ああ、ラスト3の週末がやってきた。無味乾燥な平日を過ごしているのは私の勝手だが、日産スタジアムですら完売を出させてしまうマリサポは大挙して松本へ向かい、もちろん現地でなくても大勢の人がそれぞれの場所から勝利を祈るだろう。その祈りは幾重にも重なり、束になり、大きなパワーを生む。それが目に見える形になったほんの一例がTwitterでのトレンド一位獲得「すべてはマリノスのために」のハッシュタグだったりする。
マリノスだけではなく、瓦斯には瓦斯の、鹿島には鹿島の正義があって「争い合うのは仕方ないのかもしれない」と、セカイノオワリが形容していたのを思い出す。そう、これだけ願っても願っても、みんなの願いは叶わない。叶う人は一部である。
逆に言うと、世界の終わりがやって来たりしなければ、誰かは必ず優勝する。その誰かが、マリノスであってほしい。その運命は、あとたったの3試合で決まる。
チームは重圧を感じていない。ただ勝っても内容が伴わなければ嬉しくない。アンジェ・ポステコグルー監督のコメントがいつもと変わらないのはなんだかホッとしないか。勝てばよかろうなのだ、という安直な安住の地には決して身を置かないという思いの強さを感じずにはいられない。
たくさんのチームが、ひょっとしたら今のマリノスよりも強いチームでさえも、勝たなければならない思考、重圧、束縛に敗れてきた。そんなのをたくさん見てきた。勝たなければならない、勝たなければこの一年が意味のないものになる、そんな恐ろしさはなかなか打ち勝てないと私は思う。
だがボスは、そんなものとは向き合わなくていいという。自分たちのサッカーをしさえすれば良いと言う。なぜなら、そうすれば勝つからだ。宗教家、メンターらしいカリスマ性がこの最終盤に生きてくる。本当に言葉通り、重圧を避けられればの話だが。追う強み、追われる弱みなどというのはもう関係ないだろう。実質同じ立場でも、勝点1だけ瓦斯が有利なだけ。それに立ち止まるようなことがあればあっという間に鹿島にも抜き返される。
生きるか死ぬかのデッドヒート。J1優勝という栄光か、それがJ1残留またはJ2降格というテーマであっても、我正に死戦にあり。松本山雅の秘密兵器、オビナじゃなくてオズマでもなくて、イズマ。青いイズマが僕を攻める、ゲッチュー。稲妻より人妻に攻められたい。ごめんなさい。
巨漢なのにスピードがチアゴより早いという触れ込みが怪しさ満点である。夏に加入したものの、ダイエットと故障、リハビリを繰り返してはここにきてコンディション上昇というのもフラグ。この起用が、どちらに吉と出るのか。最も不安定なポイントと言っていいだろう。
松本の守り方、粘り強い5バックとブロック作りは定評がある。実直勤勉に穴熊戦法。それをアンチフット〜とは呼ばずに、反りボールと言われるのは指揮官に対するリスペクトだろう。
マリノスはそれを殴る。防具の上から素手で殴るとこちらが怪我をしないか。そんな心配をよそに殴る。週中、勝手にエジガルのベンチ入りを予想したが、そこまではコンディションが戻らなかったようだ。22歳のバースデイを迎えた遠藤渓太、代表帰りの畠中槙之輔、ティーラトンも順調で、なべこ(渡辺皓太)もメンバー入りが決まったという。この2試合の後半ガス欠を思うと、ベンチに大津祐樹となべこが居てくれるのはだいぶ大きい。クローズをお任せしたいところ。
札幌戦はエリキの電光石火の先制点、2点目が記憶に新しいが、鳥栖戦も早めに先制してペースを握ることができた。0-0の時間が長いことに慣れているのは、松本の方だ。殴り続けるマリノスは焦れるだろう。揶揄する意図はないが、松本のエース松本山雅選手は、ここまで19得点。エッ、マルコスの15点より上…? エッ、選手じゃなくてチーム全体でなの…? ごめんなさい、揶揄してた。
だが、永井と人妻の裏狙いはシンプル。ヨーイドン。で、たまのミスを待つという清々しいまでの戦い方でくるだろう。
なのにもかかわらず、松本は先制したら負けなしという。ホームでは5試合連続引き分け中。松本も引き分けで喜べる状況ではないが、勝点3でなければ意味がないマリノスとは「1」の意味に違いはある。
90分殴る。そしてゴールを奪う。難しいゲームになるだろう。勝つしかない。優勝という形のないものの手触りを確かめるための90分。