今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

パス558本の事実をどう捉えるか【J1第6節◯横浜FC戦4-0】

マルコス・ジュニオールの浮き球は、目掛けていたエジガル ・ジュニオの爪先には触れることがなかった。が、マークに付いていたCB田代真一の足先にあたり相手方のネットを揺らした。オウンゴールの先制点は、それまで相手のプレスの強さに苦しめられていたマリノスにとっては望外のゴールとなった。こうした真の恩返し弾はいつだって称えられてしかるべきだ。

前半の折り返しこそ1点のリードのみだったものの、後半は3得点。2点目は仲川輝人がペナルティーアーク付近からあげた短いクロスをオフサイドギリギリで飛び出したマルコスの一瞬の抜け出しで勝負あり。3点目は水沼宏太が右サイドで相手を振り切って、決めてくださいねという極上のクロスを左足で送って、遠藤渓太が頭で決めたもの。さらに渓太は、球際の強いマギーニョに一歩も引かずに仕掛けて、DF2人を抜いたあとは冷静に、フリーで待ち受けるエジガルにグラウンダーでマイナスのボールを送る。あの負傷した昨夏の神戸戦以来となる公式戦のゴールを、エジガルはワンタッチで、ただしとても丁寧に、大事そうに、右足のインサイドで蹴りこんだ。セレブレーションでは、この1年の間に生まれた愛息ジョアン・ミゲルのイニシャルであるJとMを示し、おしゃぶりの真似まで見せてくれた。19年のエースは紛れもなくこの男だった。得点が生まれて本当の意味で「エジガル が還ってきた」と言える。


最後の横浜ダービーと言われた8月11日の8-1というスコアから13年の歳月。13年後にセルティックの名手・中村俊輔が相手方にいるんだぜと言ったら、さぞやスタンドでは嫌な顔をされたことだろう。でも、事実である。
4-0という快勝。ただし8得点が必須だと思っていた私からすると、この結果には満足し切れない。目標の半分の得点数だからだ。

この試合で前半は完全に相手方がペースを握っていた。後半はマリノスらしい攻撃回数が増えた。にもかかわらずという数字、DAZNの中継で出されたスタッツを紹介したい。
全て数字は左がマリノスで、右が相手チームである。

シュート数 :19 (12) 12(8)
ボール支配率:54%   46%
パス数   :558 474
パス成功率 :82% 75%
*データスタジアムの値と比較すると枠内シュートの数が半分となっている他は大きく変わらないようだ。

同じくデータスタジアムによると、マリノスの今季の1試合あたりのパス数は705本、ボール支配率は63.8%とある。すなわち、いずれも大きく今期の平均値を下回る数字となっている。

その原因の一番大きなものは、先方によるオールコート、マンツーマンディフェンスにあったと言えるだろう。前半にGK梶川裕嗣がボールを持ったシーンで、映像を止めてみるとすぐに分かる。どこにもパスコースがないのだ。10名のフィールドプレイヤーにもれなく一人ずつキッチリとマークがついているのだ。G大阪戦でも似たことはあった。ここでパスを付けられてもその選手は前を向くことは難しく、つっつかれるとそのままボールを失う恐れがある。家本主審は「正当なフィジカルコンタクト」の幅が大きいので、ファウルと判定されずに大ピンチということも起こり得る。

畠中槙之輔と伊藤槙人のヘルプという意味で普通は扇原貴宏か喜田拓也が降りてくる。が、この日は仙頭啓矢が先発に起用され、ボランチは1枚になっていた。

さあ梶川にパスを出すことに躊躇はないのか。朴一圭が離脱している中、さすが全試合でゴールを守る梶川のパス能力は本当に素晴らしかった。パスコースがないのならと、最前線のエジガルに渡すのが一番安全かつ、おさめてくれる可能性も高い。こぼれたら周りで攻撃的な選手が拾ってくれるかもしれない…。
にしても、正確無比なキックがなければただ単に蹴って相手にボールを渡すだけになっていただろう。このように「いきなりエジガル」が増えるほど、マリノスのパス本数は大きく省略されることになる。

とは言え、先制点をゲットするまで圧倒的に押していたのは相手の方だった。被決定機も3回はあった。下平監督が試合後のインタビューで苦笑いしていたように、狙い通りにできた、でもゴールという結果だけがついてこなかったということなのだろう。

