マリノスにシャーレを2019

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

強い…! 川崎を寄せ付けず、15年ぶりのシャーレに王手【J1第33節・川崎戦○4-1】

乾いて凛とした等々力の空

大一番の試合開始時はホームチームの水色を想起させるように澄み渡っていた。かつてないほどに狭められたアウェイエリア。あの2013年の最終節よりもはるかに狭かった。それゆえに困難を極めたのは観戦チケットの入手であった。等々力に入りたくてもチケットがなく入場できなかったサポーターたちが山ほどいた。
そんな背景があるからこそ、この現場に立ち会うことを許された者たちの気持ちも高まり、いつもよりもさらに大きな声でチームを勇気付けようとするのは当然のことだった。その音圧、最初から最後まで素晴らしかった。
立ちはだかるチャンピオンが憎く、眩しかった。勝てなかった。アディショナルタイムに追いつく意地を見せたのにさらに勝ち越させる劇的な敗者になったこともある。マリノスがタイトルを取るために、我らが新王者と内外に宣言するためには絶対に越えなければならない壁であり、払拭しなければいけない記憶。その挑戦が始まろうとしている。

予想通りのスタメンと、予想以上のエリキのインテンシティ

川崎のGKがチョンソンリョンだったことを除けば、両チームのメンバーは予想通りだった。はっきり言って、川崎は強い。最終結果を分かった上でも、「川崎が弱かった」と表現する者はいないだろう。国内最高峰リーグの中でもかなりハイエンドな戦いだった。その趨勢を決定付けたのはキックオフ5秒後、エリキが大島にチャージした瞬間だった。
ファウルの判定となったが、もうエリキは自身の中に燃え盛る炎を抑えきれない。エンジンの回転数が高すぎるのだ。半端な準備で彼を止めようとしても大怪我をするぞ。たった5分で、マルコス・ジュニオールに供給した決定機を作り、オフサイドになったがこの日狂おしいほどに川崎を苦しめた裏抜けを見せた。
川崎は21日ぶりの実戦でまだ「寝惚け眼(まなこ)」だったのだ。だからこそ、フルテンションマックスのマリノスの前線が見せてきたノリについて来られなかった。

川崎は前線からプレス。マリノスも曲げない。ティーラトンが開く。畠中槙之輔の前で、中に絞っていれば家長の迷いは起きなかったかもしれない。だが、マリノスは約束事を変えたのでもなく、川崎に対応したのでもなく、それが一番ビルドアップに有効だと判断して開いた。それでも川崎はハメに来た。ティーラトンがフリーで余った。そのティーラトンから、前方タッチラインぎわを狙うマテウスへのパス。

ボール半分ほどがライン上で残した。すなわちインプレー。相対する日本代表の守田を加速で置き去りにするマテウス。超高速のドリブルに負けずに、ニアにエリキが入り、ファーに仲川輝人が見える。

ああ、今年何度この光景を見ただろう。いや、小机で彼らは何百回、何千回と繰り返してきたのだ。普通の守備ならエリキまでは潰せても、テルまでは追えない。その通りになった。8分、まだ寝床から出てきたばかりの川崎にリードを奪うことができた。狙い通り。

川崎の時間をしのぐ

彼らの「予測よりも速かった」(鬼木監督)というマリノスの前線に手痛い先制点を許し、川崎のエンジンがかかってきた。
やはり強い球際。足元の確かさ。ジワジワと押し込まれる時間が続く。セカンドボールの回収率で川崎が大きく上回り始めた。
30〜40分、朴一圭を中心にマリノスはよく耐えた。それに、常にオフサイドを狙ってラインを上げ続けた狂気はもっと驚かれて良い。

大島のミドルシュートや、小林のヘディングは、シュートチャンスではあったけれど、決定機とは呼びづらい。マリノスが作ってきたチャンスはやはり質が高い。43分のエリキから仲川へのフィニッシュも同じだ。

攻撃し続けた45分、強さを見せつけた

難しい大一番を自分たちのものにしていく。2点目を奪うタイミングもあまりに理想的だった。テルに相手の意識が集中していたからこその、松原健のスケベ100%超絶スルーパス。

彼が出したその瞬間、ゴール裏からは無理筋な軌道に見えた。ああっ…とため息まじりに声を出してしまったことを覚えている。そして、ごめんなさい。だって、まさかCB2人の間を狙っていたなんて…。
谷口と山村の中間、そこを外から回ってきたエリキが追いつく。GKの動きを見て、ファーサイドを撃ち抜き2-0。

