今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

あの文豪がJリーグ再開を待ちわびたら(その3)

Jもねぇ、センバツもねぇ、プロ野球もねぇ、欧州サッカーもねぇ、相撲だって無観客。おら、そんなの嫌だ〜。一喜一憂どころか憂うつなニュースばかりが重なっていくけれど、嘆いていても仕方ないので、来るべきリーグ再開当日の様子を書いてみよう。 ちょっと前にヒットしたもし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら をリスペクトして、ふざけてみる。

第3回目は、リクエストの寄せられたかも沢賢治。このシリーズは再開のその日まで続くかもしれないし、あるいは続かないかもしれない。時間潰シサエモナラナイ、サフイフ記事ヲ私ハ書キタイ。

注文の多い料理店-宮沢賢治童話集1-(新装版) (講談社青い鳥文庫)

注文の多いチーム かも沢賢治

4月。二人の若い紳士が、すっかり名古屋サポの出で立ちをして、ぴかぴかするゲートフラッグをかついで、だいぶ新幹線の駅から離れたマリノスサポーターばかりの居る道を、こんなことを云いいながら、あるいておりました。

「ぜんたい、静岡や神奈川のスタジアムは怪しからんね。勝点3もくれやがらん。湘南でも川崎でもなんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」(2019シーズン、名古屋は神奈川3チームと6試合して1勝に終わった。静岡2チームとも相性は良くない)
「横浜FCの横っ腹なんぞに、二三発お見舞いもうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」

どこかに勝点をどっさりくれるチームはないものか。いや、今はサッカーが観られさえすればいい、勝敗なんて二の次だという声もあるようですがせっかくガラガラに空いた新幹線でここまで来たのですから、お腹いっぱいになって帰りたいと思っておりました。

「もうあんまり歩きたくないな。」
「歩きたくないよ。ああ困ったなあ、勝点を持って帰りたいなあ。」
「マリノスをコテンパンにしたいな」
 二人のサポーターは、スタジアムの前でこんなことを云いました。
 その時ふと足元に目をやると、メモが落ちているのに気づきました。そこには、マリノスのメンバーの特徴や戦術的なコメントがびっしり。コーチが落としたものに違いありません。

我がチームの課題・弱点という見出しまでついていました。
「君、ちょうどいい。このメモの内容を我がチームに教えればきっと勝てる」
「届けようじゃないか。ぼくはグランパスが勝てばなんでもいいんだ。」
 二人はロッカールームに向かいました。7万人が収容できる、W杯の決勝が行われた実に立派なスタジアムです。

 そして関係者出入り口には看板が立っていて、そこに金文字では「関係者以外立ち入り禁止」ではなく、こう書いてありました。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
 二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、去年は苦労したけれど、こんどはこんないいこともある。マリノスは鬼門だけれどもただで勝点をくれるんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」

キックオフまで間も無くです。急いだ二人は戸を押して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。メモに目をやるとそこにはこう書かれていました。
「ことに自信のないチームや下位チームには、大苦戦いたします」
 二人は大苦戦というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらに大苦戦するのだそうだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
 ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水色のメモが落ちていました。

「どうも変なチームだ。どうしてこんなにメモがあるのだろう。」
「これはCFG方式だ。強いチームはみんなこうさ。」
 そして二人はそのメモを拾おうとすると、上にはこう書いてありました。

「当方は注文の多いチームですからどうかそこはご承知ください」
「注文が多い? なかなか苦労しているんだ。チャンピオンチームなのに。」
「それあそうだ。見たまえ、あの神経質そうな監督を。監督なんて気に入らなければ変えちまえばいい」
 二人は云いながら、そのメモを拾いました。

「早くチームに届けたいものだな」
 ところがどうもうるさいことは、またメモが一つ落ちていました。そしてそのわきには選手に声が聞こえるように大きなトラメガが落ちていたのです。