各選手がそれぞれマリノスのボール保持時にマンツーマンを仕掛けることは当然体力の消耗は大きい。さらに言えば、マリノスの選手が圧力に慣れてきたこともあるだろう。また中盤でのボール争いという点で、レオシルバも三竿も橋本拳人も相手チームにはいなかった。

よって、20分過ぎから少しずつマリノス側に流れは傾き、なんとか無失点で凌げたからこそだろう、あっさりと先制点が転がり込んできた。

これが0-1、0-2となっていた可能性は十分にある。が、後半になってさらに運動量が落ちたせいか、少ない選手でマリノスの猛攻を防ぐことはできなかった。


前節は、チアゴ・マルチンスとエリキ が負傷交代となったが、今節はマルコスと仲川が共に足を気にするそぶりを見せた。(これで遠藤渓太が抜けたらキツイ) マルコスの出来はどんどん良くなっている。試合後も場内一周に加わっていたので、大丈夫だとは思うが…。札幌戦にも必要不可欠だ。


初出場の仙頭は、シュート3本。J1初出場ながら攻撃面では存在感を見せた。入れ替わりで扇原が入ってからの方がぐっと落ち着きが生まれたのも事実。タイプが違うと言ってはそれまでだが、右に左に顔を出してミニマルコスとして頑張っていたと思う。試合後は、べったり汗で貼りついたユニフォームを脱ぎ、地肌直接ビブス姿を披露していたな。

水沼宏太早くも4アシスト。この日は、左足でも質の高いボールを見せた。右足を警戒してコースを切っていた相手はさぞや悔しいことだろう。テルのようなスピードがなくても、別の怖さを右サイドで見せてくれる。高機能砲台。そしてかけ声を絶やさない献身性もこの日も健在。先発でも、途中出場でも、この選手はもはや欠かせない。

4-0の、後半30分には武田英二郎と中村俊輔が投入される。相手の選手として日産スタジアムのピッチに帰ってきた。交代の際に、拍手、それもかなり大きな拍手が送られていた。相手方の選手なのにおかしいと疑問視する声も理解できるが、マリノスを去ってからそれぞれいろんな苦労をして、さらに等しくコロナの影響を受けて、ここにたどり着いている。再開直後の特別なダービーだから、こんな雰囲気があるのもいい。来年も横浜ダービーは行われる。その時は6万人くらい入って、相手を威圧する雰囲気でもいい。

その俊輔と、試合後に言葉を交わしていたのは渓太。おそらく移籍の話を報告していたのではないか。最後に渓太の肩を叩く俊輔の唇ははっきりと「がんばって」という形に動いていた。特別な時間、いいんじゃないかな。


相手チームもマリノスの背後をついてきながら、ボール保持にこだわろうとしていた。降格がないからこそ、長期的にチームの骨格作りに挑んでいるという。その姿勢にはほんの少しだけ好感が持てる。だからパス数も、ボール保持率も、いつものマリノス戦の数字にはならなかった。

マリノスがその対策を上回ったとも言える。相手の対策も効果的だったと言える。パス数や保持率は指標の一つに過ぎないがマリノスほどここに極端な特徴があらわれるチームもない。

でも個人的にはショートパスで蹂躙するスタイル、好き。やはりこんな絶対に負けられない相手、割りに合わないダービーマッチで次はもっとボコボコにしてほしい、という気持ちだけが残った。「これぐらいにしといてやらぁ」そんな負け惜しみを、次も聞きたい。

1点目のゴールは崇高で絶叫だった。復権の兆しはある【J1第5節●鹿島戦2-4】

*長くブログを書いていれば、書き上げたのにアップできていないことに気づかないことだってあるさ。そう、フットボールのようにね。やれやれ。


F・マリノスの売りはその攻撃力である。攻撃力の源泉は、数的優位と質的優位とその組み合わせによって相手守備組織を無効化することにある。その時、その場所に居るという約束。

それが余すところなく表現された1点目は崇高だった。扇原貴宏が左サイドに流すとエリキが倒れながらもティーラトンにはたき、必死にそれをエジガル ・ジュニオに渡す。鹿島のプレスが強まることを見越して、ほぼ真後ろにしたマルコス・ジュニオールに渡す。それが松原、エジガル 、仲川と2タッチで渡った後、ゴール正面に折り返されたボールをマルコスがゴールに流し込む。基本的でありながら、どこの誰がサボってもこのゴールは生まれなかった。勤勉な貴方たちにこそ生まれる。2019年、J1リーグを席巻し、そして王座に就いた我らがマリノスならではのゴールが、この夏の再開後は初めて生まれたと言っていい。
私はテレビの前で、絶叫していた。カシマスタジアムで観られない寂しさもなんのその。ご近所の皆様、ごめんなさい。

