今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

自分たちのサッカー ver.3.0で勝利【ACL・GL1◯全北現代 2-1】

6年ぶりのアジアへの船出は、アウェイの韓国・全州から始まる。奇しくも、6年前と同じ相手、同じスタジアム。コンディションの良い全北現代と、まだまだ調子の上がらない状況でぶつかったが0-3。見るも無残な敗戦を喫したのだった。6年を経て、ベンチ入りメンバーには一人も同じ選手はいない。

Jを席巻した本当のアタッキングフットボールは、果たしてアジアの強豪にも通用するのか。自分たちのサッカーに自信はある。6年前の苦い記憶にはもはや直接的な意味はないが、それにしても過去11年間でKリーグを7回制覇した韓国の絶対王者。マリノスが経験したことのないACL制覇の歓喜を二度経験しており、アジアクラブ番付なるものがあったとしたらマリノスより相当上位にランクされることだろう。

マリノスのスターティングイレブンは、ゼロックス杯からエリキの代わりに遠藤渓太と、朴一圭のところに新加入の梶川裕嗣を入れ替えただけの4-3-3、お馴染みのフォーメーションだ。前日にパギ、エジガルジュニオがACL登録メンバーから外れたことが明らかになっていたので、梶川の起用は当然予想された。さらにゼロックス杯でエリキが打撲の負傷を負ったことでこの試合を回避。遠藤渓太に先発のチャンスが巡ってきた。

6年前には見せられなかった「強さ」を存分に見せられた上々のゲームだったと言っていい。ゼロックス杯を経て、明らかに向上したフィットネス。スピードと力強さが増している。韓国のチャンピオンチームの方が、コンディションに苦しんでいるようにも思えるが、6年前に完敗した理由の一つが「強度の差」だった。シーズン初戦であることはどちらも差がないのだが、今年のマリノスははっきりとこの試合に照準を合わせてきたと言えそうだ。元日まで戦って休息も十分に取れなかった2014年と比べると、J1最終節で栄冠を得てから実戦まで2カ月ぶりのブランクがあったことも大きい。
(この点、元日まで戦ったうえで神戸はゼロックスにも勝利し、ACL初戦でも大勝したのは立派だ)

オナイウ阿道、仲川輝人と遠藤渓太のビュンビュンしたスピードに翻弄される全北。自ずとファウルばかりが増えていく。速すぎて、ファウルでしか止められなかったのかも。怪我させられやしないかとヤキモキしてしまうが、選手たちはいたって冷静そのもの。その点、主審の判定は基準が一貫していてやっている方のストレスは少なかったのではないだろうか。UAE出身の41歳、MOHAMMED ABDULLA HASSAN主審は、FIFAW杯やアジア杯でも笛を吹いた経験を持つ。国際経験と大舞台の経験が豊富な審判と言えるだろう。彼が2枚目の警告でも躊躇なく出したことで、全北の選手が相次いで退場し、11人対9人のゲームとなる。アジアの笛の基準がJのそれとは異なる場面は出てくるだろう。

だがマリノスの得点シーンは11対11だった。マリノスのサイドからの侵入と(チアゴのサイドアタックに代表されるように)オナイウによる裏抜けは確実にゴールに迫っていた。「ゴールが決まるのは時間の問題」となってから決めきれない場面が続いたが、それを仕留めたのは遠藤渓太だった。

仲川輝人の右深くからのクロスにピンポイントで合わせると、ビッグセーブを連発していたGKの逆をついたボレーシュートで先制ゴールをもたらす。

そして圧巻だったのはオウンゴールとなる2点目だ。相手が前に重心をかけてきたのに対して、左を駆け上がる遠藤。左タッチライン際を彼が全速力で駆けていくだけで、優勝決定の瓦斯戦を思い出してしまう。なんて幸せな条件反射だろうか。

仲川の走る先をめがけて送られる速いクロス。テルに併走するDFはなんとか妨害しようと身体を投げ出してクリアを試みるが、無情にもキレイにネットを揺らしてしまった。このオウンゴールはもはや避けられなかった。それくらい引き裂かれていた全北の組織。

全北が用意していたマリノスの早いパスの展開、攻守の切り替えへの対策を、実際のマリノスがかなり上回っていた可能性が高い。それくらい局所、1対1での勝利が目立っていた。やられたと感じたのは、日本人Kリーガー・邦本が抜け出したシュートがわずかに枠外に外れたシーンくらいだ。


後半になると、マリノス優勢は一層顕著になり、全北はボールをやっとこさ取り返したとしてもビジョンのないロングボールを力なく繰り返すだけだった。マリノスとしては当然3点目を取って試合を終わらせてしまいたい。
だがこの3点目をオナイウもテルも決められない。決められないのだ。それも1つや2つのチャンスではない、相手のGKが当たっていたのはある。でもGKに当て過ぎた。

そこにこの試合でGK梶川裕嗣の唯一のミスと言っていい連携エラーが起こる。飛び出した隙に無人のゴールを破られてしまう。もったいないが、それ以外は落ち着いていた梶川のプレーは高く評価されていい。徳島の正守護神からアジアデビューを果たし、パギのポジションを脅かせたら素晴らしいだろう。


2-1のまま終わったからいいようなものの、3点目を取れなかったがゆえに相手が息を吹き返した感は否めない。万一、勝点1に終わっていたら。いや、自滅してしまう可能性も大いにあった。国外アウェイの緊張感、初戦の難しさ、アジアならではのプレッシャー、韓国王者の底力、などなどだ。エクスキューズというか、困難の理由は山ほどあった。

でも勝ち切った。逃げ切った。この事実はとてつもなく大きい。山ほどある困難にも負けずに。

勝点3を得たことと同じくらい大事な事実がある。それは韓国王者を圧倒して勝ったこと、マリノスのサッカーはアジアにも通じる確かな手応えを得たこと。このことの意味の方が大きい。

これから自信を持って立ち迎える。
今週はシドニー戦がある。
上海戦がどうなるかは依然として流動的で、少なくとも上海以外の3チームだけの対戦が先に終わるだろう。頭ひとつ抜け出せばリーグ突破が大いに見えてくる。

去年のリーグを制した強いマリノスからの進化。オナイウの役割というか、特技一つとってもまた違う。スペースがあるならオナイウ、ないならエジガルの方が向いているかもしれない。戦い方によって、対策によって多様な殴り方ができるならば、その期待感はさらに増す。

進化の一端を垣間見せた、アジア初戦だった。お題目ではない「アジアを勝ち取ろう」の戦いは始まったばかりだ。