今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

ドゥシャンがいたから、今がある

リーグ戦の出場試合数は20だという。ルヴァン杯などを合わせても公式戦の出場数は、1年半で30を超える程度。彼が放った存在感からすると、とても少なく感じてしまう。
ドゥシャン・ツェティノビッチ、背番号2。熱きセルビア人センターバックは、マリノスに確かなインパクトを残して退団する。

彼もまた巡り合わせでやってきた

2018年7月、彼はフランスから日本へと渡った。時はロシアW杯の直後で、「ロストフの14秒」に日本が赤い悪魔の前に沈み、豪州代表のミロシュ・デゲネクはシステム変更で定位置を失っていた。この豪州を本大会出場に導いた監督は自ら監督の座を辞し、日本で指揮を執り始めていた。アンジェ・ポステコグルー監督とともにリーグ優勝を果たした今は「リーグ最強の攻撃サッカー」と誰もが言うが、当時は得点よりも失点を量産する有様だった。

W杯前にレギュラーCBだったミロシュはチームを去り、40歳の鉄人・中澤佑二はすでに満身創痍で、栗原勇蔵が怪我でめどが立たないことから、SBが本職の金井貢史を充てていた。高卒ルーキーの西山や生駒の起用は現実的ではない。チームの土台を作らなければならない時期、チームにようやくCBがやってきた。

今となれば、「彼に合っていたか」

ミロシュと入れ替わる形で、背番号2も引き継ぎ、後半戦開幕となる18節から先発デビューを果たす。対人守備は強く、空中戦も負けない。何よりもメンタルが強かった。ドゥシャンに遅れること1ヶ月で、ブラジルからチアゴ・マルチンスを獲得し、東京Vからは畠中槙之輔が加わり一気にセンターバックの選手層が厚みを増した。その中で、ドゥシャンはディフェンスリーダーとしてほぼ全試合に出続けていた。だがスピードに特別秀でているわけでもなく、足元の技術が高いわけでもない。その意味では、彼の能力どうこうよりも、マリノス側の選手獲得のビジョン共有に問題があったのかもしれない。ただ成長途上のチームにあって、彼のような闘志を前面に押し出すスタイルは貴重であった。セルビア製松田直樹と、レジェンドに重ねるファンの声もあった。

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サポーターから愛された理由

先日の栗原勇蔵の引退発表に関連して、マリノス在籍時代に隣のポジションでプレーしていた小林祐三の述懐にこんなシーンがあった。鹿島戦で、小笠原が中村俊輔に向かって執拗に削ってきたときに、栗原は審判の見えていないところで肘打ちで報復に出た。「味方がやられているのを黙ってみている訳にはいかない」結局、勇蔵だけが後日出場停止処分を受けた。暴力を褒めてはいけないが、勇蔵にとっては引退にあたってリスペクトともに語られるエピソードとなった。

ドゥシャンにも、こんな武闘派なところがある。
今年4月のルヴァン杯、湘南戦。ドゥシャンが相手を倒して与えたFKの再開位置について、三好康児が注文をつけたところ、「なんやコラ」(想像)と湘南の選手が三好の首を掴んだ。すかさず、「なんやコラとは、なんや!うちのみよっしに何すんや」(想像)と反撃に出たのがドゥシャンだった。

実は、この直前のファウルが決定機阻止だとしたイエローからレッドカードに代わるという事案が同時発生し、混乱が起きた。一連の流れを見ていると「なんやコラ」による退場に見えるからだ。しかも湘南側にはお咎めなし。

このレッドのタイミングが、結果的にドゥシャンの漢気を際立たせることとなった。

熱すぎるナイスガイ

何しろセルビア製のマツなので、熱い。
それに加えて、相手FWに裏を取られると、手を使ってしまう悪癖も持ち合わせている。

そのため、2018年のリーグ戦の14試合でもらった警告は7枚。うち2回は1試合2枚という結果で、合計で3試合の出場停止処分を受けてしまったのだ。

坊主頭の風貌と迫力と、カードコレクター。
どこまでも憎めないナイスガイであった。

ドゥシャンが居なかったら

今年に関しては、畠中槙之輔の成長で開幕直前にサブに回って、やがて新加入した外国籍選手との「枠」の問題から、ベンチ入りすることもほぼなくなってしまった。

もし昨夏に彼が来てくれなかったら。
割とマジで、マリノスは昨年にJ1残留を果たせなかったと思う。そうならば、今年の優勝もない。監督も解任されていただろうし、今頃空恐ろしいストーリーの中にいたことだろう。

紛れもなく、大貢献者である。
数字以上に、ドゥシャンの残してくれた財産は大きい。そのことを決して忘れたくない。

同日に、チアゴ・マルチンス改めチアゴ選手の完全移籍加入が発表されたのも何かの計らいだろうか。

国内移籍の話は来ているのではないだろうか。ライバルチームに移籍してしまうのは複雑な思いもあるがドゥシャンの元気な姿をJリーグで観ていたい思いもある。

ドゥシャンのコメント全文:

「親愛なるマリノスに関わる全ての皆様へ

言葉では言い表せないほど感謝しています。
マリノスに来た初日から、皆様の愛に囲まれて、すぐに横浜が私たちのホームだと感じさせてくれました。この素晴らしいクラブの一員となり、偉大なチームメイト達と一緒に働く機会を持つことができて、大きな名誉と感謝を感じています。私はマリノスを去ることになりましたが、みんなの事はいつも私の心の中にあります。

マリノスのさらなる成功と幸せを願っています。
本当にありがとうございました。」

今後のドゥシャンの活躍と幸福を祈ります。
本当にありがとうございました。