 メモには赤い字で、
「マリノスのGKは足元で繋ぎたがります。だから地の果てまでプレスをすると嫌がります」
と書いてありました。

「これはどうももっともだ。僕も映像を見て思っていたんだよ。ふふふ、前田直輝に追いかけ回させろ」
「規律の厳しいチームだ。きっとよほど偉い人たちが、欧州からたびたび視察に来るのかな。」
 そこで二人は、体力をけずるほどのキーパーへの鬼プレスを進言しました。

 そしたら、どうです。プレスはあっさりといなされ、前方にパスを通されて早々に失点してしまいました。早く立て直さないと、もう途方もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。メモには他にも弱点が書いてあります。
「常にハイラインですから、アバウトでも裏に狙って蹴られると弱ります。チアゴの裏は特に注意」
 見るとシミッチは長いボールを蹴れそうです。
「なるほど、裏だ。裏を狙うんだ」
「スローインやCKのリスタートはまだまだ遅いです。集中が切れやすいです」
「どうだ、プレーを中断させるか。」
「そうしよう」

その次のメモには、「名古屋のFWを鋭く削ろう。彼らはフルメンバーで来るはず。嫌なら選手を変えればいい」
と書いてありました。横には名古屋のメンバー表まで添えてあります。
「ははあ、我々への気遣いにも見えるね。とにかく金のかかっている選手はあぶない。下げておこう」
「試合中にかい?」
「怪我の方が怖い」
「そうだね。きっと。」
 ジョーに、シャビエルに、相馬に、前田に、新戦力の阿部も下げます。元から怪我している選手も混ざっているような気もしないではありませんが、慌てて選手の人数を減らします。ただし、その間にもチームは失点を重ねています。

「もしマリノスがリードしたら、虎の子を守ろうと自陣にひきこもろうとするかも知れません。リスクを恐れずに攻めて来るのだけはどうかやめてください。」
「臆病なチームには思えないが、よし全員攻撃でもするか」
「まちがえたんだ。コーチがまちがえて書いたんだ。そんなわけがない…気をつけろ」
 迷いが生じているうちに、引きこもるどころか、寸暇を惜しんで攻めてくるのはマリノスです。交代枠も使い果たして、もう手がつけられません。

「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「沢山の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、あのメモは実は僕たちの弱点をついて。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。

最後のメモには、
「いや、わざわざご苦労です。良い試合をしましょう。さあさあ勝点を置いて、10失点したらおかえりください。」
と書いてありました。
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。
 ふたりは泣き出しました。

 するとマリノスの選手たちが、こそこそこんなことを云っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。ロングボール蹴らないようだよ。」
「あたりまえさ。親分のメモがまずいんだ。さすがにチアゴが穴だと思う奴なんているもんか」

「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くメモを全部ベンチに届けてください。ロングシュートはお嫌いですか。そんならこれから守備をズタズタにしてからゴールして差し上げましょうか。」
 二人はあんまりの惨状に、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。

 こんなひどいやり方があるでしょうか。メモに書いてあったことは全て罠だったのです。だからって、こんな幼稚な罠に引っかかるはずがないですって。これが試合勘というやつです。試合の間隔が空くと、普段なら起こらないようなミスをしてしまいます。それと同じで、試合勘が鈍ると、強いチームでも、これほどまでにひどい目に遭ってしまうのです。

この二人は命からがら逃げ出し、大敗の記憶を語り継ぎました。
次にこの注文の多いチームの罠にハマるのは…あなたのチームかもしれません…。


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あれ、なぜか最後はホラーになってしまった。
かも沢賢治の「注文の多いチーム」いかがだったろうか。メルヘンで子供が喜ぶストーリーでありながら、マリノスの弱点にも迫る意欲作。

コロナにも負けず

コロナにも負けず、風評被害にも負けず、
東ゲートに迷子の子供あれば
行って保護してやり
西に売れないスタグルがあれば
行ってSNSで「美味しい」と発信してやり
南に降格しそうなクラブのサポあれば
行って怖がらなくてもいいと言い
北に選手の悪口言うやつがあれば
リスペクト・フェアプレイ宣言を読んで聴かせ
ピンチの時はチャントを歌い
失点しても肩を落とさず手拍子は頭の上
褒められもせず
苦にもされず
そういうサポに
ワタシハナリタイ

次回をお楽しみに?