さらにマルコスのヘディングによる脳震とうというアクシデントを受けて、大津祐樹登場。その大津はこの日もいかんなく持ち味であるヘビープレスを敢行して、3点目もお膳立てしてくれた。仲川のハーブスペースからマイナスボールをエリキのワンタッチ。ただしここで大津祐樹は肉離れと思われる筋肉系の怪我でプレー続行不可能となってしまう。代わりに入ったのは、渡辺皓太。

川崎の反撃でダミアンに豪快なヘディングを叩き込まれて1点を失い、また川崎のターンへ。畠中がエリア付近でダミアンを倒したがこれはギリギリエリアの外だった。ここでペナルティを取られていたら、かなり冷や汗ものだったろう。

だが、最後にはエリキがCB谷口からボールを奪ってGKとの1対1の場面を作る。追う川崎のスピードはもはや諦め気味で、途中出場の遠藤渓太が忠実にセンターに侵入していた。

ここでエリキが渓太にパスを出したのは驚きでしかない。自分で決めればハットトリック達成なのに。渓太は少し申し訳なさそうに、完全の無人なゴールラインをそっと越えさせた。


号泣する準備はできていた

4-1。川崎は今季最多失点。マリノスの4点は珍しくなくなったが、それにしてもあの等々力で4得点である。ぐぅの音が出ないほどに、やってやった。
それでもまだ点を取るチャンスがあったと言う、ボスことアンジェ・ポステコグルーは、完全にイッてる。

他会場の結果は関係ないという言葉は嘘ではなく、ハーフタイムにもその手の情報は一切選手に伝えていない。ただ自分たちのサッカーをするだけというシンプルな教えがぶれるはずがなかった。

天敵の浦和を相手に戦ったFC東京(瓦斯)は、山中、マルティノスという「元マリノスかつ出番が少ないガチ勢」に苦しめられたが、勝点1をあげた。

これで最終節の直接対決に優勝がかかる大一番というシチュエーションが出来上がった。シーズン半ばは、まさかマリノスが圧倒的優位で最終節を迎える想像はできなかったけれども。

天王山を制した割には、意外にあっさりした勝利の余韻。第33節が終わった16時過ぎ。等々力の空はすっかり暗くなり始めていた。季節の移り変わりであり、勝手に私は王者交代に重ねていた。

懸念材料と最高の準備を

割と早々に4枚目の警告を受けてしまった扇原貴宏の今季は終わってしまった。最終節は出場停止である。
マルコスは大丈夫そうだという情報が出ているが、そのマルコスを救う形で、アップもそこそこに出場した大津祐樹が負傷してしまった。大津の果たしていたムードメーカーな役割含めて、とても残念だ。

そこに飛び込んできた栗原勇蔵、現役引退決断の一報。また彼のことは詳しく書くとして、この一戦に更なる重みが加わることになる。

ただ一戦ずつ、全力で戦ってきた先に、こんなにも素晴らしい舞台が作り出された。

勝利、引分はもちろんのこと、3点差以内の敗戦ですら、マリノスの15年ぶり4度目のリーグ制覇が決まる。

今年途中で移籍していった選手たちのユニフォームを緒方さんが飾った。第3節、川崎戦の時には皆、マリノスの選手だった。あの日、やっとの思いで勝点1をもぎ取ったチームは、半年を経て逞しく、強く成長していた。
繰り返す、難敵のホームで4-1。越えなければならない壁を登り詰め、勝利の雄叫びを上げる。

マリノス、強い。

あと一勝。優勝しようぜ

でも、まだ川崎にやり返し足りない。一回の大勝だけではまだまだだ。来年も、そのまた先も、等々力で勝ちたい。そんな欲を持たせてくれて、本当にありがとう。

仲川輝人は輝いていた。夕陽に照らされていたからだけでなく、勝者の笑みを称えていた。
得点王にマリノスの選手2人が並ぶ。順位表の一番上にはマリノス。

でもまだだ、まだ。何も終わっていない。「圧倒的優位」は、優勝ではない。
最後、勝とう。今季のリーグを引っ張ってきた瓦斯と白黒をつける時。

うちに、日産スタジアムに帰ろう。6万人超えの大観衆と共に。今度こそ、絶対にシャーレを俺たちの手の中に。