公式記録は26.8度だけれど、日差しはもっと強くて、ゲーム展開もとても熱いものになった。
今節も上限5千人に対して、4,977人。勤勉なマリサポの出席率は高い。ルール下での超満員である。
GW中の首位決戦2連戦が終わり、独走を続ける川崎に追いすがるのは、横浜FMか、神戸なのか、上位同士の1敗対決。
ともに好調同士の一戦は、どちらかと言えば神戸ペースで始まった。
中盤でのボールの奪い合いからサンペールにボールが渡って、最大の武器である古橋の裏抜けで最初の決定機を迎える。
これをチアゴマルチンスが必死に追いつきつつも、シュートを打たれたがなんとか高丘陽平がセーブ。これをしのいだのは大きかった。
望まない交代。でも予感はあった。
マルコスジュニオールが股関節のあたりを気にしていたために大事をとって天野純へ交代となった。直接的なプレーがどれか特定できなかったが、少し前から気にするそぶりをしていたようだ。予期せぬアクシデント。
ただ、DAZNの実況解説の桑原、福田両氏も「天野純は絶好調である」ことをコメント。暑い上にタフなゲーム展開が予想される中で、交代枠が1つ減ってしまうのは好ましいことではないが、天野純がやってくれるのではないかという期待は、ファンならずともあった。
マルコスが早々に退いてしまったのは、YLC第2節の広島戦でもあった。このときも天野が80分以上プレーして5-0の快勝に貢献している。久々リーグ戦での長い時間の出番がやってきた。そして天野の登場から、マリノスは中盤でボールを握りはじめチャンスを量産していく。
バックスタンド側に大きくかかった「虹」
オウンゴールとなったフェルマーレンや神戸の選手たちがうなだれている。左サイドをライン際まで駆け上がってダイレクトでクロスを放ったティーラトン。前田大然が菊池と競り合いながらニアに詰めるもボールは触れずにGK前川が弾いた。懸命にオナイウ阿道と並走してきたフェルマーレンがクリアボールが出合い頭にぶつかるような形でボールはゴールに吸い込まれていった。
ティーラトンを走らせた右サイドのタッチライン近くにいた天野純からの虚をつくサイドチェンジが勝負の分かれ目となった。
なぜそこが見えていたのか。中央に人数をかけて閉じるのが神戸の常とう手段だ、菊池とフェルマーレンはまともにやったらJ1でも最強レベルに対人守備が強い。逆に言えばサイドはある程度捨てているので、手薄だ。
自らもサイドに流れて、大きく逆サイドを狙うパス。おそらく交代前に真ん中でのパス交換が狙われていることを感じ取って、サイドが急所だと見抜いたうえで取った選択だろう。
この天野のパスなくして、神戸にはアンラッキーに見えるオウンゴールは生まれえない。
また尻餅で演出! フットサルのようなダブルタッチ
後半も天野の調子の良さは随所に見て取れた。縦横無尽に顔を出し、キープさせれば時間を作ってくれる。なんと頼もしき
筆者が「うひょー」と謎の歓声をあげてしまったのは、49分10秒。
左サイドのタッチライン、ペナルティエリアそばでボールを受けると、奪おうとしてくる守備陣2枚を翻ろうするようにスラロームで逃げ回る。
「2枚で行け!」の神戸ベンチからの指示も先読みしていたかのように、ボールを渡さない。その直後には、タッチライン上にボールを置いたまま瞬時のダブルタッチでMF佐々木をかわすと再び前進してチャンスメイクする。
フットサルで見る、お手本のようなダブルタッチは、絶好調でなければこれほどキレよくはできないだろう。ついていけずに尻餅をつく佐々木。先日の札幌戦でも荒野が天野のキレに転倒させられる場面があったが、対戦相手を笑う意図はまったくない。天野がすごい。
ワンタッチゴール、隠された意図と冷静さ
ダメ押し点となった2点目は、GK前川のエリア外にドリブルで飛び出す、いわゆる飯倉チャレンジのミスがきっかけとなった。フィードされたボールを相手陣内で、途中交代の水沼宏太がカットして、レオ・セアラを経由して左から飛び込むエウベル。しかし慎重にインサイドでコースを狙った割にはGKに当ててしまう。
