史上最悪と言われた移籍劇から3ヶ月が経った。私たちの記憶において、その選手がもたらした全ての記録が否定され、悪い印象に上書きされたように思う。たぶん今日、選手紹介のその瞬間から不愉快な思いは続くのだろう。途中交代で出て来てほしくない、顔も見たくないというささくれ立った感情を90分持ちたくないのに。日産スタジアム開幕戦だというのに、大した影響力である。
まったくなんだって、日曜の夕方に金を払ってまで私は不愉快な思いをするのか。プロレスと違って、ヒールを仕立てる必要はなし、別に川崎というクラブを嫌いな気持ちは前から変わらないのだ。そこに余計なサイドストーリーが加わった。ただ、ただ、ひたすら不愉快なエピソード。今年どんなにマリノスが強く、雄々しく、素晴らしい成績を残したとしても、一抹の不愉快さは残るのだろう。
Jの看板を背負ってアジアチャンピオンズリーグに出ても、主力の温存を繰り返して1勝もあげられずに敗退決定。その姿勢は敗退行為であり、この体たらくでJクラブの出場枠が削られるかもしれないことを考えればリーグへの背信行為でもある。その上で、国内で最高額の強化分配金を素知らぬ顔で受け取り、ACLに出られないクラブがしのぎを削るルヴァン杯にシード枠で登場する厚顔無恥。
ああ、私はこんなにも嫌うのか。自分の心の中に悪魔がいるようで、少し嫌になる。そうだ嫌いな気持ちが勝手に育ってきた。
だが、そんな私のくだらない感情は、なんとか私自身で解決するから、トリコロールよ上回ってほしい。圧倒的に上回ってほしい。
さてどちらのボール保持率が高くなるのか、パス回しは川崎にも通用するのか。立ち上がりが一つめのポイントだろう。前からのプレスをきちんとはめることができれば、マリノスのペースになるし、その逆もあり得る。
大津祐樹とオリバー ブマルはこれが2戦目となる。個で、川崎とも戦える選手。左サイドのユン イルロクは個というよりも、山中亮輔の飛び出しを誘発するなど連携で勝負か。それに最後まで走り負けない強みがある。基本的に前線のメンバーは、前節よりも良化しないわけがない。
その中でウーゴ ヴィエイラ。去年の今頃は結果が出ていなかったが今年は早くも3ゴール。支配するまでがボスとチーム全体の仕事だとするなら、仕留めるのは彼の仕事だ。いいよ、別にずっと消えてても。後半、俺たちのいるゴール裏に向かってネットを揺らしてくれれば。
新しいスタイルとは言うものの、生半可なままでは今まで対戦したチームには通じても川崎には通じない。柏戦のようにポゼッションでは圧倒したが…では意味がない。長くボールを保持できたのなら、それをゴールに昇華させる選手が必要。川崎の方がその選択肢は多いかもしれないが、マリノスにはウーゴ ヴィエイラがいる。耳に手を当ててきたら、とてつもない大きな声援を浴びせたい。
ポゼッションの鍵は、天野純と扇原貴宏のバランスと、相手ボランチ(大島僚太が出てくるらしい)とのせめぎ合いになる。距離感。
15連戦はまだ始まったばかりだが、断言したい。この試合が序盤で最高の山場である。勝てば勝ち点で川崎に並び、上位に入ってこれる。引き分けですら、今は満足できない。中断期間まで突っ走るための第一関門だ。
川崎がACLで余力を残し、顔も見たくない選手もいるのだから、逆に言えばこの試合は極上のエンターテインメントになる。
勝つのは、俺たちだがな。