マリノスの美しいゴールには大抵次の3つのステップが存在する。ずらして、揺さぶって、崩す。まさにこの1点目にはその3つの課程が盛り込まれていた。

2点目は天野純が切り開いて、マルコスが右足で巻く弾道でコントロールされたシュートをねじ込んだもの。二人の個人技が光った得点だった。エリア内に複数の選手が侵入していることは間違いないのだが、崩してはいない。崩す前に仕留めている。湘南戦で天野が見せた2得点もそうだ。天野の能力に因るところが大きい。もちろん得点という結果がある以上、そこに優劣はないのだが、相手にダメージを与え、戦意を削ぐのは「崩したとき」ではないかと思う。

瓦斯戦は、相手の守備力の集中が高いこともあり、やはり崩す最後の直前でチャンスを逸してしまうことが多かった。そしてフィニッシュの質である。マリノスの枠内シュート率が低いのだと、嬉しそうに語っている評論家がいたが、確かに決めきるところを決め切れていればこの日の展開も違ったものになっただろう。もちろん後の横浜FC戦のように決定力の無さに救われることだってある。

チアゴ ・マルチンスとエリキ が、明らかにアクシデントと思われる時間帯にピッチを後にした。その方が長い目で見れば痛い。二人とも、本調子でない中で懸命に戦っているのだとすれば、この過密日程が改めて恨めしい。特にエリキの足は心配である。

失点のことを多く語るのはやめておこう。サイドバックが不在のスペースを狙われた後に、逆サイドに大きく振られて、フリーの選手が飛び込んでくる。そしてそっちのサイドバックは往々にして釣られたCBの穴を埋めようと中途半端なポジショニングを強いられる。数的に不利なこともしばしばだ。対人守備が軽いという問題も確かにある。でも、それは今に始まったことだろうか。

ずっと前から、そのことには目を瞑って、バカスカと相手を殴り続けてきたのではなかったか。SBが1対1に強い方がいいに決まっている。でも、そのことよりもボランチのポジションに入って、縦にパスを通せるティーラトンは最高なんだろう。松原健がCBと右SBの間に走り込む仲川輝人へのスルーパスに一体何回酔いしれたのだ。

相変わらずボールは保持できている。決定機も作れている。とすると、何が問題だろう。相手がマリノスのスプリントを上回ることか。致命的なパスミスを起こすことか。個人的にはこんな敗戦もあるさ、と片付けたい。

試合は続く。次節、なんと順位が上の状態で、昇格組とのダービーマッチがやってくる。正直に言って、修正する時間はそれほどない。だから原点に戻って、守備の修正とかリスクの低減とか言わなくていいんじゃないか。

確かに、上田絢世とザーゴに自信を与えた損失は小さくはない。罪といってもいい。よりによって相手には最高の試合をさせてしまった。願わくは、マリノスとの噛み合わせが良かっただけであってほしい。


これからも殴れ。相手は対策してくるだろう。走力や、固い守備や、あるいはマリノスを上回るハイプレスで。
その相手を防具の上から殴れ。ごめんなさいと言ってきても殴るんだ。体制が悪くても、数的不利でも殴れ。

結果として、殴られる回数が多くなるなんて道理が合わない。でも事実がそうならば、よりハイペースに殴ろう。俺たちはそれしか知らない。

でも1点目のようなゴールがこれから再び増えてくれば、未来はきっと明るい。

さあ手を繋いで、僕らの現在が途切れないように【J1第4節●FC東京1-3】

幸先良しだった。今季初弾となる遠藤渓太の右足裏での先制ゴール。前半まだ4分。最初の決定機を見事にモノにしたゴールは、J1リーグで通算100試合出場達成に花を添えるものに違いなかった。流れも素晴らしかった。初スタメン起用の水沼宏太が右ペナ角付近から速射的なクロスを上げ、そこにはオナイウ阿道。わずかに触れて落としたところに走り込む渓太という完璧な流れでもあった。

