今年もマリノスにシャーレを 2020

シャーレを掲げることは難しく、守ることはさらに難しい。連覇に挑む2020年、アウトサイダーではなく本命として、今年もシャーレを掲げよう。座右の銘はシャーレです。

強く速く強かで。優勝の行方を早々と決定づけた前半戦【J1第34節・FC東京戦○3-0】

冷たい雨が恨めしかった。正午ごろには止む見込みのあてが外れ、14時のキックオフ直前まで降っていた。最終決戦に文字通り水を差されたような気分だ、選手には最高のプレーができるコンディションを、見る側にも良い環境であってほしかった。この気まぐれな雨がなければ、J1リーグ戦の最高観客数どころか、チャンピオンシップを含めてもダントツの金字塔となっていたのが悔やまれる。

 

その時、2019年12月7日、午後3時56分に試合終了の笛が鳴り、両チームの選手がその場に止まる。両拳を掲げる者、しゃがみ込む者、あっという間に感極まる喜田拓也キャプテン。そこに一目散に駆けつけたもう一人のキャプテン扇原貴宏。

 

最終戦、今季リーグ最多、22勝目の勝利を勝ち取るとともに、横浜F・マリノスの15年ぶり4回目の優勝が決まった。この厳しい天候でもJリーグ記録となる63,854名の観客を集めた「優勝決定戦」は、3-0となったが、点差よりも厳しく苦しい試合だった。

 

ディエゴ・オリヴェイラを怪我で欠き、室屋が累積で出場停止のFC東京(瓦斯)は優勝にわずかな望みをつないで、日産に乗り込んできた。必要なのは4点差の勝利。それもチームの得点王や攻撃面で優れる右SBがいない状況で。右SBにはオジェソクを、前線には永井謙佑と共にナサンホを起用してきた。

 

一度に4点を奪うことはできない。1点ずつしかない。だけれどもその1点目が早ければ早いほど、勢いづかせることができるし、逃げるマリノスにわずかな迷いやほころびが生まれるかもしれない。過去3試合のマリノス戦で、瓦斯の得点は5、1、4もある。限りなく可能性が低くても、ない話ではなかった。

早く、早く、先制点を奪うことで活路を開きたいのが瓦斯。マリノスもまた先制すれば圧倒的に勝率が高まる。機先を制するために両軍はいきなり最高潮のテンションだった。

 

「瓦斯の決意」で始まった序盤

試合開始20秒でやってきたペナルティエリアの脇からの直接FKのチャンスに、蹴るのはナサンホ。夏の対戦ではマリノスがゴールを許した選手だ。何か事故を起こしてやろうと最高速で蹴られたボールをマルコス・ジュニオールがヘディングでクリアする。ただし、前節の川崎戦でもヘディングで軽い脳しんとうを起こして、この1週間ヘディングを控えていたのだ。ピッチに倒れ込むマルコス、幸い大事にはいたらなったが、ここでもしも交代を余儀なくされていたら、マリノスに動揺は生まれていただろうか。1つ目の分岐点だったと、私は思う。

 

その後、20分近くまでは球際の攻防がハイレベルで、互いにハイプレスが決まり、レベルが高かった。狭い密集で、考える時間もスペースも与えない。だからお互いに逃げることもできない。モロに技術力が出る。木村主審がコンタクトを流すので、より接触の強度は激しさを増した。やり過ぎにも思えてハラハラしたが、面白さという点では抜群。等々力の前王者との試合でも、瓦斯戦もやはり上位同士のやり合いはすごい。それに対しても一歩も退かない、上回ろうとするマリノスの選手たちが頼しすぎた。

 

和田拓也の意地

出色だったのはボランチの一角に、扇原の代わりに入った和田拓也だった。奇しくも、真夏の瓦斯戦を最後に出場機会を失い、ベンチ外の日々がこの決戦でスタメン復帰。高野遼や松原健に怪我が相次いだのを受けて広島から期限付き移籍でやってきた和田の役割は終わってなどいなかったのだ。

喜田の役割も、扇原や天野純が担っていた仕事も、潤滑油のようにこなせる。それも5ヶ月ぶりの公式戦で、だ。いや、久々などというバイアスを除いても素晴らしかった。テンポアップ、ダウンを絶妙に調整するパス。密集からボールの逃げ道を作るためのさりげないパスコース作り。瓦斯は和田にボールが入ったところを狙おうとしてたかもしれないが、「捕まえどころのない」動きに、早々に狙いから外したようにも見えた。

 

好対照だった決定機

両チームほぼシュートゼロのまま20分を超えると少しずつ当初の狂気プレスが落ち着く。23分、裏を取った永井が朴一圭(パギ)と一対一となるが決めきれず。これで奪ったCKから放たれた橋本のヘディングも枠を捉えきれなかった。これが決まっていてもおかしくはなかった。でも決まらなかった。瓦斯にとっては、それがすべてでもあった。

程なく、マリノス逆襲。中央を持ち上がったエリキのパスを受けた和田は、どうぞという声がボールから聞こえそうな優しいパスをティーラトンに送る。

左足から放たれたシュートは優勝決定の一撃となる。

懸命のスライディングでシュートブロックした東慶悟に当たって、上空に大きく跳ね上がりGK林の届かない角度でゴールマウスに吸い込まれていった。

 

あれが、入るのか…。相手を絶望に叩き込む、事実上の優勝決定弾だ。タイの英雄、吠える。広島戦でも、相手DFに当たってのゴールがあった。狙っているわけもないが、人一倍頑張ってきた男にはこんな褒美もある。

 

ガクッと瓦斯の運動量が落ちた。ゲームが一転して落ち着く。もちろん諦めたわけではないだろうが、取りきれなかった先制点をあんなアンラッキーで失った落胆は想像して余りある。「これが勢いの差」そう説明するしかなかった。

 

パギ、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔を中心とした奮闘もあり、ハイラインと守備との両立も落ち着きを見せた。38分に再び永井のシュートチャンスがあったが、ミートせずに大きく枠外へ。スピードで圧倒してきた永井からすれば、自分と同じかそれ以上のスピードで寄せてくるチアゴのような怪物に付き纏われた上にシュートを正確に打つのは厳しいのだろう。相手から、時間とスペースと冷静さを奪うチアゴ。戦術チアゴ。横浜のチアゴ。

 

前線にもスピードで勝負のエリキがいる。だがマルコスのパスを足元で受けたエリキのこの日の見せ場は、小川をいなすと一瞬の隙をついて入れ替わり、左足でゴール左隅へ。巧さの光ったシーンだった。これで2-0。この試合の行方はまだ2点差ながら、優勝争いはこれで決着がついたと言ってよかった。

 

ほんの少しの決定機での質と運。6連勝のマリノスと、ホーム連戦を勝てなかった瓦斯との差がここで出たのだろう。

 

ハーフタイムに下がる選手たちの充実

それでも緩むことなどあり得ない。まだ攻撃する、まだ点を取る。もっとだ、もっとだ。残り45分をどう戦うかだけに集中した選手の表情を見れば、大丈夫だと確信する。

東とナサンホを下げて、田川とユインスを入れる瓦斯。当然マリノスには交代に動く理由がない。

 

この試合に勝つんだ。勝って優勝を決めるんだ。この街にシャーレを。スタンド全体が武者震いをしているようだった。

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(後半は別途アップします)