マリノスにシャーレを 2024

横浜F・マリノスのスポンサーを目指して脱サラした頭のおかしい3級審判のブログです

ティーラトン・ブンマタンとの出会い

小倉勉GMは大手牛丼屋チェーンのようである。すなわち早くて安くて美味い。オグベンの愛称で呼ばれるが、オグギュウと呼びたいほどである。

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どんなポジション、サイズにも素早く対応。対義語は当然SJである。

今季は好調な成績とは裏腹にケガ人が多く、マリノスサポーターが頭を抱えることが多い。
その最初は、やはり高野遼だろう。右膝前十字の靭帯損傷。なんと全治8ヶ月。受傷から5ヶ月で全体練習に帰ってきたというから驚きだが、当時は今季絶望と言われた。昨年のレギュラーが開幕直前に移籍してしまったので、「替え」がいないのである。新加入ながら右SBの開幕スタメンを見事に奪ってみせた広瀬陸斗を左に回し、松原健を右サイドで使おうという応急処置が取られたが層が薄いのは明白。しかし開幕直後はどのチームでも余剰人員はまだ定まらず、戦力補充は困難を極めることが予想された。

程なく「オグベン、GJ!!」の大合唱が起こったのは、予想外のところから本職左SBの選手獲得に成功したからである。なお対義語はSJである。口癖は「ステイ」。あ、夕刊フジイって言っちゃったね。

前年、イニエスタ加入前の今から思えば牧歌的だった神戸にレンタルで加入して、リーグ戦28試合に出場した経歴をもつ。VIP加入の余波で外国人枠が逼迫され、1年で所属元のムアントンに帰っていたのである。再びレンタル移籍で来日、Jでの実績よりもACLに毎年出場し、42試合に出場というのはマリノス所属の選手ではダントツの数字である。

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ブンちゃんが不良になっちまっただ…と突然のパツキンに驚いたファンも少なくなかった

結論としては、長所も短所も根本的には変わっていない。まずは正確な左足のキックだ。天野純の移籍前からCKを蹴ることしばしば、クロスも良質である。運動量も豊富。一方で神戸時代から指摘されていたのは守備対応の軽さである。豪快にスコーンとやられるのは神戸時代にも何度か見られたクセだ。だからマリノスの左サイドで質的優位を仕掛ける対戦相手には手を焼いた。松本レイチェルと再会したアウェイ大分戦はキツかった。

だが高野の不在の間、ティーラトンは不動の左SBとして信頼を確立した。陸斗を左で使うという話は一切出なくなったのだ。

攻守両面においてフィットしたことが大きい。彼の努力であり、私からすれば結果論だがスタイルに適合しうる選手だったということだ。幾度となく、繰り返し映像を見せられ、ポジショニングについても相当な改善を求められたことだろう。異国で、「ココニイナサイヨ、ココに」「チゲーヨー!ソコジャナイヨー。ココダロ!」と言われ続けても対応するのだからメンタルも大したものだ。

なぜこの時期にブンちゃんに触れたかというと、マテウスとエリキの存在があるからだ。いきなりスタメンで起用された二人は異物であった。と同時に、個のスピード、技術も片鱗を見せた。片方はスタミナに問題がないことも示してくれた。でも守備は後ろへの負担が大きく破綻しかけた。

冬のアジアカップでのケガにより、コンディションも大きく出遅れたブンちゃんだがキャッチアップし、欠かせない戦力となった。レンタル獲得できたことは、オグギューさんの初期の功績の中でも大きい。自身の努力もさることながら、マリノスはきっと夏の新加入の選手たちも適応させられると確信する。

ただ、ブンちゃんの時と比べて足りないのは時間だ。カップ戦での試運転ということももうできない。何しろ残り11試合でペース的には全勝するつもりでなければタイトルはない。したがって選手の適応が遅いならば、見切ることも必要になってくる。

繰り返しになるが、その時、ティーラトン・ブンマタンという成功例はマリノスにとっての希望になるはずだ。スタンドに向かって、両手を合わせ、深々とこうべを垂れる礼儀正しき、微笑みのサイドバック。

あぁ、ブンちゃんと優勝したい。チャナティップやティーラシンよりも輝かしい称号。Jリーグ制覇に貢献した初のタイ人選手を、彼に捧げたいのだ。