マリノスで17年目の中澤佑二の開幕は、大阪で迎える。この開幕が彼にとって最後である可能性は高い。折しも今日、40歳の誕生日だ。
昨日、私は2003年2nd最終節、横浜FM対磐田の試合をたまたま見返していた。たまたま、ではないな。開幕の日を迎えるにあたって、多分ゲンを担ぎたかったのだ。リーグとクラブの歴史に燦然と輝く完全優勝の年、すでに堅守の真ん中に中澤佑二はいたのだから。40歳の今も、監督が何回変わっても、当然のようにスタメンを張り続けているわけだが、だからこそ彼がいなくなった後のことを考えながらの戦いを今年は一層考えさせられる。
ルヴァン杯のグループリーグを見れば分かるように、中澤不在時の試合は堅守と呼ばれるマリノスの守備は比較的簡単に綻ぶ。彼がいる時といない時では、「守り方」「リスク管理の概念」が違う。深いライン取りに目が行きがちだけれども、目的はリスクを回避して、失点そのものを減らすことが堅守の本質であるなら、マリノスの伝統というよりも中澤本人の哲学によってこの10年のディフェンスは成り立っていたとも言える。
数年前、脱・中村俊輔とよく言われた。俊輔の欠場時になると、特にビルドアップ以降、オフェンスで手詰まりを起こし、可能性のある攻撃を生み出せないまま敗れる。けれども俊輔がいる試合なら結局彼への依存が起こる。目の前の試合には、それで勝てる。でも長期的には課題は手つかずのままで、下は育たない。
脱、という表現がいいとは思えない。だが、中澤佑二のいない守備整備を本気で進める一年である。ひょっとすると脱俊輔以上の難題かもしれないこのテーマがあるからこそ、ハイラインの無理難題的な守備に挑もうとしているという仮説はどうだろうか。
アンジェ ポステコグルー監督の采配は楽しみだ。言葉に重みがあって、情熱を感じさせる。男気を感じさせ、このボスのためなら!と選手に思わせる監督が、私は好きだ。熱血である一方、中澤の守り方に合わせず、スピードを必要とする守備を強いる。
そりゃ、開幕戦から裏、取られるだろう。取られまくるだろう。相手のC大阪については今更何を言う必要もない。今、一番、完成度の高いチームと言っていいだろう。公式戦をすでに何試合か戦っていて、コンディションもいい。清武の怪我のようなアクシデントもあったが、客観的にはC大阪の有利は動かないだろう。
それゆえに、不安が大きい分、マリノスの開幕には期待が高まる。攻撃のキーマンは、プロ3年目で初の開幕スタメンに挑む遠藤渓太だろう。背番号は11。サポーターの感情とは異なり、彼なりにこの番号に思い入れを込めている。飛躍と停滞の末にやってきた3年目のシーズン、他の20歳に比べればはるかに多くのチャンスを掴んできたと思う。だから、もっとやってもらわないと困る。
両翼を失った、とよく言われた。それは違う。マリノスにはさらに若くて大きな翼が育っていたのだ。そう言わせてほしい。
もう一人、アンカーに入る喜田拓也のプレーにも注目したい。怪我と競争で、ポジションを失ってからの捲土重来。前の5人と、最終ラインの4人をつなぐ、意識を統一させるための、新たなマリノスの最重要ポジションだ。彼の守備力と献身性をもってすれば最適任だと誰もが思うはず。ここがしっかりしていれば、そうそう点を失うことはない。逆に言えば大敗もありえる。
プレシーズンに見せた、あの勇猛果敢でしかないサッカーを貫くのかは大変興味深い。それだけでは厳しいと語る中澤のコメントもある。
たかが34分の1、されど34分の1。理想と現実、どちらに舵を切るかを注目したあ。