銀皿航海 蹴球7日制

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

アジリティより、賢さと勇気が強いってば【J1第8節・柏戦】

試合が始まって20秒、最初の接触プレーだった。前田直輝が苦笑していた。柏のチェックは厳しかった。手を使って、前田の行く手を阻んでいた。ファウルのように見えたのは確かだがファウルではないと主審は判断した。にもかかわらず、タッチライン際で苦笑しながら、判定に異を唱える前田の姿はまるで目の前な敵と戦うことに目を背けているようだったと言ったら言い過ぎだろうか。

敗戦の結果、◯◯が何笑ってた、怪しからん!という批判は、城彰二をはじめ古今東西、よく聞く。が、今回のこれは、前田個人というよりもマリノスの想定がずっと甘ちゃんだったことに対して憤りを覚える。前田の表情にも苛立ちを感じたが、それ以上に、戦う姿勢の差が個人に由来するものではなくてチームとしての準備に原因するとしたら実に悲しい。

 

柏のプレスが強く厳しいことは誰でも知っている。予想通りに厳しいプレスが来て、そして笑うというのはどんな準備をしていたのであろうか。つまり個の力がいつもよりも落ちてしまったマリノスが、柏の個の力に屈したのでもなんでもない。ヨーイドンで走れば、おそらく本調子の前田直輝はめちゃくちゃ速い。そんなアジリティではないチームとしての戦い方、相手のプランにまんまとハマってしまったことがどうにも悔しい。

金井貢史のハンドは、どう見ても、ハンドだった。不用意だったという他ない。見所は飯倉大樹の執拗なサイドラインまで(!)のチェイスだったり、FKに対するミロシュ・デゲネクの飛び込みだったり、先発を外れたダビド・バブンスキーのオサレな変人スルーパスだったり。試合として見所がなかったということはない。

だが右翼マルティノスを欠き、左翼・齋藤学が本調子とは程遠い出来では。全く見せ場のなかったウーゴ・ヴィエイラと、お得意のポストプレーで、受けてから10m罰退する伊藤翔には、ノーチャンスだった。天野純もトップ下で機能したとは言い難く。せいぜい強がりを言うなら、敵将・下平監督がベタ褒めした小池による学封じは、学の圧倒的なコンディション不良によるところが大きいと言うことだ。2ヶ月前に代表経験もある浦和のM脇を子供扱いしたあの試合とは、月とスッポン、雲と泥ほどの開きがある。

それにしても。

揃いも揃って、出来が悪い。完全に仮設だが、ピーキングが揃ってしまったのか。何かを比較したわけではないが、ほぼ全選手の調子は開幕戦および2節・札幌戦が最高潮となっていて、そこからジワジワと調子を落としているように思える。重傷、軽傷さまざまながら怪我をしてしまった選手たち。あるいは海外との移動により調子を落としてしまった選手。もうスタメンのほぼ全員がそこに当てはまるではないか。

調子云々の印象を受けないのは、飯倉、中澤佑二、天野純、前田直輝といったところか。バブンスキーは途中から出た柏戦の方が、広島の時より良かったように見えた。とりわけ調子を落としているように感じる選手だが、これが復調の兆しならありがたい。

 

もし柏に勝てるとしたら、猛然とした柏のプレスをいなした上で、電光石火の正確なカウンター攻撃で射抜いた場合だったろう。それにはマルティノスと、本調子の学が必要だったという、ある意味わかりやすい結果だった。でもね、何度も言うようだけど、前田にもアジリティはあって、でもそれを生かす賢さと勇気が無さすぎたよね、と。で、そういう時はセットプレー一発で、塩試合に持ち込むのが伝統芸なのだけど、天野はふかして、次はウーゴが壁にぶち当てて。そうこうしているうちに上記のPKだから。

でも、2位以下に勝ち点4差をつけて、頭一つ抜けたかに見えた浦和を、首位の浦和を屠ったのはマリノスだけだから。力くらべで、押し切ったようなマリノス。M脇を圧倒して、M野を平伏させた学の輝きは一瞬のものではないはず。何よりも切ない学が不調だとどうしようもないという事実。次節、学は調子を上げ、休暇たっぷりのマルティノスが帰ってくる。攻撃好調のガンバ相手に先に崩れないことが条件だ。

終わったゲームを嘆いても仕方がない。足りなかった勇気は練習で補うしかない。個の力は元来優れている選手たちなのだ。思い通りにいかないのならば、笑って許しを乞うよりも、怒って火の玉になれ。前田直輝の変化に期待する。