銀皿航海 蹴球7日制

横浜F・マリノスサポーターです。好きな言葉はシャーレです。

気持ちを一つに、新たな扉を開く【J1第6節・磐田戦】

なぜ、あそこに金井貢史が居たのだろうか。
後半のF・マリノスの攻撃は、齋藤学やウーゴ・ヴィエイラの瞬発力によってチャンスが生まれ、そしてスピードが速いがゆえのほんの僅かなズレで潰えてしまっていた。
ただあの時、ボールを持ったままでふと立ち止まった学の視界に、ペナルティライン上に残っていた金井貢史の姿が飛び込んだ。なぜ、そこに金井が、と考えるよりも早く、ふわりとしたボールを学が送った。

少しでもズレたら守備陣にクリアされていただろう。正確なボールだったから金井の足下にすんなりと収まった。まるで時間が止まったかのように、綺麗なトラップ、ステップ、ターン。あとは堅守のカミンスキーの届かないところへ。サイドネット。止まっていた時が動き出し、歓喜は爆発した。ゆりかごダンスにはベンチのメンバーも加わり、金井は愛おしそうに何度も、左胸のエンブレムを叩いて見せる。学の言葉を借りるなら、あれは金井のゴールというよりも、皆の思いが込もった万感のゴールということになる。それにしても、なぜ金井はあそこに居たのだろうか。

2−1でマリノスは、磐田を降した。マリノスの2得点は学の、磐田の1点は中村俊輔のアシストが記録された。久々にスタジアムから離れるのが惜しくなるような、素晴らしい90分だった。サッカーとしてのレベルがどうこうよりも、単純に「勝ちたい」「超えたい」という気持ちがビンビン伝わるような試合は見ていて楽しく、勝利という結果がついて来れば最高に幸せだ。この日だけ気持ちが入っているわけではないが、これが特別な試合という意識を選手が持っていることは明らかに伝わってきた。勝ち切れたことは本当に大きい。

ウォーミングアップから引き上げる際には学も胸のエンブレムを叩いて、「任せろ!」と言っているようだった。試合後のヒーローインタビューでのガラガラと枯れた学の声は、いかに試合中に大声を出し続けていたかを物語る。さらにはインタビューをベンチ前で待っていた選手たちとに加わっての円陣。今の学とマリノスは臆面もなく、少年サッカーのような団結や結束を見せつけてくる。「まだまだ僕たちは強くなれる」というコメントに、私たちはますます期待をかけたくなるのだ。
ただし、いくらこれからの伸びしろがあろうとも、やはり今日の試合に勝っていなければまるで説得力を持たないところ。何が何でも勝たなければというのは我がマリノスのほうだった。ゴール裏の声、中から分かるくらいものすごい声だった。勝ちたい、超えたいという思いはスタンドもまた同じだったのだろう。
とすれば、なんと幸せな空間だったのだろうか。あの25年前を思い出させるようなエレキギターのサウンドに加えて、これまでで最も美しく幻想的だった暗転の演出。


ウーゴも、学も、早々に試合を決めるべきだった。遠藤もだ。それに失点のシーンも含めて、セットプレー対策がうまく言ったとは言いがたい。最後のフリーのヘディングを許した場面などは、1失点もの。まだまだだ。勝てる日も、負ける日も交互、その日次第というのはこのままでは大きく変わらないだろう。マルティノスが決めて(素晴らしい動きのヘディングだったけど!)、程なく呆気なく追いつかれるという新潟戦のデジャヴのような展開はため息混じりだった。
それでも、あの時の金井に代表されるように勝ちたい気持ち、マリノスを勝たせたい執念は確かに一つになっていた。試合前に書いたように、磐田が相手だからなおさらその気持ちが強まったということはあるだろう。対戦相手が磐田だったことは結果的に良かった。いや、そう言える結果をもぎ取った選手たちがすごいんだな。


気迫で勝った次が本当に大事だ。なにくそ!と気持ちの入ったプレーを継続できるのか。それともこの「記念試合」が特別なものだったのか。そちらのほうが、この試合の勝敗よりもひょっとすると大切なことかもしれない。

でも勝った。クラブの未来を創る大一番に勝った。今日くらいはその余韻に浸りたい。後世に語り継ぐべき試合を応援できて、本当に良かったと思う。