J1の歴史、27年目。所属した選手の数は万に迫る中で、100試合出場に到達した者、渓太で717人目となる。1997年生まれとしては最速の到達である。国内組の期待の星と言って、何ら差し支えない。しかもこれまでに通算で11得点をマークしたリーグ戦、すべてチームは勝利している。データとしては完璧だった。

同点の被ゴールは、チアゴ・マルチンスによるPK献上が原因となった。2点目は梶川裕嗣が一発レッドもののエリア外で手を使って相手を倒すというまんまDOGSOのファウルを犯して、FKをレアンドロに決められる。3点目はまたしても左右に振られて、早く縦へ縦へと抜けだされた結果。

ああ瓦斯にはこの形でやられていたよなぁという長谷川健太から見ればプラン通りの、こちらからはやられた時間帯が悪すぎるキツイ3失点。ジャッジリプレイでも繰り返し見たが、この1、2点目のやられ方について、あるいは警告・退場処分について考えているうちに、なんと土曜の朝まで記事アップが遅れる事態に。結論は、梶川のは退場が適切だったとの見方には賛成である。1プレーの重さという点では重要なプレーであることは間違い無いのだが、GKが1対1になる場面を作られたことが問題だった。

去年の最終節が快勝すぎてつい忘れがちだが、近年の瓦斯との相性の悪さはそこにある。
そこに加えて、チアゴもまだ本調子とは言えない状況下だから起きた惨劇。改めて「チアゴへの依存度の高さ」を裏付ける結果とも言える。


とは言え、後半の攻撃が悪かったとは全く思わない。瓦斯の専守防衛が素晴らしかった。リードを2点に広げた瓦斯は後ろの人数を増やして、マリノスのパスコースを制限していく。球際も強い。橋本拳人はもっと早く移籍してくれて良かった。それほど、瓦斯のディフェンスは硬く集中力は高かった。

それでも、決定機の数も前半を上回るペースで作れていたし、よくあるまとめをするならば、決定機を決められないなら、やはりその試合は厳しくなる。加えて取られた時間が前半の終了間際、後半の出鼻というのが最悪。

そういう点では、悲観しても仕方がない。気になるのは、主軸選手たちのコンディションがこれからどのくらいで高まってくるだろうか、ということ。ボスのコメントを読むと、浦和、湘南、FC東京との3連戦では、試合勘を取り戻すために頻繁に選手を入れ替えていたことを示唆している。まあ言葉通り受け止めても、どうせ次の試合もびっくりさせられるのではと思う。


負けっぷりがよくなかったのはあると思うけれども、サポーターの間からは存外に悲観的な反応が多く見られた。でもこんな試合もあるよね…やっぱり瓦斯は瓦斯で安定しているし、前線の外国籍選手が強力なのもお互い様だったねという総括。


そのことよりも、スタンドの雰囲気を記憶に留めておきたい。4,769名の観衆は、5,000名の上限がある中では全スタジアム中最多の人数だった。発せられるのは、拍手。激励、賞讃、相手を威圧、後押し、そして敗戦が決まった後も、感謝と次戦への励ましの拍手。相手チームの選手が怪我から立ち上がっても拍手。拍手とはこれほどまでに雄弁だったのか。声が出せないからこそ、観衆は掌に一層の願いを込めていた。その音は、その響きは、選手たちのパフォーマンスに大きく影響を与えた。
今までに見たことのないフットボールの試合だった。リスクを抱えながらも、わずかであっても観客を入れるというJリーグの判断は英断だと強く支持したい。

また感染者数が増え、テレビによる「インフォデミック」は深刻である。一部の人の無謀な行動により、また社会全体が「自由を許さない」「自粛することのみが正解」という風潮になりかねない。そうなれば、観客数を増やす、応援の制限を緩和していくというスケジュールもさらに遅れていくだろう。

私はいろんな事情から、この瓦斯線の現地観戦を見送った。来週も様子を見てからギリギリまで判断に迷うことになるだろう。



1勝1分2敗という数字だけを見ると、「前年王者が苦境に」と書きたがるのは分かる。でも、そうした背景だから、我らが喜田拓也のクラブ史に残るだろう名コメントは生まれた。

「皆さん(報道陣)ですとか、周りがどう思っているかは全くわからないけど、一つ言えるのは一度つないだ手は絶対に離さないし、何があっても全員で乗り越えていく覚悟がある。そこに自信はあるし、みんなの結束は何としてもブレてはいけないところ。どんな結果であろうとこのサッカー、このチームを信じているし、みんなも信じていると思う。心配は何ひとつ、1ミリもしていない」

