできたシュートくらいで、(残念そこは神の守備範囲だった)あとはやられがちな後半開始早々も凌ぎ切ったのは大きい。

 

ルーキー山田康太の奮戦に代表されるように、3-0でもまったく緩むことのなかった守備の集中力は素晴らしかった。勝利への渇望、そして無失点であるべきというアイデンティティがもたらしたもの。球際の粘りは普段から植え付けられているという山田の落ち着きはカッコ良すぎるだろ、おい。

 

残留争いかのような、マリノスと鹿島の戦いは正直悲しいものがある。両者噛み合わない歯車のまま、強行ウンコ日程の波に飲み込まれてきた。この両チームの上にいるのは不思議なのだが、うまく勢いに乗った、逆に波に乗ったチームもいる。ウンコなのは日程だが、飲み込まれたチームはウンコまみれなのである。

 

あるチームは早々に監督交代に舵を切った。それも確かに道であることは否定しない。一部の選手とのコミュニケーションに問題があったから代表監督は更迭される時代。ただどんな理由があっても解任そのものは現在のサッカーとの決別を意味する。まれに監督だけ挿げ替えて、ヘッドコーチを中心に、サッカーそのものは従来からの延長でというものもあるが、仮に今のマリノスが監督交代をしたらこの数ヶ月の苦労をゼロに戻すことになりかねない。それと、信じた道を行くか。その先に何があるか、誰も見たことのないような栄光かもしれないし、良いサッカーながらも結果が出ない茨の道かもしれない。

 

一つ言えることは、この試合の評価が難しいということではないだろうか。今季初めてポゼッションで相手に上回られたが、それなのに待望の複数得点と、無失点での勝利という事実。

鹿島の中盤の質の高さと、グダグダなラストという問題、つまりは相手の特殊性がもたらした結果なのだろうか。アンジェ ポステコグルー監督は、中途半端に結果だけ追うのを嫌っている節もある。このサッカーが完成しさえするならば、降格以外はなんだって受け止めるという感じ。だから彼には、哲学を貫き通せなかったという思いが強いのだろう。よって「難しい試合だった」という総括になる。

 

鹿島に3点差で勝ったという事実は重い。特にサポーターにもたらす安息的な意味では大きい。迷わず行けよ、行けばわかるさと猪木的な割り切りは出来ないものの、ついて行くしかないのだからこの先の紆余曲折も受け入れよう。

 

その過程で伊藤翔が翔ぶ場所を見つけ、仲川輝人から山田康太までのいわゆる若手が競い合ってくれれば、それはまた面白い化学反応を起こすはずだ。

 

5月の連戦に、難敵相手に結果が出たといういい流れを引きずっていきたい。