マリノスにシャーレを2019

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

遠藤渓太は代役じゃない。たどり着こうぜ【J1第30節・鳥栖戦◯2-1】

リスタートの瞬間から遠藤渓太は思い描いていたのかもしれない。自分がどうやってゴールに走り込み、そして味方のつないできたボールをどう流し込むべきか。その一連のプレーは仲川輝人のような輝きを放っていたとは思わないか。

 

大雑把に相手が蹴ってきたボールを競り合った際にチアゴ・マルチンスが引っ張られてファウルを受けた。そのリスタートは何気なく、ただし素早く、畠中槙之助から傍にいた扇原貴宏へ。左足で縦にマルコス・ジュニオールがターンして前を向く、この動きが滑らかでもう幸せになる。

 

ティーラトンがタッチライン際を駆けて、ワンタッチで中央へクロスを送ると、手前のエリキは囮で外から絞ってきたはずの鳥栖DFの三丸がフリーで難なくクリアと思ったはずだ。ところが、背後から忍び寄る影に一瞬で身体を入れられてしまう。

影の正体こそ遠藤渓太。右足のアウトサイドで軽く蹴り込みネットを揺らす。

 

ああ、その走ってきたコース、相手DFの死角を突く動き、飛び出すタイミング。幾度となく仲川テルが決めてきた、出し抜いてきた動きそのものだ。いつもの左サイドとは見える景色が違う、と試合前のインタビューで答えていた。それに左右が違うだけじゃない。いつもの左サイドのレギュラー選手がたまたま右で先発したという話ではない。マテウスの先発が定着してきたため、渓太の先発は4試合ぶりだった。仲川が万全ならこの日もベンチスタートなのは濃厚だったと思う。代役ではない、テルが戻ってきてもじゃあ「テル先発復帰ね、とはさせない」そんな意地と、先輩へのリスペクトが美しい先制点の裏にあったことは間違いない。

 

鳥栖サイドからすれば勿体ない失点だった。真面目なはずのプレスをかけてたはずなのに、扇原の縦パス以降はまるでノープレッシャー。これが集中力の切れた瞬間というやつだろう。2失点目も同じだ。GK高丘は試合を通じて1対1で比類なき当たりを見せていた。でも朴一圭の守備範囲にインスパイアされたかどうか、マテウスとのヨーイドンは「無謀」だった。留守番は手の使えないDFが2名。マテウスが回収してくれた横パスを受けたエリキは射抜く。人類が手を使わずには防げないコースをあの一瞬で狙って。静的FKよりも難しいコースだが、FKで狙うよりは容易いのかもしれない、残酷なシュート。その直後の口角が張り裂けんばかいの笑顔を破顔一笑と呼ぶ。彼もまた悪魔のシュートを放つ男に認定しよう。

同日、瓦斯対大分で似たように瓦斯のGKがゴールマウスを離れたシーンでは大分は決めきらず、瓦斯の橋本が頭でクリアした。「DFが絶対に届かないシュート」というのは口で言うほど簡単ではない。

 

速やかな2-0。実は、この日の私は絶賛審判中。そう、鳥栖に行けないどころか、リアルタイムDAZNすらかなわない不遇の3連休初日を送っていた。でも、遠征に向かう人々の可憐なツイートに嫉妬の炎を燃やすことは1mmもなく、首里城の件と私は一切関係がないことはここに証明されている。ただ1200キロほど先の空に向かって、4級審判は元気よくホイッスルを鳴らすのみ。そのハーフタイムに、何食わぬ顔で携帯の速報画面を盗み見て、静かに画面を消すはずが「よしッ!よしッ!」と声に出してしまう。それが前半35分頃だったと思う。

 

40分過ぎにはエリア内の、(故意にしかみえない)ハンドリングが見逃されて、その原川は、後半息を吹き返したように脅威であり続けた。そこである。楽勝ペースかと思われていた2−0から、後半あわやの展開になったのはなぜだったのだろうか。

 

この試合で鳥栖の2トップだったのは、古巣に対して異様な闘志を燃やす小野裕二と、金森。クエンカは先発も、豊田を先発で使わずに、金崎は先の天皇杯で退場処分を受けたために出場停止と、マリノスには有難い条件だった。

金明輝監督は、ハイラインの裏を狙うための起用だったと試合後に明かしているが、早いだけならチアゴの餌食。高いだけならチアゴの餌食。速くて強くても結局はチアゴの餌食というのが常識である。

 

後半やられたシーンを見返すと、直前のサイドチェンジもお見事ながら、ティーラトンの裏をかいた金井貢史のハーフレーンをつく動きで完全に崩された。マイナスのボールにスルーまで入れられて最後は原川。彼の正確なキックは厄介だ。完全にマリノスのお株を奪われたような失点だった。ちなみにこの頃には、私はリアルタイムDAZNになっていた。

 

「駅前不動産スタジアムの後半は怖い」先日も瓦斯が逆転負けを食らったように、何か独特の雰囲気がある。そこに加わるフィジカル兵器の豊田陽平が投入。マリノスはポゼッションすらままならない。鳥栖の圧力に次ぐ、圧力。試合間隔も開いていたのに、マリノスの選手は全体的にキツそうだ。パスコースを作る動きが乏しく、細かなミスが多くなってしまう。それも、優勝争いのプレッシャー…?だろうか。

 

失点すれば、勝点を落としてしまえば、優勝争いはほぼ終焉となる。そんなことは分かっている。分かっているからこそ固くなる。それもあるかもしれない。

クロスバーやポストにも助けられたことは事実だが、ともかく逃げ切った。最後の最後に作った決定機2つ、渓太とエリキのどちらかが決めきれていたら、もう完璧ではあったが、鳥栖から勝点3を持ち帰ることに成功した。

 

この意味はことの外大きい。残りは札幌、松本、川崎、瓦斯となる。どれも簡単な試合はないが、ゴールまで4試合。終わりと栄冠ははっきりと見えてきた。前夜の鹿島と、同じく九州遠征だった瓦斯も順当勝ちで、勝ち点差は変わらない。

 

 試合後のスタンドからあの名曲が聞こえてくる。解禁されたのか。これを選曲したコールリーダーの決意も伝わってくる気がする。そうか、この歌が。

 

ああ、これが優勝争い。2013年以来ずーっと封印されていたかと思っていたが、2015年の2ndステージで歌っていたらしい。記憶はあまりない。

 

残り1ヶ月、残り4試合。最高の場所に近づいている。一歩、一歩フィナーレへ。覚醒の気配漂う遠藤渓太と、仲川輝人が完全合流し、エジガルと渡辺皓太も帰ってくる。

 

さあ、たどり着こう。

 


2019明治安田生命J1リーグ第30節vsサガン鳥栖ハイライト動画