つないだ手は離さない。まあ確かにいろんな歌詞に出てきそうだし、実際に出てくる。私たちも同じ気持ちでいなければ。繋いでいない人も、急いで手を繋ごう。僕らの現在が途切れないように、そしてどんな場面も笑えますように。


2020年の「マリノス対策」。それを上回るだけの時間と伸び代は、ある。

あの日と同じ飢えで戦えるか【J1第4節・FC東京戦展望】

日産スタジアムに観客が戻ってくる。上限5,000名の超厳戒モードだが、また一歩、関係者のたゆまぬ努力によってステージが進もうとしている。前夜、等々力の川崎対柏を映像で見た。拍手。ただひたすら拍手の音だけがスタンドからピッチに降り注いでいた。川崎がシュートを放った時はもちろんボールを奪った時、川崎ボールでアウトオププレーになった時、たとえ柏ボールになっても自軍の選手が相手の攻撃を遅らせた時。声出し、歌、タオル振り、手拍子によるリズムといった、通常のあらゆる応援手段が禁止された中で、残された拍手というツール。

拍手は奥が深い。強さ、リズム、叩く回数でその意味が変わってくるのだ。家長の得点時には5千人なのに「万雷」の拍手が鳴り響いた。この拍手は、今宵の日産スタジアムでも、マリノスの選手にとって大きな励ましとなり、相手選手には厄介な存在になることだろう。

リモートマッチ、有観客だが制限付きの試合、それぞれに特徴がある。この状況下ならではの発見と言えるだろう。

至高の瞬間から7ヶ月

12月7日、昨年のリーグ最終節。同じ日産スタジアムで、マリノスはFC東京を退けて、15年ぶりのリーグ優勝を決めた。マリノスにとっては至高の瞬間だった。それはすなわち2位という最終結果となった相手側からすれば逆の意味で忘れられないものである。あの日以来の日産スタジアムとなる東京側のモチベーションは高いに違いない。
そこに東京側の事情が重なる。前節の川崎戦で0-4という予想外の大敗を喫してしまう。さらには主力選手である橋本拳人の移籍が発表されている。リスタートというよりは、モチベーション高く。マリノスを踏み台にしてやりたい、そう思ってくるのではないだろうか。

FC東京のフォーメーションは?

開幕前に遡ると、アダイウトンとレアンドロの獲得が大きな話題になり、Dオリヴェイラと合わせて3枚を最前線で並べて使うというのが2020年の東京のベースとなるものだと刷り込まれていた。実際、開幕ではアダイウトンではなく田川だったが、レアンドロ、Dオリヴェイラ、田川が最前線に陣取る「4-3-3」が使われていた。

2節・柏戦では4-4-2。
    アダ  オリ
レア  安部  高萩  東  というスタートだった。

3節・川崎戦ではこれが4-2-3-1だった。
      オリ
  レア  安部  東
    高萩  シルバ    システムそのものが悪かったかどうかはともかく、川崎戦で見られたのは攻守の切り替えの遅さだった。特にレアンドロのちょっとした寄せの遅さ、目の前にいたのが家長だったということもあり、その「ちょっと」が呆気ない失点を産んでいた。レアンドロの存在は諸刃なのかも知れない。長谷川監督、東ともに1点、2点と失った段階で冷静さを失ってしまったと振り返っている。「入りは悪くなかった」とも。確かに裏を取る動き、縦に速い攻撃は(少なくとも失点まで)意識されていた。

東京は絶対に先制点を取られたくない(マリノスはもちろん先制したい)。前節の記憶を払拭する意味でも、元は固い守備がベースのチームだ。相当に後ろ足に重心をかけてくるつもりではないだろうか。どっちみちローテーションは必要なのだから、リスク管理を考えるならばレアンドロを控えに回して、紺野の先発起用ではないだろうか。高萩のところに橋本拳人(前節もベンチ入りしているので移籍=ベンチ外ということはなさそう)もセットで使うと、まずは安定しそう。川崎戦の後半、橋本が入ってから安定した事実は見逃せない。

ということで、Dオリヴェイラ、紺野、安部、東の先発。右DFは室屋成が先発復帰を予想。ということでどうだろうか。

喜田拓也のところは和田拓也?天野純?

