今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

サッカーに費やすはずだった時間のゆくえ

たとえば個人で飲食店を経営している方と比べると、影響は遥かに少ない。半年から1年後の給料のことは考えたくもないが、3、4月末に振り込まれた額はいつもと変わらなかったし、当面、予想外に会社が転覆しない限りは身入りが激減はしなそうである。もちろん、かと言って増える事は到底見込めない。

 

フルフルで在宅勤務。7時15分に家を出て、立錐の余地がない混雑の急行電車に乗るのが嫌だったから各停を選ぶのだが、それでも8時過ぎには高層ビル街に到着して、夜更まで働く日々が一転した。通勤時間はゼロで、残業もゼロ。とにかく子供たちと過ごす時間ばかりが増えた。

 

優勝までの足跡を描いた4時間あまりのDVDを観て、過去に撮り溜めた試合を見返して、YouTubeは有料会員になって広告の煩わしさから解放されて。音楽も相当聴いたし、普段ほとんど見ない映画だって見る。ストレッチの動画を見ながらの運動を続けていたら、わずかに肩こりを改善してきた。

 

家の外に出るのはランニングくらい。月間の走行距離は先月過去最高を記録して、今月はさらにそれを塗り替えることが確実になっている。週に2日の休肝日を守っているのは我ながら誇らしいのだが、残りの5日の酒量は増えていると認めざるを得ない。

 

在宅勤務の副産物がもう一つあった。物置同然だった部屋を本格的に片付けて、4人が暮らすには手狭な我がマンションの中に書斎が整ったことである。書斎こと、元・物置部屋には、衣類、古本、箱買いしたビールなどがうず高く積まれていて、奥に置かれていた、かつての古い小さなダイニングテーブルに辿り着くことすらできなかった。

が、今はそのテーブルが書斎の中心的存在になっている。社内、社外を問わず、テレビ会議の場面が急増した。webex、ZOOM、teams、Skypeと随分インストールしたものだ。区別がまるでついていなかったこれらのサービスの共通項は私の顔と、ともにこの部屋の様子が映ってしまうことだ。

 

まさか喜田拓也と仲間たちがシャーレを掲げている2019年の最高のシーンを壁紙に使うわけにもいかない。だから背景に映るはずだった、うず高い思い出たちはすべてゴミ袋に詰められ消え失せた。その代わりに、画面の奥の方にさりげなく見切れている扇原貴宏の2020年ホームユニフォームがいい感じに映り込んでいるのだ。

 

平日はもちろん、週末ですら部屋の掃除などほぼしたことのない私が、衣替えすらろくに完遂できない私が、掃除にハマってしまうとは…サッカーに費やされるはずだった時間はこのようにして活用されている。せっかく取った3級審判の資格もまだ一度も生かされたことがない。

 

マリノスも、自分の審判も、子供の練習試合も。サッカーの楽しみは遥か彼方へ。今のところJリーグ関係者では、神戸、草津、C大阪あたりの感染しか聞かない。別に公表の義務はないのでひょっとしたら我々の知らないところでより多数の感染者が出ているのかもしれない。

 

だがもしそうだとして、その隠蔽を糾弾してもなんの意味があるだろう。無症状者が8割だそうだ。私もあなたも、とうの昔に感染していて、無症状のまま回復して、ただ免疫だけが残されたのかもしれない。

 

そうさ、世界は変わってしまった。もう二度と日産スタジアムに超満員の観衆が押し寄せるのことなど許されないのかもしれない。ソーシャル・ディスタンスは得点直後のゴール裏においてハイタッチの習慣を封じてしまうが、でもVAR介入時代の僕たちはボールがゴールラインを割ったと同時に喜びを爆発させることが意味のないことだと知ってしまっている。なるほど、新型のウィルスが流行する前から、もう世界は変わっていたのだ。

 

テレワークが定着して、岡崎慎司が国際試合をテレビゲームで戦う時代が来た。悪くないだろう。岡崎のことをただサッカーがうまいだけの男だと、僕だちが決めつけていたのかもしれない…。

 

よし、時を戻そう…。………。時は戻らない。世界も戻るまい。でも僕たちは巧みに順応することだろう。もしもあと1年くらい無観客試合という現実が待っているとしても、試合ができないよりよっぽどマシだと歓喜するに決まっている。

 

ACL2戦2勝、J1リーグ1敗。それが今年のマリノスの戦績である。(ゼロックス杯はアレなので無視する)思い出すと、ACLのシドニー戦が開催された2/19はすでにコロナの拡大は懸念されていた。2/23のG大阪戦はもっと中国での影響が広がっていた。でも紛れもなく対岸の火事だった。そんな遠くの事件事故で私たちのマリノスの公式戦がなくなるなんてこの時点では想像さえしていなかったのだ。

 

延期の次に、延期が重なっていく。もう1年後の五輪を語ることさえ憚られる雰囲気になって来た。パチンコ店だけでなく、飲食店さえ、営業していることが悪かのようなムードが立ち込めてきて、そうすると差別のようなきたなくて冷え切った感情さえも生まれてしまう。

 

それでも、それでもなお、7月の開幕を目指すという。天皇杯はJ1からは2チームのみが参加という、クラブワールドカップに参加するはずの欧州CL王者も驚くような、かつてないほどイビツに歪みきったトーナメント表になった。ルヴァン杯はどこの隙間でやるというのか。

 

まだだ、まだまだトンネルの先に光が見えない。諦める人が出始めてもおかしくないのに、Jリーグの関係者は、下書きを合わせたら何十回目にもなる日程の書き直しを行ってくれた。

 

1・日程の再発表

2・緊急事態宣言の部分的な緩和

3・チーム活動の再開

4・練習試合などの再開

5・無観客による公式戦の再開

6・ホームスタジアムにおける観客収容の解禁

7・熱狂

 

 

1から2が狂いそうなほど遠い。感染より観戦、僕たちはそんな半生を送って来た。だからスマホゲームのマリノスが、2020年用のユニフォームに着替えただけで嬉しい。そのくらいには、とっくに乾いている。

 

潤せ。自分たちの力で。

私はこんな後ろ向きで、救いがなく、かつ乾いた文章をわざわざ見せるのはどうかなと思っていた。だから1ヶ月、何もあげられなかった。この腐った澱のような感情もいつかきっと思い出となる。300年、日本プロサッカーリーグが続いたときに必ずや最大の危機として語られる。それをどう乗り越えたかも一緒に語り継ごう。

 

相当先だけど、永遠じゃない。みんなと絶対にスタジアムで会いたい。そんな気持ちが少しでも伝わるように、この場所で精一杯、愛を叫ぶことにする。この愛は、負けない。