銀皿航海 蹴球7日制

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

新戦術「マルティノス」【J1第14節・川崎戦】

疾駆という言葉が相応しい。
天野純が上げた、速くて、相手のエリアをえぐるクロスは到底追いつけない厳しいボールだった。でもマルティノスなら。
彼のスプリント力でぎりぎり追いついてみせた。左足ダイレクトでのマイナス方向へラストパス。全力の疾駆の賜物である。マルティノスに気を取られて、中央で折り返しを待っているウーゴ ヴィエイラはフリーになっている。その場で足を振り抜けば良い。
もちろん口で言うほど簡単なシュートではない。コースを狙いすました一撃だから、韓国代表のGKも為す術がなかった。

その瞬間のスタンドは薄暮で、ガッツポーズとハイタッチと、オーレ、オレオレオレ、ウーゴ!のコールが鳴り止まない。みんな耐えていたのだ。前半から、ポゼッションは川崎。でも急所を突くような縦パスは入れさせない。持ちたいのだから持たせておけばいい。引っかけに行って、バランスを崩す必要もないし、消耗することもない。見慣れない人からすれば、退屈で引きこもっているように見えるのかもしれない。では川崎のボール保持は魅力的なサッカーで、それをマリノスが殺したのか。
私は全くそうは思わない。中村選手が持ってもなかの動きが乏しいが故に、ブロック外で安パイのパスを回すだけという、まるで昔のマリノスのようなシチュエーションは、川崎が作ったものだ。小林悠や家長昭博の役割が不明確だったかもしれないが、とにかく彼らは苛立っていた。

では、ジャッジのせいか? 川崎びいきの目で見れば、さぞ腹立たしい判定が多かったことは分かるが、それはジャッジのせいではない。「こう判定して欲しかった、こうあるべき」という目線がある中でジャッジは適切だったかどうかは論じるべきでない。
阿部がネットを揺らして同点と思われたあのプレーがオフサイドだった後、マリノスは2点目をあげた。
飯倉大樹は、齋藤学が全速で相手陣内に走りこむのを見逃さなかった。高いのに速いパントを学はコントロールしきれなかったのだろう。そこにマルティノスが追いつき、学に返すのかと思ったら逆サイドを上がってきた富樫敬真へ。実に冷静なループシュートは、スタンドの時間を止めたしまった。ゆっくり、ゆっくりとゴールに収まる。

学は自分で決めるつもりが、敬真に持っていかれたようだ。それを決定付けたのは、マルティノスの柔らかで、得点者の復帰を祝うようなラストパスだった。

開幕から担ってきたコンダクターの仕事を、学の代わりに努める男が現れた。マルティノスの仕事は完全に攻撃の支配者だ。変なミスも少なくないが、決定的な仕事もする。学は手負いだ、それなのに学に預けるから、余計に攻撃は停滞する。前半に学を経由することで、攻撃のターンが終わることはしばしばあった。学はこの日もブレーキになりかけていたのだ。

 

後半の15分くらいだったろうか。カウンター狙いのマリノス、センターサークル付近で学が受けると、対峙した中村憲剛は、マルティノスへのパスコースを塞ぐようなポジションを取った。

舐めるな、俺は齋藤学だと言わんばかりに憲剛の逆をついて中央をドリブル突破、見事に振り切ったのだ。マルティノスの存在があるから、相手が判断を誤るという典型的なシーンに思えた。学とマルティノス、揃うことは脅威だ。

 

ウーゴのリーグ戦5ゴールは昨年の不良債権こと怪奇を超え、その怪奇が本命のはずだった昨年の補強で、「じゃない方」だったマルちゃんが、攻撃を牛耳ろうとしている。

攻撃だけではない。守備の貢献も大変高い。えーの、取ったで。

 

さてさて、すでに発表されているように、ミロシュ デゲネク、ダビド バブンスキーの代表招集に加えて、このマルティノスにもキュラソー島の代表招集の可能性が取り沙汰されている。ひと月ほど居なくなると戦力ダウンだ。しかし、遠藤渓太もいる。吉尾海夏も帰ってくるだろう。つまりは、それをチャンスと捉える若者がいるのだ。

外人頼みのクソサッカーと呼ばれることは、なかなか外国籍選手の活躍に恵まれなかったチームにとっては賛辞でしかない。ウーゴとマルのホットラインに怯えるが良い。私はその震えにも、喜びの震えが止まらないのだ。

 

1,2節、6,7節以来となる今季3度目の連勝。ここから波に乗りたい。なんだかんだで、開幕の浦和戦、25周年の磐田戦、4万人超えの川崎戦と、何が何でも勝ちたい試合を取ってるのだ。

瓦斯、神戸との中堅対決も、勝つしかないのである。

私は帰りの車のハンドルを握りながら「いやぁ、いい試合だったー!」と何度呟いたことか。それくらいの大事な勝利だった。