湘南戦は逆転勝利したとはいえ、後半開始早々の屈辱的先制点を見るにつけても、本来は絶対に先制点取りたいマリノス。
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劣勢でも、キャプテンの声がけをベースに団結を高めて… という舩木さんのルポ、良かった。
で、その喜田も、さすがに全試合出すわけにはいかないとアンジェ・ポステコグルー監督が湘南戦後に言っている。額面通りに受け取るなら、ここは天野純をスタートで起用するか。ただし、そうなると天野、扇原貴宏とのセットは本当にいいのか。共に左利きで、役割もかぶりそう。シンプルにやるなら、和田拓也。あの最終節以来のスタメンとなるが、十分にやれることは実証済みである。しれっと、喜田先発で遅くても60分で交代というやり繰りもあるけれどもね。

攻撃陣のチョイスもいろいろありそうだけれど、ほぼ確実なのは前節ベンチ外だった遠藤渓太の左ウィングでの先発復帰だろう。元気一杯で通算100試合出場へ。「マリノスだけで100試合出場できるとは予想していなかった(遠藤)」というが、去年の最終ゴールで私たちを歓喜させたあの輝き、まだ今年は見せていない。カットインのタイミング、DFラインとの駆け引き、相当に渓太も対策されている。同じ左のティーラトンも1試合間を開けて先発復帰するだろう。左のコンビネーションで攻略したい。

高さとロングボールと、それより大事な飢餓感

大敗してしまった後の瓦斯、相当に強い勢いで入ってくるだろう。瓦斯さんになにしてくれてんねん川崎という考え方もある。
肉弾戦で来られると、昨夏の味スタ、その前年の味スタの悪夢の記憶がかすめる。
それでも辛抱強く跳ね返すしかないだろう。瓦斯の堅い守備と強い攻撃に根負けしてはいけない。あの最終節前のような「俺たちはまだなにも成し遂げていない、優勝をこの手で決めるんだあ」という強い飢餓感をこの日も持って戦いたい。

先制点を奪って焦らすんだ。不安定だった攻守切り替えで勝負だ。
・リスタートは早く
・左右圧縮の守備ブロックは大きくずらしながら
・サイドチェンジばんばん?
・球際で勝つぞ

5千人の日産スタジアム、観客数はまだまだ少なくても、ゼロとは違う。独特の雰囲気の中で、ホームらしく勝ちたい。

もう少し私は現地観戦は我慢。
熱くDAZNで応援します。

天野純という個、湘南という組織【J1第3節湘南戦◯3-2】

天野純はほんの少し誇らしげだった。いつもと同じく淡々としたインタビューへの受け答えに見えるが、2点目のゴールを振り返って自身の成長について語ったときの口調に、僕たちなら気付くことができる。それは、僕たちがずっと新加入の天野純を応援してきたからだ。

 

恩返しの強い気持ちをもって

63分ピッチへ、66分には同点ゴールを左足で放り込んだ。そして、77分のこと。オナイウ阿道から天野へ、エジガルジュニオから再び天野へ。小気味よいショートパスのやり取りで天野はボックス内に侵入し、DFの股下を引っ掛けながらも前進して抜くと、最後のDFは右足の切り返しで交わす。狙うはGK富居の股の間だ。閉じる足よりも天野のシュートが強くて速かった。個人技で奪った2点目。リモートの観客はもちろん、記者席からも思わず声が漏れてしまう技だった。

 

良い意味で天野らしからぬゴールだった。とくにベルギーに移籍する直前は、元来のポジションよりも下がり目で、ボランチの横で攻撃の組み立てに関与することが増えていた。ただ浦和戦で見せた変化=成長は、ゴールまでより近い位置でのプレー、得点に直結する動きだった。そこに彼の覚悟を感じないわけにはいかない。

天野純の浦和戦のヒートマップ。(湘南戦のものはまだアップされていないようだ)

 

確かに凱旋という表現は使いにくい。「不甲斐ない形でマリノスに帰ってきて」と本人は言う。所属クラブの経営破綻については彼には何の責もない。だから彼のマリノスへの恩返しの気持ちを持ってという言葉はスッと受け入れられる。元来、言葉が先行する男ではない。プレーで結果を示す。実際に示した。1点目の後の「単独高速ゆりかごダンス」を見かねたのか、逆転ゴール後には10人ほどの選手が参加して微笑ましいゆりかごダンスが披露された。

 