それを一番に反応したのが天野で、「見えている」と試合後に本人が語ったようにGKは体勢を崩している一方で、戻ったフェルマーレンがゴールマウス右寄りにいた。至近距離なので、左に蹴れば足は届かない。それを瞬時に計算した天野はシュートの勢いではなく、コースにすべてを集中した。左足のアウトサイドで、緩やかに、ただし誰も触れないコースへ。狙うならだれも届かないところだよ、エウベル君と言ったかどうかは知らない。
試合後のインタビューが可愛すぎる
難しい試合の流れを天野が変えた。2得点ともに関与する活躍で文句なしのマンオブザマッチだ。試合後のインタビューでは真面目な顔が徐々にほころんでいくのがキュートである。途中出場でも必ず結果を出しますねという問いに、最初からでも出たいけれど常に出たときに何ができるかを準備しながらやっているのだというプライドをのぞかせる回答もあった。
そうさ、俺たちの天野純は90分やれる。マルコスと天野純が同時にピッチに立つファンタジーも見てみたいけれど、それは今後の話。またマルコスは大事なさそうでよかった。が、すでに警告3枚でリーチなのよね。
途中出場でありながら、試合を決定づけると終了前に途中退出となった。天野自身初めてのことだという。怪我か、よほどパフォーマンスが悪くない限り途中で出た選手が下がることはない。選手のプライドも傷つく。そのことを先回りして、天野を抱きかかえるように出迎えたアンジェ・ポステコグルー監督のマネジメント(気遣い)だったが、むしろ千両役者にカーテンコールの時間を与えたかのような心憎い演出にも思えた。
ところでDAZN母の日スペシャルでカーネーションを持ったスタメン紹介があった。ベンチスタートだった天野純の母の日スマイルは見られなかった。見たかったな。彼ならば、渡されたカーネーションを後ろ手に抱えて「映ってないやんけ、NG」をかましていた可能性も大いにある…。
(スタメン以外の選手も撮影自体は済ませているに違いない。これを全チームやるのだからDAZNさん、なかなの手間をかけている。お蔵入りはもったいないぜ)
↓舩木さんコラム
www.footballchannel.jp
↓サカマガ
soccermagazine.jp
摂氏30度のインテンシティ…!
それにしてもこの日もよく走った。走行距離は横浜FMが全試合で平均3位、神戸が4位。スプリント数は実に横浜FMが1位で、神戸が2位だ。
派手な試合にならないはずがない。
チアゴが60分余りで足をつってしまったのには冷や汗をかいたが最後まで古橋封じに奔走していたのはさすがとしか言いようがない。オフサイドディレイを行うために、明らかにオフサイドの場面でも全力疾走を続けて余計に体力を消耗しなければならないのは気の毒で、めちゃくちゃ怒っていた「足、いてーんだよ!!」と。
また喜田拓也の守備もすさまじい。瓦斯戦のディエゴに続いて、途中から出ていたイニエスタが嫌がる番犬のようなしつこさ。松原健や扇原貴宏、畠中槙之輔の貢献も大きく、昨年は3試合で9失点を喫した神戸、絶好調の古橋らを完封したのはあまりにも大きい。
神戸・菊池のツイートがうれしい感じ
正直、マリノスすごい強かった。
— 菊池流帆/Ryuho David (@ryuupei4) 2021年5月10日
完敗だった。
日本一目指してるのにこんなんじゃ全然ダメだ。
もっと上手くならないと。強くならないと。
またこっから這い上がる。 pic.twitter.com/C7xcX3oLsN
4連勝で鬼門中の鬼門へ挑め
マリノスは今季初の4連勝を達成。開幕2戦目からの公式戦無敗記録も「16」にまで伸びた。好調と騒がれ始めているが、消化試合数が少ないため上2チームと離れているのはかえって好都合。静かに追走し、最後に寝首をかいてしまえばいい。
この勢いをもって鹿島に乗り込む。ご存知、リーグ戦では8連敗中の鬼門カシマスタジアムが舞台だ。相手も監督交代以降は無敗と上昇気流。さらにはマリノスが育てたアヤセウエダも、戦列に復帰しているではないか。
ベンチ入りすら熾烈な争いが続く今年のマリノスなら、きっと突破してくれる。