齋藤学の契約更新の発表とともに、背番号11から10への変更が発表された。
本人の強い希望にクラブが応えた形だ。俊さんがつないできた伝統を、背負ってきた重みを、受け継ぎたい。自分が背負いたい。覚悟と思いがビンビン伝わってくるリリースだ。
背番号はただの通し番号ではない。その選手の顔であり、チームの顔である。
私がマリノスサポーターだから、ということを差し引いても、あの中村俊輔が選んで背負ってきた番号と言えばそれが普通のナンバーの枠に収まらないことは理解いただけるだろう。
固定番号か導入された97年以降に、10を背負った選手は20年で5名だ。やはり気軽に与えられた番号ではない。
バルディビエソ 97〜98
中村俊輔 99〜02
遠藤彰弘 04
山瀬功治 05〜10
小野裕二 11〜12
中村俊輔 14〜16
齋藤学 17〜
最長かつ最近の中村俊輔のイメージが強すぎる。
この番号をさらに価値あるものに、というのが学の意気込みである。学なら、彼らしく新しいマリノスの10を印象づけることができるだろう。
なお学はユース3年時に10番をつけており、自身にとっては9年ぶりの10番復帰となる。
今回、一人だけ契約更新が大幅に遅れたのは、1月末のギリギリまで念願の海外移籍を模索したからだ。だが、希望に叶うような有力国1部リーグからのオファーがなかったと伝えられている。
同じ代理人の柴崎岳が、鹿島からスペイン2部のテネリフェへの移籍までこぎつけたのとは対照的になってしまった。
また国内では、川崎がオファーを出していた。なかなか動静が聞こえなくて、海外なのか、はたまた国内移籍もあるかと残留は絶望的なものと思っていた人も多い。それだけに、残留の正式発表は嬉しく、そして10番への変更はサプライズだった。
だいたいこうした時に出るのは、「クラブが新しい番号のユニフォームを売るため」などという揶揄だ。だがそれを言うのは野暮だ。
ま、実際、新10番のユニだけこれから発売となり、飛ぶように売れるだろう。どうせなら11でなく、新しい10を着て応援したいというのはファンの心理だ。もちろん移籍した選手のユニ、古い番号のユニを着てはいけない、などという決まりは存在しないが。
でも今回、まずは学のその覚悟を讃えよう。
移籍を模索していても、そのためにタイキャンプに参加しなくても、マリノスとチームメイトは学を受け容れた。それは学が筋を通した上でだったからだ。後ろ足で砂をかけるような姿勢や考えは微塵もなかったに違いない。
ただし、移籍の夢が消えたわけではない。移籍金がマリノスに残る形での移籍を目指すから、この夏以降、一層ハードルは上がったと言えるだろう。国内で昨年以上に無双の活躍を見せて、オファーを勝ち取れるなら、それはその時にまた考えればいい。
学が小学生の頃、マリノスは強かった。その復活を学はプロになってからずっと言い続けてきた。
そこに、10の系譜の継承という重たいミッションを自ら背負った。
期待する? 当たり前ではないか。
エンブレムと背番号を誇らしく指差すシーンが、これから何度も見えるだろう。
その回数が多ければ多いほど、マリノスの強さが示されていることにもなる。
見せつけよう。日本中に、世界中に、マリノスの新しい10番の輝きを。
勝とう。磐田との新旧10番対決もあと2ヶ月でやってくる。
また一層、開幕が待ち遠しくなってきた。