天野純の独壇場だった。カッコ良かった。そして3点目を取れそうなのに足がもつれてしまったシーンも。与えた怖さは十分だった。おかえり、天野純。また一緒に戦えてうれしいよ。

 

 

湘南の組織にやられる

という見出しをつけながら、湘南で最初に触れたいのは鈴木冬一である。トイチの名前の通り、10日に1割のペースで成長している感がある。こりゃいい選手だ。まずは仲川輝人対策がすごい。テルへの寄せが速くて強い。本当にやりづらそうだった我らのMVP。球際も強いし、アップダウンも多い。上述のゆりかごの直後にトイチに同点ゴールを許すわけだが、よくまあ79分にあの位置までいるもんだ。スプリント32回は全体2位。(1位は湘南金子の34回)

走行距離も11km超え。それであの強度だから嫌になる。松原健の1対1対応は劣勢だったと言わざるを得ない。マリノスが今後獲得を狙いそうな選手だなーと感じた。

 

それよりショックであり、屈辱だったのは、マリノスのやりたい組織的な崩しを湘南に幾度となく見せつけられたことではないだろうか。38分の湘南ゴール前から鈴木冬一単独疾走までの流れは、湘南ゴール前でのマリノスのプレスをことごとく剥がされてなものだった。ワンタッチ、後ろに落として、前を向いた選手は1列前に確実に前進させる。湘南がやりたかった形を見事に見せつけられたシーンであり、はたしてマリノスがこの試合でこれをできたか。

 

先制点を奪われた場面も同じだ。右から左、左から右へと揺さぶられ、背後を取られる。中川は触ればよかった。組織的に完全に崩されているからだ。守備陣を切り裂いて、仕上げるのは2019マリノスの専売特許のようなものだったが、今は違う。マリノスが今のスタイルに辿り着くまでに苦労したものだから、湘南が繋ぐスタイルに変化するには相当な痛みを伴うものだと私は決め付けていたが、すでにもう変化し始めている。その空恐ろしさを感じた。

 

でも個はないより、あるほうが絶対いい

そう考えると、リーグ戦3試合で4得点。マリノスのゴールはどれも技が光ったものだった。開幕戦のマルコス・ジュニオールの得点は彼の反転する体幹の強さと正確なコントロールがなければ決まらなかったろう。この日の3得点もしかり。

つまり、今のマリノスは個人の能力によってのみゴールを生み出せていると言えないだろうか。

 

善悪の問題ではない。個人技はあった方がいい。得点時の興奮の種類は違うけれども、喜びの爆発という結果は同じだ。

 

天野と同じ時間に投入された、水沼宏太とオナイウ阿道。彼らがセットで入った意味は何か。右足クロッサー・宏太は正確なボールを。それを頭で仕留めるのはアドの仕事だ。

 

ドンッ、というアドの前頭部がボールを叩く音がはっきりと聞こえてきた。決めて当然だろ、と鼻を膨らませてゴールを祝うアドと、一仕事を成し遂げだ安堵のような宏太。交代選手が決勝点も含めて全3得点を生み出す意義あるものとなった。

 

守備面ではいろいろ課題が出た。不用意なパスミスがまだまだ多いし、失点に繋がらなくても軽さが出た場面もある。

 

勝ち越し点の後の被決定機を梶川裕嗣が触っていなかったらクロスバーではなくてネットに突き刺さっていたかもしれない。辛勝も辛勝、よくまあ勝点3が取れたもの、という見方もできる。

 

まだまだ始まったばかり…とはいえ

今季リーグ戦初勝利は、あの最終節の瓦斯戦以来、実に7ヶ月ぶりのものとなった。たかが3試合、されど3試合。勝てて本当に良かった。これで本当に開幕である。

 

すぐに瓦斯戦が来る。試合は続く。メンバー選考はさらに予想困難になる。それもまたこちらは楽しい。たとえばセンターバックの2人、伊藤槙人、畠中槙之輔はともに警告を受け、2人とも危ない場面を作った。チアゴも休ませたいけれど、この2人できちんと試合をしめてくれないと困る。ただそれもまた伸びしろ。

 

交代選手が活躍すれば、スタメンはまた変わるかもしれないし、それならまたサブに回った選手が燃えてくれればいい。

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選手たち、三ツ沢の旗で埋められた客席に向かってハイタッチをし、拍手をし、手を振ってくれてありがとう。その気持ちを忘れない。

それに素晴らしい逆転勝利をありがとう。この1勝を忘れない。